この号の内容
熱意ある社員は過去最高の23%
2022年に仕事に熱意をもって取り組む(Engaged)社員は世界で23%となり、2009年の測定開始以来の最高だった。前年からは2パーセントポイント(以下ポイント)の上昇で、2020年の落ち込みから元の上昇傾向に戻った。伸びの多くは、インドを含む南アジアで7ポイント回復したことによる。地域別では南アジアが33%で首位、米国・カナダと中南米・カリブが31%で続き、欧州は13%で最下位だった。性別では女性25%、男性22%、職位では管理職31%、一般社員20%である。
📖 報告書では:エグゼクティブサマリー1(PDF p.6)、グローバル・インサイト「Employee Engagement」地域ランキング(PDF p.17)
6割が「静かな退職」状態
働く人は3つに分類される。熱意ある「仕事で活躍している」層が23%、熱意がなく最低限の努力しかしない「静かな退職(quiet quitting)」層が59%、組織に積極的に害を与える「騒がしい退職(loud quitting)」層が18%である。静かな退職層は熱意ある層よりストレスや燃え尽きを抱えやすいと報告書は説明している。Gallupは、エンゲージメントの低さが世界経済に8.8兆ドル、世界のGDPの9%に相当する損失を生んでいると推計している。
📖 報告書では:エグゼクティブサマリー2(PDF p.7)、グローバル・サマリー(PDF p.16)
ストレスは44%で高止まり
前日の多くの時間に強いストレスを感じた社員は44%で、2021年の過去最高と同じ水準だった。この高いストレスは、約10年前から続く上昇傾向の延長にある。地域別では、中国を含む東アジアが米国・カナダ(52%)と並んで最も高い。東アジアの若い社員は60%、リモート勤務の社員は61%がストレスを感じており、世界で最もストレスの強い働き手となっている。熱意ある社員のストレスは30%、積極的に熱意を失った社員は56%で、エンゲージメントが高い人ほどストレスが低い傾向がある。前日に怒りを感じた人は21%だった。
📖 報告書では:エグゼクティブサマリー3(PDF p.8)、グローバル・インサイト「Daily Stress」(PDF p.18)
求人は回復、半数が転職を視野
住んでいる地域で「今は仕事を見つけるのに良い時期だ」と答えた人は53%で、前年から10ポイント上昇し、2019年の過去最高に近づいた。東南アジアとオーストラリア・ニュージーランドではそれぞれ22ポイント上昇した。例外は米国・カナダで、2022年は横ばいだったが前年に44ポイント上昇していた。新しい仕事を探している、または機会をうかがっている人は51%いた。熱意ある社員では43%、積極的に熱意を失った社員では61%である。熱意ある社員が転職を考えるには31%の賃上げが必要なのに対し、熱意のない社員は平均22%で転職を考えるという分析も紹介されている。
📖 報告書では:エグゼクティブサマリー4・5(PDF p.9–10)
働く場所より熱意がストレスを左右
ストレスを感じた割合を働く場所別にみると、出社38%、ハイブリッド45%、完全リモート43%だった。Gallupの分析は、エンゲージメントがストレスに与える影響は働く場所の3.8倍だと結論づけている。エンゲージメント自体は完全リモート30%、ハイブリッド24%、出社21%と、リモートのほうが高い。報告書は、リモートやハイブリッドでの業績不振が「場所の問題か、マネジメントの問題か」を問うべきだとし、どの場所でも悪いマネジメントは補えないと述べている。
📖 報告書では:エグゼクティブサマリー6(PDF p.11)、グローバル・インサイト(PDF p.17–18)
静かな退職層の要望と管理職の役割
「職場をよくするには何を変えたいか」という質問に対する静かな退職層の回答の85%は、3つの分野に集中した。内訳は、評価や上司との対話などの「エンゲージメント・文化」41%、「給与・福利厚生」28%、残業削減や休憩などの「ウェルビーイング(心身の健康とワークライフバランス)」16%である。報告書は、チームのエンゲージメントの70%は管理職によって説明できるとしている。Gallupが過去3年に研修した14,000人超の管理職では、研修後最長18か月で本人のエンゲージメントが10〜22%、チームでは8〜18%高く、離職は21〜28%減った。受賞企業(Gallup Exceptional Workplace Award)では熱意ある社員と積極的に熱意を失った社員の比が18対1で、世界平均の約1対1を大きく上回る。
📖 報告書では:エグゼクティブサマリー7(PDF p.12)、Takeaways for Leaders(PDF p.13–14)
日本の結果
この号の調べ方
世界の働く人の経験を継続的に追う調査としては、Gallupが「世界最大」とする調査の2022年分の結果である。対象は、毎週雇用主のもとで働く人に限られ、インフォーマル経済(正式な雇用契約によらない仕事)で働く人は含まれない。エンゲージメントは、Gallup独自の質問項目群「Q12」をもとに熱意あふれる・熱意なし・やる気のないの3区分で測っている。ストレスや怒りは「昨日、一日の多くの時間にこの感情を感じたか」という質問への「はい」の割合である。
この号から言えること
- エンゲージメントは過去最高を記録したが、それでも熱意をもって働く人は4人に1人に満たず、6割は「静かな退職」状態にある。
- ストレスはエンゲージメントの回復とは別に44%で高止まりしている。熱意ある人ほどストレスが低い傾向があり、Gallupは働く場所よりもエンゲージメントの影響が大きいと分析している。
- 日本のエンゲージメントは5%で東アジア最下位であり、地域平均17%や世界平均23%を大きく下回る。
- 報告書は管理職の育成を最重要の打ち手と位置づけ、静かな退職層を「最も伸びしろのある層」と捉えている。
読むときの注意
エンゲージメントとストレス・転職意向の関係は同時点での比較であり、調査そのものは因果関係を示すものではない。また、調査ではストレスの原因を具体的に尋ねていない。管理職研修の効果や8.8兆ドルの損失額は、Gallup自身のプログラムと推計にもとづく数字である。