この号の内容
世界全体が初めて後退
人口で重み付けした世界のスコアは、2011年の58.34から2022年に63.75まで上がった。しかし2023年には63.44となり、0.31点下がった。2023年は61か国が有意に低下し、77か国が停滞した。実際に前進したのは32か国にとどまる。下落の主な要因は3つである。1つ目は健康(−1.7)で、コロナ禍による15〜50歳の死亡率と平均寿命の悪化による。2つ目は情報・通信へのアクセス(−2.2)で、報道の自由の低下が大きい。3つ目は権利と発言である。
📖 報告書では:Introduction p.2、Changes in social progress 2011-2023 p.12、図6
首位デンマーク、北欧が上位
首位はデンマークで90.38点である。ノルウェー、フィンランドと合わせ、北欧が上位3位を占める。G7の最上位はドイツで、10位(87.64点)である。第1層(最上位グループ)の20か国はすべて高所得国で、1位デンマークと20位スロベニアの差は5.78点である。この20か国のうち前年から改善したのは、ルクセンブルク、オーストラリア、スロベニアの3か国だけである。最下位は南スーダンで、25.93点である。
📖 報告書では:2024 Country Rankings p.7–8、図2、SPOTLIGHT: UK p.13
G7は全て停滞か後退
報告書によると、G7はすべての国で進歩が止まるか後退した。2022年からの変化は、米国−0.31、フランス−0.35、カナダ−0.94である。フランス、イタリア、英国、米国の4か国は第2層にとどまる。EU27か国は全体として初めて米国を上回った。ただし報告書は、これはEUの大きな前進ではなく、主に米国の後退によると述べている。欧州でも停滞が目立ち、低下幅が大きいのはオーストリア(−0.77)、リトアニア(−0.62)、スペイン(−0.49)である。
📖 報告書では:Introduction p.2–3
米国は29位に後退
米国は29位で、マルタとキプロスの下に位置する。1人当たりGDPは2011年も現在も世界8位である。一方、社会進歩指数では2011年から順位を10下げ、スコアも1.4点下がった。分野別では、安全が70位(対人暴力110位、親密なパートナーからの暴力88位)、健康が40位、権利と発言が51位である。医療費は経済協力開発機構(OECD)諸国で最も多いにもかかわらず、15〜50歳の死亡率は74位、質の高い医療への平等なアクセスは89位、妊産婦死亡は61位である。比較として、ポルトガルは1人当たりGDPが31,798ドルと米国の54,510ドルより大幅に低いが、スコアは84.1点で米国の81.7点を上回る。
📖 報告書では:Introduction p.3、2024 Country Rankings p.7、SPOTLIGHT: US p.14–15、図9
英国は21位で第2層へ
英国は2011年から0.39点下がり、順位を8つ下げて21位(84.49点)となった。その結果、第2層に転落した。2011年より後退した国は4か国しかなく、英国のほかは米国(−1.40)、シリア(−4.22)、ベネズエラ(−6.18)である。英国の低下幅が大きい分野は、権利と発言(−6.75)と社会的包摂(−4.97)である。平和的集会の自由は44位から64位に下がった。少数派への差別と暴力は、2011年の37位から2022年には95位に落ちた。12分野すべてで、2023年の順位は2011年より低い。
📖 報告書では:Introduction p.3、SPOTLIGHT: UK SOCIAL PROGRESS p.13–14、図8
世界平均とGDPとの関係
世界を1つの国とみなすと、スコアは63.44点で第4層に入り、順位はボリビアとアゼルバイジャンの間になる。世界全体では、住まいと水・衛生の分野が最も高く、高等教育と環境の質が最も低い。1人当たりGDPが近い15か国と比べると、世界は12分野のうち7分野で期待される水準を下回る。社会進歩指数と1人当たりGDPには強い正の関係がある。ただしその関係は直線的ではなく、所得が低い段階ではわずかな所得差が大きな社会進歩の差と結びつき、高所得になるとその差は小さくなる。また同じ程度の所得でも、社会進歩の水準は国によって大きく異なる。
📖 報告書では:World Average Performance p.9、SPI vs GDP per capita p.10–11、図3〜5
日本の結果
この号の調べ方
対象は、12の構成要素すべてを評価できるデータがそろった170か国である(ほかに26か国を部分的に測定)。12の構成要素と57の指標を使い、2011〜2023年の13年分を測っている。今回が9回目の年次版である。経済指標を除き、支出などの投入ではなく暮らしの成果だけを測るのが設計の原則である。層(ティア)の区分は、13年間のスコアを10等分した十分位に基づき、最上位の10%を第1層とするなど6層に分けている。世界平均は人口で重み付けして算出する。過去にさかのぼって再計算しているため、以前の報告書の数値とは一致しない場合がある。
この号から言えること
- 2011年以来、伸び続けてきた世界の社会進歩が2023年に初めて下がった。とくに、報道の自由の低下で情報・通信へのアクセスが下がったことと、権利と発言の長期的な後退(2011年から−6.49)が目立つ。
- 米国は1人当たりGDPの順位を世界8位で保っている一方、社会進歩指数では2011年から順位を10下げた。経済成長と社会の成果が連動しない例として、報告書が強調している。
- 日本はG7で第1層に残った3か国の1つである。ただし第1層の中で前年から改善したのは3か国だけで、日本はそこに含まれない。
- GDPと社会進歩には強い正の関係がある。ただし所得が高くなるほどその関係は弱まり、同じ所得水準でも国による差が大きい。
読むときの注意
国の数の内訳は、要約版の中でも記述が食い違っている。p.2は低下61・停滞77・前進32か国、p.13は低下62・停滞74・前進34か国としている。米国の前年からの低下幅も、0.31点と0.34点の2通りの記載がある。報告書自身が、ヨルダン川西岸・ガザ、イスラエル、ウクライナなど紛争下の国のデータは実態を正確に反映していない可能性があると断っている。