ウェルビーイングの調査・報告書

報告書・指針不定期データ:集計表のみ

ユニセフ・イノチェンティ研究所 レポートカード(先進国の子どものウェルビーイング)

Innocenti Report Card

ユニセフ(国連児童基金)イノチェンティ研究所

OECD・EUの国々の子どもの幸福度を、心の健康・体の健康・スキルの3分野で順位づける報告書。
対象
子ども(生活満足度は15歳)
対象の国・地域
44か国(順位表は37か国)(2026年のレポートカード20で)
方法
行政データ
頻度・期間
不定期(2000年〜2026年)・例年5月ごろ発表
幸福の測り方
精神的幸福度(生活満足度が高い15歳の割合=PISA、15〜19歳の自殺率)、身体的健康(5〜14歳の死亡率、5〜19歳の過体重)、スキル(15歳の読解・数学の習熟、社会的スキル)の3分野で順位(レポートカード20の指標)
データの入手
集計表のみ unicef.org/innocenti/reports/report-card… ↗

どんなレポートか

イノチェンティ・レポートカード(Innocenti Report Card)は、ユニセフ(国連児童基金)のイノチェンティ研究所が2000年から出している報告書シリーズである。対象は、EU(欧州連合)とOECD(経済協力開発機構)の国々という、世界でも特に豊かな国の子どもの権利とウェルビーイング(心身の健康や暮らしの良さを含む幸福)である。シリーズの出発点には、豊かな国で育っても幸せで健康な子ども時代が約束されるわけではない、という問題意識がある。これまでの号は、豊かな国で貧困の中にいる子どもの数、学校で子どもが経験する格差、生活環境、緑のある安全な遊び場の有無、子どもの心の健康などを取り上げてきた。研究・データ・政策提言を通じて、子どもの権利を守り、ウェルビーイングと将来を支える方法についての議論に情報を届けることを目的としている。

何をどう測っているか

新たな調査は行わず、PISA(OECDの国際学習到達度調査)やWHO(世界保健機関)などの既存の国際統計を組み合わせて国を比べる。近年の号は、精神的幸福度・身体的健康・スキルの3分野で国を順位づけし、総合順位も出している。レポートカード20では、精神的幸福度を「生活満足度が高い15歳の割合」(PISA)と「15〜19歳の自殺率」、身体的健康を「5〜14歳の死亡率」と「5〜19歳の過体重の割合」、スキルを「15歳の読解・数学の習熟」と「社会的スキル」で測っている。生活満足度は、キャントリルの梯子(0〜10の11段階で自分の人生を評価する質問)で5より上と答えた15歳の割合として示される。対象国の数と順位表に載る国の数は号ごとに異なり、レポートカード20では44か国を対象に37か国を順位づけした。発行は毎年ではなく不定期で、各号ごとに中心となるテーマが設定される。

これまでの歩み

2007年のレポートカード7は、所得だけでなく6つの側面から子どもの状況をとらえ、報告書自身が「先駆的」と位置づける多次元の枠組みを示した号である。これは、相対的所得貧困(その国の標準と比べて所得が低い状態)とそれを和らげる政策を扱った前号レポートカード6の分析を土台にしている。2013年のレポートカード11は、先進29か国の順位表、子ども自身が答えた生活満足度の順位、2000年代最初の10年間の変化の3部で構成された。2020年のレポートカード16は、先進41か国を扱い、精神的幸福度・身体的健康・スキルの3分野で38か国を順位づけし、オランダ、デンマーク、ノルウェーが上位となった。その後、レポートカード17『場所と空間(Places and Spaces)』は環境と子どものウェルビーイングを、レポートカード18『豊かさの中の子どもの貧困(Child Poverty in the Midst of Wealth)』は全体として豊かな時代にもかかわらず世界で最も豊かな国々で多くの子どもが貧困の中にいることを扱った。2025年5月のレポートカード19はOECDとEUの43か国を対象に、新型コロナ流行以降の変化を取り上げた。2026年5月のレポートカード20『不平等な機会:子どもと経済格差(Unequal Chances)』は44か国を対象に経済格差と子どもの幸福の関係を調べ、総合順位の上位はオランダ、デンマーク、フランスである。

分かってきたこと

豊かさは子どもの幸福を保証しない

シリーズを通じて、社会・経済・環境の条件に恵まれた国でも、政府はすべての子どもが健やかに育つための支援を十分に提供できていないと指摘されている。レポートカード16は、豊かな国の多くが経済・社会の好条件を子どもの高い幸福度に結びつけられていないと述べた。同号では、3分野すべてで首位に立つ国は無かった。

分野ごとの成績は一致しない

同じ国でも、身体的健康・精神的幸福度・スキルの順位は大きく食い違うことがある。レポートカード19は、日本、韓国、スロベニアがスキルでは上位3分の1に入る一方、精神的幸福度では下位3分の1に入ると示した。総合順位だけでなく分野別の順位を見ることで、その国の子どもの状況の偏りが分かる。

コロナ禍後、多くの国で学力・心・体が後退

レポートカード19によると、新型コロナの流行以降、多くの国で子どもの学力、精神的幸福度、身体の健康が下がった。2018〜2022年に15歳の生活満足度は大きく下がった。同じ期間に数学の得点は平均12点落ち、これは約7か月分の学びに相当する。

豊かな国の中にも家庭の経済状況による差がある

レポートカード20は、豊かな国の中でも貧しい家庭の子どもほど健康状態が悪く、生活満足度が低く、学力が低い傾向がはっきり見られると示した。15歳で読解・数学の基礎的な力に届く割合は、裕福な家庭で83%、貧しい家庭で42%であり、ほぼ2倍の開きがある。経済格差は、子どものウェルビーイングの複数の分野にまたがって表れている。

日本の結果

日本の順位の推移(各年版の公式資料から)
1位16位30位20位14位17位202526
日本は、身体的健康では一貫して上位にある一方、精神的幸福度が低いという偏りが目立つ。レポートカード16(2020年)では38か国中総合20位で、身体的健康1位、スキル27位、精神的幸福度37位だった。このとき生活満足度が高い15歳の割合は62%で、データのある国のなかでトルコ(53%)に次いで低かった。レポートカード19(2025年)では、2018〜2022年に子どもの生活満足度がはっきり上がった国は日本だけとされた。レポートカード20(2026年)では37か国中総合17位(身体的健康3位、スキル12位、精神的幸福度32位)で、5〜19歳の過体重の割合16%は対象国で最も低く、15歳の読解・数学の基礎的習熟の割合は75%を超え、上位20%と下位20%の家庭の差21ポイントは対象国で最も小さい。同号はまた、日本を所得格差は平均より大きい側に入る一方、子どもの貧困率は比較的低い側に入る国の一つとして挙げている。

各年版(5)

  • 2026 Innocenti Report Card 20: Unequal Chances: Children and economic inequality(2026年5月) この号を読む → ユニセフ・イノチェンティ研究所のレポートカード第20号『不平等な機会:子どもと経済格差(Unequal Chances: Children and economic inequality)』は、高所得国・OECD諸国44か国を対象に、経済格差が子どもの身体的健康、精神的幸福度、スキルとどう結びついているかを調べた号である。37か国を順位づけした総合ランキングでは、オランダ、デンマーク、フランスが上位3か国である。最大の話題は、豊かな国の中でも貧しい家庭の子どもほど健康状態が悪く、生活満足度が低く、学力が低い傾向がはっきり見られる点である。たとえば15歳で読解・数学の基礎的な力に届く割合は、裕福な家庭で83%、貧しい家庭で42%と、ほぼ2倍の開きがある。
  • 2025 Innocenti Report Card 19: Child Well-Being in an Unpredictable World(2025年5月) この号を読む → ユニセフ・イノチェンティ研究所が2025年5月に出した「レポートカード19」は、OECD(経済協力開発機構)とEU(欧州連合)の43か国を対象に、子どもの精神的幸福度・身体的健康・スキルを比べた号である。豊かな国で育っても、幸せで健康な子ども時代が約束されるわけではない、というのがこの号の出発点である。最大の話題は、新型コロナの流行以降、多くの国で学力・心の幸福度・身体の健康が下がったことである。2018〜2022年に15歳の生活満足度は大きく下がり、数学の得点は平均12点(約7か月分の学びに相当)落ちた。
  • 2020 Innocenti Report Card 16: Worlds of Influence: Understanding what shapes child well-being in rich countries(2020年5月) この号を読む → ユニセフ・イノチェンティ研究所の「レポートカード16」(2020年5月)は、先進41か国の子どものウェルビーイングを比べた報告書である。精神的幸福度・身体的健康・スキルの3分野で38か国を順位づけし、首位はオランダ、次いでデンマーク、ノルウェーである。最大の話題は、豊かな国であっても経済・社会の好条件を子どもの高い幸福度に結びつけられていない国が多く、すべての分野で首位に立つ国は無いという指摘である。日本は身体的健康で1位だが、精神的幸福度は38か国中37位で、総合20位にとどまる。
  • 2013 Innocenti Report Card 11: Child well-being in rich countries: A comparative overview(2013) この号を読む → ユニセフ・イノチェンティ研究所の『レポートカード11:先進国における子どものウェルビーイング——比較概観(Child well-being in rich countries: A comparative overview)』(2013年)は、先進国の子どもの暮らしぶりを国ごとに比べた報告書である。報告書は3部で構成される。第1部は、世界の先進29か国を子どものウェルビーイング(心身の健康や暮らしの良さを含む幸福)で順位づけした一覧表(リーグテーブル)である。第2部は子ども自身が答えた生活満足度の順位、第3部は2000年代最初の10年間の変化を扱う。
  • 2007 Innocenti Report Card 7: Child poverty in perspective: An overview of child well-being in rich countries(2007) この号を読む → ユニセフ・イノチェンティ研究所(UNICEF Innocenti Research Centre)が2007年に発行したレポートカード第7号は、先進国の子どものウェルビーイング(暮らしの良さ・幸福)を初めて総合的に描き出した報告書である。前号の第6号は、子どもに影響する相対的所得貧困(その国の標準と比べて所得が低い状態)と、それを和らげる政策を扱った。第7号はその分析を土台に、所得だけでなく6つの側面から子どもの状況をとらえ直している。最大の話題は、子どもの暮らしを複数の次元で測るという、報告書自身が「先駆的」と位置づける枠組みの提示である。

どう読む・どう使う

各国の政府や子ども支援に関わる人が、自国の子どもの状況を他の豊かな国と比べ、どの分野が弱いのかを確かめる材料として使える。分野別の順位を見ることで、日本のように体の健康や学力は高いが心の幸福度が低い、といった偏りを把握できる。各号のテーマ(貧困、環境、コロナ禍、経済格差など)に沿った分析と政策提言は、政策議論や教育・研究の場で論点を整理する手がかりになる。生活満足度や過体重、学力など個々の指標の値を、国際比較の基準として参照することもできる。

読むときの注意

順位は既存の統計を組み合わせて作られており、号ごとに指標・対象国・計算方法が変わるため、順位の上下をそのまま改善・悪化と読むことはできない。精神的幸福度に使われる生活満足度はPISAでの15歳の自己評価であり、答え方に文化による違いが入りうる。使われているデータの年は報告書の発行年より古い。

日本語版・邦訳

日本ユニセフ協会 レポートカード(Report Card)シリーズ:unicef.or.jp/library/reportcard/ ↗/レポートカード19 ハイライト~日本の子どものウェルビーイング~:unicef.or.jp/report/rc19_jpnhighlights.h… ↗

確認日:2026-10-07。URL・数字は公式の資料で確かめたものです。解説は、公式ページと報告書本文に書かれていることだけをもとにAIが書き、数字が元資料にあることを照合しています。

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