ウェルビーイングの調査・報告書

2026年版テーマ:方法の全面改定:ある分野の弱さを他の分野の強さで埋め合わせにくくした「べき平均」の導入と、新設の「社会」領域

Legatum Prosperity Index 2026(第17回、方法を全面改定、161か国、2026年8月)

プロスペリティ研究所(Prosperity Institute、英国のシンクタンク。旧称レガタム研究所 Legatum Institute)。指数の権利はLegatum Limited

英国のシンクタンク、プロスペリティ研究所(Prosperity Institute)が2026年に出したレガタム繁栄指数(Legatum Prosperity Index)の第17回版である。2023年版のあと発行を休み、計算方法を全面的に改めた。161か国を「発展」「自由」「社会」の3領域と10の柱で評価している。首位はスイスで、東欧のエストニアとチェコが初めて上位20か国に入った。日本は14位で、健康の柱は世界1位である。

この号の内容

新方式「べき平均」と3領域

今回の版は国の繁栄を3つの領域に分ける。発展(どれだけ発展しているか)、自由(どれだけ自由か)、社会(社会の結びつきがどれだけ強いか)である。領域の下には10の柱がある。発展は生活水準・健康・教育、自由は市民の平和・異議を唱える自由・経済の自由、社会は家族・地域・社会・国家の健全さからなる。新たに「べき平均(p-averaging)」という平均の取り方を採り、報告書はこれを「レガタム平均原則」と呼ぶ。ふつうの算術平均と違い、どこかに大きな弱点がある国は、ほかが強くても点数が引き下げられる。報告書は「莫大な富は壊れた人間関係や抑圧を埋め合わせられない」という考えを数式に反映させたと説明している。

📖 報告書では:序文 p.4–5、エグゼクティブサマリー p.7、序章「The Three Domains」「The Ten Pillars」p.11–12

首位スイス、弱点の少なさが決め手

1位スイス、2位ノルウェー、3位アイルランド、4位デンマーク、5位フィンランドである。スイスがいちばん順位を落とした柱は「家族の健全さ」だが、それでも15位にとどまる。これに対し、4位デンマークの最低は経済の自由の50位、3位アイルランドの最低は教育の47位である。2023年版では上位4か国をデンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランドの北欧勢が独占していた。今回もこれらの国はすべて10位以内に入っている。それでも首位の座を失った理由について、報告書は高い税負担を挙げている。

📖 報告書では:Key Findings「Switzerland tops the Index」p.8、「A question-mark as to Scandinavian dominance」p.9、順位表 p.16

東欧の躍進と米英の僅差

報告書は上位20か国をP20、上位30か国をP30と呼ぶ。エストニア(19位)とチェコ(20位)が初めてP20に入り、ラトビアとリトアニアもスロベニアに続いてP30入りした。エストニアはフランス(21位)より上、リトアニア(25位)はスペイン(26位)やイタリア(28位)より上である。米国は17位、英国は18位で、米国が英国を上回るのは2015年版以来初めてとなる。総合スコアは米国85.5%、英国85.4%とほぼ並ぶ。米国が前に出た主な要因は、1人あたり国民総所得(GNI)の高さによる生活水準の点である。一方、米国の弱い柱は健康(42位)、家族の健全さ(37位)、社会の健全さ(34位)である。イスラエルも33位から24位へ大きく上がり、家族の健全さでは世界1位である。

📖 報告書では:Key Findings「New entrants to the P20 and P30」「The USA and UK are almost tied」「Israel performs strongly」p.8、図1

権威主義の豊かな国が後退

中国は2023年版の54位から110位へ大きく下がった。自由の領域が150位と低いためで、発展は60位、社会は88位である。報告書は「地政学的な力は人間の繁栄に直結しない」と述べている。ロシアは77位から103位に下がり、自由は142位である。ベラルーシは発展こそ54位だが、自由155位・社会132位と低く、総合132位(2023年は78位)で欧州最下位となった。ほかにメキシコが71位から85位へ、英国が12位から18位へ下がった。英国の経済の自由は2015年の7位から18位に落ちており、報告書はその主因をインフレによる「健全な通貨」の点数低下としている。

📖 報告書では:Key Findings「Fallers」p.9、図2

重要な傾向と相関分析

3領域のうち総合点との結びつきがいちばん強いのは「社会」で、報告書は発展や自由より強い予測因子だとしている。社会領域の上位はデンマーク1位、ノルウェー2位、アイスランド3位、フィンランド4位である。10の柱のうち、総合点との相関係数が0.9を超えるのは「市民の平和」と「社会の健全さ」の2つである(相関係数は、二つの数値がどれだけ連動して動くかを表す指標)。発展と自由の順位が食い違う国もある。シンガポールは発展3位・自由35位、UAEは発展13位・自由90位である。逆にブータンは発展102位・自由38位である。さらに、繁栄している国ほど税負担が重い傾向がある。出生率が低く、違法薬物の取引が多い傾向もある。友人づくり・笑い・見知らぬ人への手助け・ボランティアといった項目では、繁栄していない国と同じか、むしろ低い点数の傾向がある。

📖 報告書では:Key Findings「Significant Trends」p.10

弱点を直せば伸びる国

べき平均は弱点に敏感なので、政策上の優先課題を浮かび上がらせる。報告書はそう説明し、具体例を挙げている。コスタリカは経済の自由が世界4位なのに、教育は96位である。英国は教育に優れる一方、派閥化(集団間の対立や不平等)を背景に社会の健全さが弱い。韓国は社会の健全さが非常に高いが、出生率の急低下で家族の健全さが120位と低い。チリは上位40位以内で中南米2位だが、低い出生率が足を引っ張っている。

📖 報告書では:Key Findings「Priorities for Prosperity」p.9–10、順位表 p.16

日本の結果

日本は161か国中14位である。10の柱のうち健康は世界1位で、2位シンガポール、3位韓国を上回る。健康の柱は平均寿命(重み25%)と子ども・乳児の死亡(重み75%)で測る。社会の健全さは2位(1位ノルウェー)、経済の自由は5位と、いずれも上位にある。3領域では自由7位、社会16位、発展24位である。一方、地域の健全さは38位、家族の健全さは32位、生活水準は31位と相対的に低い。上位15か国のうち人口が1千5百万人(15 million)を超える国は4か国だけで、日本はドイツ・オーストラリア・オランダとともにその一つである。

この号の調べ方

対象は161か国で、世界人口の98%をカバーする。35のデータ源から得た130超の指標を使い、615,877のデータ点を3領域・10の柱にまとめて点数と順位を出す。データは2025年時点までで、2015年以降の毎年について時系列のスコアも提供する。12人の専門家が査読している。

この号から言えること

  • 今回から弱点を他の強みで相殺しにくい計算方法になった。このため、すべての分野がそろって高い国が上位に来る。弱点の少なさでスイスが首位になったのはその典型である。
  • 日本は健康で世界1位、社会の健全さで2位、経済の自由で5位と強い。その一方、地域と家族の健全さ、生活水準の順位は相対的に低い。
  • 総合点との結びつきが最も強いのは「社会」の領域である。柱では「市民の平和」と「社会の健全さ」の相関係数が0.9を超える。
  • 繁栄している国ほど税負担が重く、出生率が低い傾向がある。友人づくりや笑いといった項目でも高くない傾向が示されている。

読むときの注意

2023年版との順位の比較は、方法の全面改定をはさんでいる。中国やエストニアの大きな変動は、新しい計算方法による結果でもある。また、この指数は統計指標を組み合わせた合成指数であり、個人の幸福感を直接たずねる調査ではない。相関分析の結果は、たとえば「社会が強ければ繁栄する」といった因果関係を示すものではない。

出典

主に参照した箇所:Summary Report 2026 p.4–12(序文・エグゼクティブサマリー・主な発見・序章)、p.16–17(順位表)、p.22–23(健康)、p.30–31(経済の自由)、p.36–37(社会の健全さ)。この記事は、上の公式資料に書かれていることだけをもとにAIが書き、記事中の数字が元資料にあることを照合しています(2026-10-12取得)。正確な値や文脈は原典で確かめてください。

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