どんなレポートか
レガタム繁栄指数(Legatum Prosperity Index/LPI)は、英国のシンクタンクであるプロスペリティ研究所(Prosperity Institute、旧称レガタム研究所 Legatum Institute)が発行する、国ごとの「繁栄(prosperity)」を比べる指数である。国の豊かさをGDPだけで測らず、健康、教育、生活水準、治安、自由、家族や地域のつながり、国家の働きなどの統計を合成して順位を付ける。2007年に始まり、2026年版は17回目にあたる。公式サイトは「長く続く価値観、意味のある指標(Values That Last, Metrics That Matter)」を掲げ、国が「しなやかな発展」「自由の前進」「意味のある社会関係」を通じてどう栄えるかを測る指数だと説明している。人々に幸せかどうかを尋ねて主観的な幸福度を順位にするものではなく、人々が栄えるための条件を測る指数として使われる。
何をどう測っているか
指数は行政機関などが公表する既存の統計を集めて作る合成指数(複数の指標を一つの得点にまとめたもの)である。2026年版は130以上の指標を使い、161か国について2015〜2025年の11年分を計算している。全体は「発展」「自由」「社会」の3領域に分かれ、発展は健康・教育・豊かさ(生活水準)、自由は市民の平和・異議を唱える自由・経済の自由、社会は家族・地域・社会・国家の健全さという計10の柱で構成される。たとえば2026年版の「健康」の柱は、平均寿命(重み25%)と子ども・乳児の死亡(重み75%)で測る。2026年版からは「べき平均」と呼ぶまとめ方を採用し、ある分野の弱さをほかの分野の強さで埋め合わせにくくした。2023年版までは、安全・安心、個人の自由、ガバナンス、社会関係資本、投資環境、企業環境、インフラと市場アクセス、経済の質、生活条件、健康、教育、自然環境の12の柱で167か国を評価していた。
これまでの歩み
指数は2007年に始まり、2021年版は167か国を12の柱で比べた第15版で、首位はデンマーク、最下位は南スーダン(167位)だった。2021年版の中心的な話題は、2015〜2019年に着実に伸びた世界の繁栄が2年連続で横ばいになったことで、報告書はその原因をコロナ禍による健康・経済への打撃と、政治的な説明責任や言論・集会の自由の長期的な後退の両方に求めた。2023年2月の第16回版も167か国が対象で、首位デンマーク、2位スウェーデン、3位ノルウェーだった。この版では世界の繁栄が3年連続で横ばいにとどまり、報告書は主な理由を制度と民主的な手続きの全体的な劣化だとしている。その後、発行を休んで計算方法を全面的に改め、2026年8月に第17回版を出した。2026年版は161か国を3領域・10の柱で評価し、2015年までさかのぼって計算し直している。首位はスイスで、東欧のエストニアとチェコが初めて上位20か国に入った。
分かってきたこと
世界の繁栄は2020年代初めに足踏みした
2021年版は、2015〜2019年に伸びていた世界の繁栄が2年連続で横ばいになったと報告した。2023年版では横ばいが3年連続となった。報告書は2021年版でコロナ禍の打撃と自由・説明責任の長期的な後退を、2023年版では制度と民主的な手続きの劣化を主な理由として挙げている。
上位は欧州の国が占め、大国は少ない
2021年版と2023年版の首位はデンマークで、2023年版ではスウェーデン、ノルウェーが続いた。2026年版の首位はスイスである。2026年版の上位15か国のうち人口が1千5百万人を超える国は4か国だけで、日本、ドイツ、オーストラリア、オランダがそれにあたる。
東欧の国が上位に入ってきた
2026年版では、エストニアとチェコが初めて上位20か国に入った。公式サイトのスポットライト報告にも、V4諸国(The V4 Countries)を取り上げた事例研究が並んでいる。
同じ国でも柱ごとの順位には大きな開きがある
総合順位が高い国でも、柱によって順位は大きく異なる。日本はその典型で、2021年版では健康が世界1位だった一方、社会関係資本(人や制度への信頼、地域とのつながり)は143位だった。2026年版はべき平均を導入し、こうした弱い分野を強い分野で埋め合わせにくい設計に改めている。