どんな調査か
State of the Global Workplace(SOGW、グローバル職場環境調査)は、米国の調査会社Gallupが毎年発行する、世界の働く人の状態をまとめた報告書である。Gallupはこれを「従業員の経験についての、継続中の調査として世界最大のもの」と位置づけている。仕事への熱意(エンゲージメント)、人生の評価、前日の感情、仕事の見つけやすさ(ジョブ・クライメート)などを、世界・地域・国の単位で示す。2026年版(2025年データ)は140以上の国・地域を10の地域に分けて扱い、副題は「AI革命の人間的側面(The Human Side of the AI Revolution)」である。データの蓄積は2009年から2025年まで続いており、通算の回答者は5,754,327人(うち就業者2,616,488人)にのぼる。
何をどう測っているか
主なデータは、2005年から無作為抽出で世界の成人を調べているGallup World Pollから取る。調査は通常、年1回、対面または電話で行い、対象は15歳以上の一般市民で、本報告書では雇用主のもとで1時間以上働く人の回答を使う。米国ではウェブ調査による働く人の大規模な無作為標本を加えている。2025年データは2025年1〜12月に集めた263,810人(うち就業者141,444人)である。エンゲージメントはGallup独自の12項目「Q12」(例:「職場で自分に何が期待されているか分かっている」「この1年、学び成長する機会があった」)を5段階で答えてもらい、独自の計算式で「熱意あふれる」「熱意なし(静かな退職)」「やる気のない(騒がしい退職)」の3区分に分ける。ウェルビーイングはキャントリルの梯子(0〜10で今の人生と5年後の人生を評価する質問)を使い、今が7以上かつ5年後が8以上の人を「繁栄している(Thriving)」、両方4以下の人を「苦しんでいる(Suffering)」、それ以外を「もがいている(Struggling)」とする。前日の感情は「昨日一日の多くの時間にストレス・怒り・悲しみ・孤独を感じたか」で測り、生産性損失の金額はQ12と業績の関係を示すメタ分析と標準的な効用分析をもとに各国GDPから推計して合計している。
これまでの歩み
2022年版(2021年データ)は、エンゲージメント21%、Thriving 33%がともに前年から1ポイント上がった一方、前日に強いストレスを感じた人が44%と過去最高を更新したことを伝え、従業員のウェルビーイングを職場の新たな必須課題とした。2023年版(2022年データ)は、エンゲージメントが23%と2009年の測定開始以来の最高になったことを伝え、59%を占める「静かな退職」層の立て直しが経済成長のカギだと強調した。2024年版(2023年データ)はエンゲージメント23%の横ばい、Thrivingの35%から34%への低下を示し、従業員のメンタルヘルスを中心テーマに、孤独・ストレス、経済状況や労働法、管理職の役割を論じ、損失を8.9兆ドル(世界GDPの9%)と推計した。2025年版(2024年データ)はエンゲージメントが21%に下がったことを伝え、主な原因を管理職のエンゲージメント低下(30%→27%)と結論づけ、管理職の研修・育成を立て直しの鍵とした。また2025年版から、地域のデータを3年分の調査をまとめた値で示すようになった。2026年版(2025年データ)はエンゲージメントが20%となり初めて2年連続で下がったこと、損失を約10兆ドル(GDPの9%)と推計したこと、AIと職場の関係を新たに大きく扱ったことが特徴である。
分かってきたこと
エンゲージメントは2022年の23%をピークに下がり続けている
世界の熱意あふれる社員の割合は、2022年の23%から2025年には20%となり、2020年以来の低さである。2年連続の低下は測定史上初めてで、2025年に上がった地域は一つもなく、最も大きく下がったのは南アジア(−5ポイント)である。それでも2009年の最初の測定より8ポイント、10年前より5ポイント高い。報告書によれば1ポイントはおよそ21百万人(21 million)の働く人に相当する。
管理職の「エンゲージメントの上乗せ」が縮んでいる
管理職のエンゲージメントは2022年以降で9ポイント下がり、2024年から2025年の1年で27%から22%へと最大の下げ幅を記録した。報告書は、管理職はかつて部下より熱意が高かったが、次第に部下と同程度になりつつあると指摘する。南アジア(主にインド)では管理職のエンゲージメントが8ポイント下がると同時に管理職の割合も減っており、報告書は組織のフラット化が一因である可能性を挙げている。一方、ベストプラクティス組織では管理職の79%が熱意あふれる状態で、世界平均のほぼ4倍である。
リーダーは人生の評価が高いが、日々の負担も重い
役職別に見ると、リーダー層はエンゲージメント26%、Thriving 43%と最も高い。ところが前日の強いストレス46%、怒り33%、悲しみ34%、孤独31%と、負の感情も多い。一般社員と比べるとストレスは7ポイント、怒りは12ポイント、悲しみは11ポイント、孤独は10ポイント高く、笑った・楽しんだといった前向きな感情も少ない。ただし熱意あふれる管理職(リーダーを含む)は、すべての負の感情が一般社員より少なく、Thrivingの割合も平均的なリーダーより14ポイント高い。
ウェルビーイングは持ち直したが、負の感情はコロナ前より高いまま
Thrivingは2018〜2022年に5年続けて改善したあと下がっていたが、2025年に33%から34%へ3年ぶりに上向いた。上昇が大きかったのは中南米・カリブとヨーロッパ(ともに+2ポイント)である。一方、前日のストレス・怒り・悲しみの割合はピークからは下がったものの、2020年以前より高い水準にとどまっている。PERSOLとWellbeing for Planet Earth財団との共同分析では、仕事を楽しみ、他者の役に立つと感じ、仕事に選択肢があると思う人ほど、ウェルビーイングとエンゲージメントが高い傾向がある。
AIの効果は個人には見えるが組織には届いていない(米国データ)
この章は世界調査ではなく米国の調査にもとづく。AIを導入した組織の米国の働く人の65%がAIは自分の生産性にプラスだと答えた一方、AIが組織の仕事の進め方を変えたと強く同意した人は12%にとどまる。管理職がチームのAI利用を積極的に支えていると強く同意する人は、AIが仕事の進め方を変えたと強く同意する割合が8.7倍だが、そうした支援があると強く同意する人は3分の1に満たない。また2026年第1四半期には米国の働く人の18%が、今後5年以内に自動化やAIで仕事がなくなる可能性があると答えた。