この号の内容
熱意も生活評価も伸び悩む
2021年に仕事に熱意をもって取り組む「エンゲージしている」社員は21%、人生評価で「繁栄している」人は33%で、どちらも前年比1ポイント上昇した。エンゲージメントは2019年の22%が最高で、2020年に20%へ下がり、2021年は21%と最高値に戻っていない。報告書は、パンデミック前まで続いていた緩やかな改善がコロナ禍で止まったとしている。地域差は大きく、オーストラリア・ニュージーランドでは繁栄している人が6ポイント増えた一方、欧州では5ポイント減った。Gallupは、エンゲージメントの低さが世界経済に7.8兆米ドル、世界のGDPの11%に相当する損失をもたらしていると推計している。
📖 報告書では:Executive Summary 1(PDF p.8、本文p.6、図「Employee Engagement and Life Evaluation」)
ストレス44%で過去最高
前日の大半の時間にストレスを感じた社員は44%で、過去最高だった2020年の43%をさらに上回った。心配は40%、怒りは21%、悲しみは23%である。2021年には心配・悲しみ・怒りが前年より下がったが、いずれもパンデミック前の水準を上回っている。働く女性は世界のどこでも男性よりストレスが高く、世界全体では女性47%、男性42%である。米国・カナダ地域では、働く女性の2人に1人が前日に強いストレスを感じたと答えている。
📖 報告書では:Executive Summary 2(PDF p.9、図「Daily Negative Emotions」)、Global Insights「Daily Stress」(PDF p.19)
地域別:北米が熱意で首位
エンゲージメントは米国・カナダが33%で首位、南アジアが27%で続き、最下位は欧州の14%である。繁栄している人の割合はオーストラリア・ニュージーランドが63%で最も高く、南アジアは11%で世界最低である。南アジアと欧州はウェルビーイングが前年から5ポイント下がり、いまの生活の評価と5年後の見通しの評価がともに低下した。ストレスは東アジアが55%で最も高く、独立国家共同体(CIS)が19%で最も低い。米国・カナダ地域は心配やストレスが世界でも高い部類に入るが、エンゲージメントと仕事の見つけやすさで1位、ウェルビーイングで2位である。
📖 報告書では:Executive Summary 3・5(PDF p.10、p.12)、Global Insights の地域ランキング(PDF p.16–19)
雇用市場の回復は北米だけ
「今は仕事を見つけるのによい時期だ」と答えた社員は世界で45%である。前年からはわずかに上がったが、2019年の過去最高55%には届いていない。米国・カナダは71%で世界首位となり、前年から44ポイントも上昇した。次いでオーストラリア・ニュージーランドが59%、南アジアが50%である。一方、CISは35%、中東・北アフリカは28%、東アジアは27%にとどまる。なお、この項目について2021年は中国のデータを集めていない。
📖 報告書では:Executive Summary 4(PDF p.11、図「Job Market」)、米国・カナダ章「Job Climate」(PDF p.34)
熱意と繁栄を両立は9%のみ
報告書は、エンゲージメントは職場の話、ウェルビーイングは職場の外の話という分け方を「誤った二分法」と述べている。エンゲージしていて人生でも繁栄している人は、どちらでもない人に比べて、ストレス(30%対49%)、怒り(11%対24%)、健康問題(8%対16%)を抱える割合が低い。しかし両方を満たす人は世界の社員の9%にすぎず、57%はどちらでもない。燃え尽きを常に感じている社員は、救急外来を受診する可能性が23%高い。エンゲージしていても繁栄していない人は、両方を満たす人より燃え尽きが続く可能性が61%高い。
📖 報告書では:Executive Summary 6(PDF p.13、本文p.11)
CEOの指摘:鍵は上司
CEOのジョン・クリフトン(Jon Clifton)は、世界の働く人の60%が仕事に気持ちが向いておらず、19%は惨めな状態(積極的に熱意がない)だと述べている。Gallupの大規模な燃え尽き研究では、最大の要因は「職場での不公平な扱い」で、次いで手に負えない業務量、上司の不明確な説明、上司の支援不足、無理な時間的圧力が挙がった。Gallupは、上司について知るだけでチーム・エンゲージメントのばらつきの70%を予測できるとしている。またエンゲージした社員のいる事業単位は、惨めな社員のいる事業単位より利益が23%高い。報告書はこれらをもとに、職場をよくする本当の方法はよりよいリーダーだと結論づけている。
📖 報告書では:From the CEO(PDF p.4–6、本文p.2–4)
日本の結果
この号の調べ方
対象は世界の働く人(従業員)で、主に2021年の調査結果を前年と比べている。エンゲージメントは、GallupのQ12(職場の状態を尋ねる12の質問)で測る。人生評価は「キャントリルの梯子」(0〜10の段で、いまの人生と5年後の人生を評価する質問)をもとに「繁栄している」割合を出す。ストレスや心配などは「昨日の大半の時間にその感情を経験したか」をはい・いいえで尋ねている。国別ランキングは2019〜2021年の3年平均で、「変化」は2018〜2020年の平均との差である。
この号から言えること
- 世界の社員の4割強が前日に強いストレスを感じており、この割合は2年連続で過去最高である。エンゲージメントはパンデミック前の上昇基調に戻っていない。
- 熱意と人生の繁栄の両方を満たす人は9%にすぎない。両方を満たす人ほど、ストレス・怒り・健康問題が少ない傾向がある。
- 日本のエンゲージメント5%は東アジアで最も低い。「一日中敬意をもって扱われなかった」人も26%と東アジアで最も多い。
- 北米は心配やストレスが多い一方で、熱意と雇用環境では世界首位であり、指標ごとに地域の順位が大きく入れ替わる。
読むときの注意
国別の数値は2019〜2021年の3年平均であり、2021年単年の世界・地域の数値とは単純に比べられない。エンゲージメントや繁栄と、ストレス・健康・利益との関係は相関として示されたもので、本書は人材コンサルティングを手がけるGallup自身の報告書である。調査の標本数や繁栄の判定基準は、今回の抜粋には含まれていない。