この号の内容
総合首位はオランダ
順位表は、身体的健康・精神的幸福度・スキルの3分野を各2指標、計6指標で測り、各指標を同じ重みで合成している。上位3か国のオランダ、デンマーク、フランスは、3分野すべてで上位3分の1に入る。一方、下位5か国のうちチリ、トルコ、ウルグアイ、コロンビアの4か国は、3分野すべてで下位3分の1である。ギリシャ、アイスランド、スロベニアは3分野がそれぞれ別の3分の1に分かれ、多くの国で得意・不得意が偏っている。前号(第19号、2025年)から新しいデータが入ったのは自殺率と死亡率の2指標だけで、総合順位は前号と大きくは変わらない。
📖 報告書では:第2章「A league table of child well-being」p.6–9、Box 1、表1(p.8)
上位と下位で所得は3.5〜8倍超
所得格差は、所得分布の上位20%にあたる人と下位20%にあたる人の所得の比(P80–P20比)で測っている。最も平等なスロバキア、アイスランド、チェコ、スロベニア、ベルギーでも、この比はおよそ3.5倍ある。最も不平等なコスタリカ、チリ、米国、トルコの4か国では8倍以上である。子どもの貧困率(中央値所得の60%を下回る家庭の子どもの割合)は、デンマークの約10%からコロンビアとコスタリカの約37%まで幅がある。全体として、所得格差の大きい国ほど子どもの貧困率が高い傾向にある。
📖 報告書では:第3章「Economic inequalities」p.12–14、図2
格差の大きい国ほど死亡・過体重が多い
公式ページによると、経済格差が最も大きい5か国の5〜14歳の死亡率は、最も平等な5か国の平均2.4倍である。過体重の子どもの割合も、最も不平等な国々では最も平等な国々の1.7倍である。5〜19歳の過体重の割合(2022年)は、日本の16%からチリの58%まで開きがある。対象国全体の過体重の割合は、1990年の約17%から2022年には約28%へ上昇した。報告書は、国の豊かさの違いを考慮してもこの関連は残るとする一方で、所得格差が直接の原因かどうかは「議論の余地がある」としている。
📖 報告書では:第4章「Economic inequalities in physical health」p.16–23、図3・図4、章末SUMMARY(p.23)、公式ページ「Physical health」
国内でも貧しい家庭ほど健康状態が悪い
同じ国の中で比べても、経済的に不利な子どもほど健康状態が悪いという証拠は、報告書によれば「確立していて決定的」である。EUでは、親が「とても健康」と評価した子どもの割合(2024年)は、所得下位20%の家庭で58%、上位20%の家庭で73%である。HBSC調査(2021〜2022年、31か国)では、自分の健康を「非常に良い」と答えた子どもは、裕福な家庭で39%、そうでない家庭で27%である。米国では、母親が高校を卒業していない子どもは、大卒の母親の子どもより早期に亡くなるリスクが40%高いと推計されている。
📖 報告書では:第4章 p.21–23、図7(p.22)
生活満足度は国内の格差で差がつく
生活満足度は、今の生活を0(まったく満足していない)〜10(完全に満足)で評価してもらい、6以上と答えた15歳の割合で測っている。この割合は、トルコの43%からオランダの87%まで幅がある。2018年から2022年にかけて、日本を除くすべての国でこの割合が下がった。国全体の所得格差・資産格差と、生活満足度や15〜19歳の自殺率との関連は弱い。ただし国内で見ると、最も恵まれた家庭の子どもの約77%が高い生活満足度を示すのに対し、最も不利な家庭では約67%にとどまる。
📖 報告書では:第5章「Economic inequalities and children's mental well-being」p.24–28、図8・図9、公式ページ「Mental well-being」
学力は裕福な家庭の子が約2倍
学力の指標は、15歳で読解と数学の両方で基礎的な習熟(日常生活に必要な力)に達している割合である。この割合は、コロンビア、コスタリカ、メキシコの約20%から、アイルランド、日本、韓国の75%超まで幅がある。対象国全体では約3分の1の子どもがこの水準に届いておらず、2018年から2022年に37か国中21か国で大きく低下した。社会経済的地位の上位20%と下位20%の差は、日本の21ポイントからルーマニアの61ポイントまで開いている。社会的スキル(学校で友達を作りやすいと答えた割合)の差は小さく、最も恵まれた層で77%、最も不利な層で72%である。
📖 報告書では:第6章「Economic inequalities and children's skills」p.30–36、図12・図15、公式ページ「Children's skills」
日本の結果
この号の調べ方
対象は、高所得国またはOECD加盟国に分類される44か国である。順位表は、6指標すべてのデータがそろう37か国について作られている。指標と出典は次のとおりである。5〜14歳の死亡率は国連の推計(UN IGME、2024年)、5〜19歳の過体重は国際研究グループ(NCD-RisC、2022年)、15〜19歳の自殺率はWHO死亡データベース(2023年または最新年)である。生活満足度・学力・社会的スキルは、OECDの15歳対象の国際学力調査PISA 2022による。分析は、国の平均どうしを比べる「国家間」の格差と、同じ国の中で家庭の経済状況による違いを見る「国内」の格差の2つの視点で行われている。
この号から言えること
- 豊かな国でも、子どもの健康・生活満足度・学力は、家庭の経済状況によってはっきり差が開いている。とくに学力では、裕福な家庭の子どもが基礎的な力に届く割合が、貧しい家庭の約2倍(83%対42%)である。
- 国全体の所得格差との関連は、身体的健康では強く、精神的幸福度では弱い。一方、国内で家庭どうしを比べると、どちらの分野でも差が見られる。
- 日本は身体的健康とスキルで上位に入り、学力の家庭間格差も最も小さい。その一方で、精神的幸福度は32位と低く、分野間の差が大きい。
- 報告書は、子どもの貧困を減らすための施策(家族・児童手当や最低賃金などのセーフティネット)、住まい・地域・学校の資源の公平化、子ども自身との協働、データの改善を政策の方向として示している。
読むときの注意
国の所得格差と子どもの状態の関連は相関であり、報告書自身も、所得格差が直接の原因かどうかは議論の余地があるとしている。精神的幸福度の指標は自殺率と生活満足度の2つだけで、抑うつや不安などは国際比較データが無く含まれていない。順位は前号からデータが更新された指標が2つに限られ、生活満足度などはPISA 2022に基づく点にも注意が必要である。