この号の内容
総合首位はオランダ
子ども本人の状態(アウトカム)の総合順位は、1位オランダ、2位デンマーク、3位ノルウェーである。この3か国とスイス、フィンランドは3分野すべてで上位3分の1に入る。最下位はチリで、ブルガリア、アメリカが続き、チリ・アメリカ・マルタは3分野すべてで下位3分の1である。イスラエル・メキシコ・トルコはデータ不足のため順位表から外れ、対象は38か国である。
📖 報告書では:第2章「Outcomes」p.12、図3(PDF p.13)
豊かさは好成績を保証しない
報告書は、国民所得の高さは最良の結果を保証しないと述べる。上位3分の1でスロベニアがスウェーデンより上、下位3分の1でリトアニアがアメリカより上に位置する。分野ごとの順位が大きく食い違う国もあり、韓国は身体的健康とスキルで上位3分の1だが精神的幸福度は下位3分の1、ルーマニアは精神的幸福度4位だが他の2分野は下位3分の1である。分野間の相関は身体的健康とスキルがr=0.58、スキルと精神的幸福度が0.30、身体的健康と精神的幸福度が0.10で、子どもの幸福が多面的であることを示す。
📖 報告書では:第2章 p.12(PDF)
心・体・スキルの課題
生活満足度が高い15歳(キャントリルの梯子=0〜10で人生を評価する質問で5より上と答えた子)が75%未満の国は41か国中12か国ある。生活満足度が高い15歳の割合は、データのある国のうちトルコが53%で最も低く、オランダが90%で最も高い。出生児の15人に1人が低体重で生まれ、10か国では3人に1人以上の子どもが過体重または肥満である。平均で5人に2人が15歳までに基礎的な読解・数学の力を身につけておらず、最も良いエストニアでも5人に1人以上が基準に届かない。18か国では4人に1人以上の15歳が「友だちを簡単につくれる」に同意していない。
📖 報告書では:エグゼクティブサマリー(PDF p.5)、図4(PDF p.13)、図10(PDF p.17)、図11(PDF p.21)
人間関係と資源の不足
支えてくれる家族がいる子ほど精神的幸福度が高い傾向にある。すべての国で、頻繁にいじめられている15歳(6種類のいじめのうち一つ以上を月に数回以上経験)は、そうでない子より生活満足度の平均が低い。英国の調査では、幸福度の低い子のうち支えてくれる人がいると感じるのは64%で、他の子の93%を大きく下回る。先進国のほぼ半数で5人に1人以上の子どもが貧困状態にあり、英国の追跡調査では14歳時点で最貧困層の子は最富裕層に比べ語彙力が低い割合が2.6倍、肥満の割合が1.8倍である。
📖 報告書では:エグゼクティブサマリー(PDF p.5–6)、図16(第3章)、PDF p.15、PDF p.40
サービスと家族政策の隙間
時系列データのある35か国のうち14か国で麻疹(はしか)の予防接種率が低下している。欧州29か国の平均で、3歳未満の子をもつ親の7人に1人が保育を利用したくてもできていない。5か国では15〜19歳の10%超が学校にも職にも職業訓練にもついておらず、5か国では育児休業が満額給与換算で10週未満である。父親に割り当てられた休業は全体の10分の1にすぎない。41か国中11か国では5%以上の世帯が安全に管理された水を利用できていない。
📖 報告書では:エグゼクティブサマリー(PDF p.6)、図32(PDF p.45付近)、第5章「The world at large」
条件の順位と提言
政策と社会の状況(条件)の順位は、ノルウェーが首位で、アイスランド、フィンランドが続き、最下位はトルコ、次いでメキシコ、ギリシャである。条件とアウトカムの関連は図45でR=0.42であり、条件が良い国ほどアウトカムも良い傾向がある一方、リトアニア・マルタ・ニュージーランドは条件が平均以上でもアウトカムが振るわない。ユニセフは「子どもの声を聞く」「政策をつなぐ」「強固な土台をつくる」の3点を求め、貧困削減、質の高い保育、子どものメンタルヘルス支援、家族にやさしい職場政策、大気汚染の削減、予防接種の強化の6項目を挙げる。本書はCOVID-19危機の開始時点の基準線として位置づけられている。
📖 報告書では:第5章 p.54・図44・図45(PDF p.57)、エグゼクティブサマリー(PDF p.6)、第6章(PDF p.58–59)
日本の結果
この号の調べ方
OECDまたはEUに加盟する高所得41か国を対象とし、アウトカムの順位表はデータのそろう38か国で作成している。精神的幸福度(PISA 2018による15歳の生活満足度、WHOによる15〜19歳の自殺率)、身体的健康(5〜14歳の死亡率、5〜19歳の過体重)、スキル(15歳の読解・数学の習熟、友だちを簡単につくれる割合)の各指標をzスコア(平均からのずれを標準化した値)にし、分野ごとに平均して順位化している。米国の心理学者ブロンフェンブレンナーの模型に似た同心円の多層的枠組みを使い、子どもの活動と人間関係、家庭の資源やネットワーク、国の政策と状況を関連づけている。
この号から言えること
- 日本は身体的健康で1位だが精神的幸福度は37位であり、分野による順位の差が極めて大きい国の一つである。
- 国の豊かさや良い政策条件は子どもの高い幸福度と結びつく傾向にあるが、一致はせず、条件のわりにアウトカムが低い国もある。
- 家族の支え・いじめ・貧困・遊び場など、子どもの身近な人間関係や資源が幸福度の差と関連していることを報告書は示している。
- 報告書はすべての分野で首位の国は無く、41か国すべてに大きな改善の余地があると結論づけている。
読むときの注意
生活満足度は41か国中33か国でしかデータが無く、自己評価には文化差がありうると報告書自身が述べている。自殺率は多くの国で2015年までのデータであり、暴力や子どもの参加については比較可能な指標が無い。示されている関連の多くは相関であり、要約では基礎学力について「7か国で2人に1人未満」、本文では「5か国で半数未満」と記述が分かれている点にも注意が必要である。