この号の内容
個人のウェルビーイングは横ばい
2025年10〜12月、生活満足度が低い成人は4.9%、人生でしていることに価値を感じる程度が低い成人は3.9%、幸福感が低い成人は8.1%であった。不安が高い成人は23.6%で、ほかの項目より多い。いずれも前年同期から変化はない。5年前(2020年10〜12月)と比べると、生活満足度・幸福感・不安の低さや高さの割合は改善し、価値の感覚は横ばいである。ただし報告書は、2020年はコロナ禍でウェルビーイングが特に低かった時期で、改善の一部はその異常に低い時点からの回復を反映すると注意している。2026年4月には64.4%が将来に希望を持ち、18.2%が社会から不当に扱われていると感じていた。
📖 報告書では:第3節「Personal well-being」
人間関係は強く、孤独は少数で固定
2025年9月、成人の85.8%(約7人に6人)が人間関係に満足し、2026年4月には87.4%が頼れる人がいると答えた。どちらも前年から有意な変化はない。一方、2026年4月に孤独を「よく」「いつも」感じる成人は6.1%(約16人に1人)、2023年1月〜2024年12月に関係に「かなり」「非常に」不満な人は5.0%で、短期・長期ともに変化がない。地域で背景の異なる人同士がうまくやっていると考える人は60.5%(2026年4月)、ほとんどの人を信頼すると答えた人は67.7%(2026年3月)であった。
📖 報告書では:第4節「Our relationships」
健康寿命と主観的健康が悪化
出生時の健康寿命(健康な状態で生きると見込まれる年数)は2022〜2024年に男性60.7年、女性60.9年で、2019〜2021年(男性約62.4年、女性約63.4年)、2011〜2013年(男性62.7年、女性63.7年)から下がった。健康状態が「良い」「非常に良い」と答えた成人は2026年初めに70.4%で、5年前の75.4%から低下した。一般健康質問票(GHQ、心の不調をみる質問票)でうつや不安の兆候がある成人は2023年1月〜2024年12月に24.6%で、2021〜2022年の21.8%、2018〜2019年の19.7%から増えた。一方、医療制度への満足は2026年3月に57.2%と前年の50.1%から上昇した。
📖 報告書では:第5節「Health」
所得は安定、4人に1人が家計苦
等価可処分世帯所得(世帯人数を調整した手取り所得)の中央値は2024年度に実質36,663ポンドで前年から有意な変化はないが、コロナ前の2019年度(35,224ポンド)より高い。所得格差を示すジニ係数は2024年度32.9%で、2019年度の36.0%より低い。フルタイムの男女賃金格差は2025年4月に6.9%で、過去10年で4分の1以上縮小した。それでも、2025年3月期の年度には住居費を差し引いた後の相対的低所得で暮らす人が19.6%おり、2026年4月には成人の24.6%が家計のやりくりが「かなり」「非常に」苦しいと答えた。報告書は、全体の改善が国民全体に均等には行き渡っていないと述べている。
📖 報告書では:第8節「Personal finance」
経済は改善、消費者心理は低迷
2026年1〜3月期の1人当たりGDPは10,215ポンドで前年同期比0.9%増、2021年1〜3月期比では11.6%増であった。失業率は5.0%で、前年同期(4.5%)や2021年同期(4.9%)から有意な変化はない。消費者物価指数の上昇率は2026年4月までの12か月で2.8%と、前年の3.5%から鈍化した。一方、GfK消費者信頼感指数は2026年4月にマイナス25.4で、2023年10月以来の低さである。報告書は、経済指標と人々の受け止めの間に乖離があると指摘している。
📖 報告書では:第10節「Economy」
政府への信頼は3割未満
2026年3月に英国政府を信頼する傾向にあると答えた成人は29.2%にとどまり、前年から有意な変化はない。裁判所・司法制度への満足は33.8%、警察への満足は50.9%であった。「政府のすることに自分は何の発言権もない」とする人は2026年4月に63.8%で、2025年6月の69.2%から改善したが、報告書は5月7日の地方選挙直前の調査であり一時的な影響の可能性があると注意している。2024年総選挙の投票率は59.7%で2001年以来最低となった。また近所への帰属意識は2025年6月の53.3%から2026年4月の63.6%に上昇した。
📖 報告書では:第11節「Governance」、第7節「Where we live」
排出削減は進むが自然は停滞
英国の温室効果ガス排出量は2025年までに二酸化炭素換算366.6百万トンに減り、1990年の半分未満となった。再生可能エネルギーは2024年に総エネルギー消費の16.2%と過去最高である。一方、家庭ごみのリサイクル率は2023年に約44.6%で過去10年ほぼ変わらず、地表水域で生態状態が「良」「高」とされたのは2024年に32.8%で2009年以降ほとんど変化がない。優先種の生息数は2023年に1970年の約38.1%まで減った。2026年3月には成人の86.0%が環境問題のために何らかの生活の変化をしたと答えた。
📖 報告書では:第12節「Environment」
この号の調べ方
英国国家統計局が2011年から追跡している「英国の国民のウェルビーイング指標(UKMNW)」の59指標を、個人のウェルビーイング・人間関係・健康・時間の使い方・住む場所・家計・教育と技能・経済・統治・環境の10分野に整理した統計速報である。主な指標のONS4は、生活満足度、人生でしていることに価値があると感じる程度、昨日の幸福感、昨日の不安を0〜10で答えてもらう4つの質問である。短期の変化は原則として最新時点と前年の比較、長期の変化は5年前との比較で判定し、信頼区間がある場合は統計的有意性で、ない場合はデータ所有者の判断で評価している。
この号から言えること
- 個人のウェルビーイングは前年から変化がなく、5年前比の改善もコロナ禍の低い時点からの回復を含むため、報告書自身が慎重な解釈を求めている。
- 所得・資産の平均像は安定し格差も一部縮小したが、成人の24.6%が家計の苦しさを訴え、消費者信頼感も2023年10月以来の低水準で、統計上の改善と生活実感にずれがある。
- 健康寿命の短縮、主観的健康の低下、うつ・不安の兆候の増加という長期的な健康悪化が、医療制度への満足度上昇と並んでいる。
- 16〜24歳で就学・就労・職業訓練のいずれもしていない若者(NEET)は2026年1〜3月に13.5%で、2021年同期の10.7%から長期的に増えている。
読むときの注意
各指標は調査の出典・対象地域・時期・質問文が異なり、英国全体の値がない指標もあるため、指標同士を単純に比べないよう報告書自身が注意している。世帯調査にもとづく指標は施設などに住む人を代表しない場合がある。示された数値は分野ごとの集計で、ある要因が幸福度を左右するという因果関係を示すものではない。