この号の内容
児童手当拡充など家計支援
特集①では、子育て世帯の家計や仕事と育児の両立を支える新しい仕組みをまとめている。児童手当は、主たる生計者の年収960万円以上という所得制限を撤廃し、支給期間を中学校修了前までから高校生年代まで延ばした。月額は、0歳から3歳未満の第1子・第2子が1万5千円、3歳から高校生年代の第1子・第2子が1万円、第3子以降が3万円である。出産育児一時金は42万円から50万円に引き上げられ、妊婦には「妊婦のための支援給付」として計10万円が支給される。このほか、NISAのつみたて投資枠の年齢要件を撤廃し、0〜17歳に年間投資枠60万円・非課税保有限度額600万円を設けた。2歳未満の子を育てるために時短勤務をしている人向けの「育児時短就業給付」も新しく創設された。
📖 報告書では:第1部第1章 特集①(概要版PDF p.4、白書概要 p.2)
こども誰でも通園制度が全国へ
特集②の「こども誰でも通園制度」は、2025年4月に創設された。一部の自治体での先行実施を経て、2026年4月から全国で本格実施されている。対象は0歳6か月から満3歳未満の未就園児で、保護者が働いているかどうかにかかわらず利用できる点が大きな特徴である。白書は制度の意義を立場ごとに整理している。こどもは家庭以外の場で他者と関わることで社会情緒的な発達が促されることが期待される。保護者は孤立感や不安感が和らぐ。保育者は専門性を地域全体のこどもの育ちに生かせる。事業者は地域連携を強めながら保育人材を確保しやすくなる。
📖 報告書では:第1部第1章 特集②(概要版PDF p.5、白書概要 p.3)
こどもへの性暴力対策
特集③は、こどもへの性暴力を、こどもの権利を著しく侵害し、生涯にわたり心身の発達に深刻な影響を与え得る重大な加害行為と位置づけている。児童買春事犯等の検挙件数は3年連続で増え、2025年は過去10年で最多となった。政府の取組は段階的に進んでいる。2022年5月に「子供の性被害防止プラン2022」を策定し、2024年4月には関係府省庁が連携して取り組む「こども性暴力防止に向けた総合的な対策」を取りまとめた。さらに、学校設置者や民間の教育・保育事業者に性暴力防止の措置を求める法律(こども性暴力防止法)が2024年6月に成立し、2026年12月25日に施行される。2026年1月には制度の詳細を定めたガイドラインも策定された。義務対象事業者や認定事業者は「こまもろうマーク」を表示できる。
📖 報告書では:第1部第1章 特集③(概要版PDF p.5、白書概要 p.3)
出生数・婚姻・働き方の現状
第2部は、こども大綱(2023年12月22日閣議決定のこども政策の基本方針)に掲げた指標などを使って現状を概説している。2025年の出生数は67万1,236人で、前年より1万4,937人減った。合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むこどもの数の目安)は1.14で、前年の1.15から下がった。一方、婚姻件数は48万9,119組で前年より4,027組増え、婚姻率(人口千人あたり)は4.0から4.1に上がった。2021年の夫婦の完結出生児数は1.90である。2026年の若者の非正規雇用割合は、15〜24歳で男性53.0%・女性60.1%、25〜34歳で男性14.1%・女性27.4%である。週60時間以上働く男性の割合は40歳代が9.2%で、他の年代より高い。
📖 報告書では:第2部第1章「こども・若者、子育て当事者の置かれた状況等」(概要版PDF p.7、白書概要 p.5)
虐待・不登校・自殺の深刻さ
「安全・安心」の項目では、厳しい数字が並ぶ。2024年度の児童相談所の児童虐待相談対応件数は22万3,691件で、依然として高い水準にある。小・中学校の不登校児童生徒数と、学校でのいじめの重大事態の発生件数は、いずれも2024年度に過去最多となった。SNSに起因する事犯の被害に遭った小学生の数は、過去10年で約4倍に増えている。小中高生の自殺者数は2025年に538人である。2022年の国民生活基礎調査に基づくこどもの相対的貧困率は11.5%で、ひとり親世帯に限ると44.5%と高い。
📖 報告書では:第2部第1章「安全・安心」「成育環境」(概要版PDF p.7、白書概要 p.5)
14本のダイジェスト
第1部第2章では、第3部に載せた施策のうち14本を「ダイジェスト」として紹介している。外部からの寄稿も含まれる。こどもの自殺対策では、こども家庭庁の大臣プロジェクトに加え、東京都足立区と「あだち若者サポートテラスSODA」の取組を取り上げた。このほか、埼玉県鴻巣市の長期休業期間限定児童クラブ、聴覚障害のある当事者による4人のこどもの子育て経験、社会福祉法人麦の子会による障害のあるこどもと家族の支援が寄稿として載っている。こどもホスピスの全国普及に向けたモデル事業、いじめの重大化を防ぐ「留意事項集」「研修用事例集」、プレコンセプションケア(性別を問わず性や妊娠・出産の正しい知識を広め、健康管理を促す取組)なども紹介している。
📖 報告書では:第1部第2章 ダイジェスト①〜⑭(概要版PDF p.6、白書概要 p.4)
日本の結果
この号の調べ方
この白書は、こども基本法第8条第1項に基づく年次報告で、2025年度(令和7年度)のこどもをめぐる状況と政府のこども施策の実施状況を国会に報告するものである。第1部は特集とダイジェスト、第2部はこども大綱の指標や各種統計による現状の概説、第3部は政府施策の実施状況(全4章)で構成される。統計の出典は複数ある。出生・婚姻の2025年値は人口動態統計月報年計(概数)、貧困率は国民生活基礎調査(2022年)、長時間労働は労働力調査(2025年)による。
この号から言えること
- 安心できる場所や助けてくれる人がいると思うこども・若者は9割を超える。一方で、日常生活を円滑に送れていると思うのは約3人に1人にとどまり、「つながりはあるが生活の手応えは弱い」という差が数字に表れている。
- 出生数の減少、虐待相談の高止まり、不登校・いじめ重大事態の過去最多、小中高生の自殺538人と、こどもをめぐる厳しい指標が同時に並んだ号である。
- 政策面では、児童手当の所得制限撤廃や「こども誰でも通園制度」の全国実施など、親の就労や所得にかかわらない支援への拡大が特集の柱になっている。
- 「こどもまんなか社会の実現に向かっている」と思う人は19.2%であり、政府の掲げる目標が社会の実感としてはまだ広く共有されていないことを白書自身の指標が示している。
読むときの注意
この記事は概要版をもとにしており、こども大綱の指標(98.1%など)を測った調査の対象年齢・人数・実施時期は、概要版には示されていない。2025年の出生・婚姻の値は概数である。また、本文中の「こどもの半数以上が将来に明るい希望がある」と図の68.8%は、対象の範囲が同じとは限らないため、比べるときは全文版で定義を確かめる必要がある。