どんなレポートか
社会進歩指数(Social Progress Index、SPI)は、米国の非営利団体ソーシャル・プログレス・インペラティブ(Social Progress Imperative)が毎年発表する、国ごとの社会の進み具合を示す指数である。最大の特徴は、GDPなどの経済指標を一切使わず、健康、安全、教育、権利、機会といった人々の暮らしの「成果」だけで社会の進歩を測る点にある。団体は、経済成長という狭いレンズだけで進歩を測ることは公平でも持続可能でもないとし、「GDPを超えて(beyond GDP)」、持続可能な開発目標(SDGs)に沿った包摂的な成長を意思決定者が目指すための道具として位置づけている。指数は2014年に始まり、以後毎年改訂されている。最新の2026年版は171か国を対象に、2011〜2025年の15年分を比べている。
何をどう測っているか
指数は0〜100点で表され、3つの次元、12の要素、57の指標から組み立てられている。1つ目の次元「基本的ニーズ」は、栄養と医療、水と衛生、住まい、安全の4要素からなる。2つ目の「ウェルビーイングの基盤」は、基礎教育、情報へのアクセス、健康、環境の質の4要素である。3つ目の「機会」は、権利と発言、自由と選択、包摂、高等教育の4要素である。各要素はそれぞれの指標の重み付き合計で計算され、総合点は3つの次元の平均である。指標の多くは国際機関などの行政統計からとられ、一部にはギャラップ世界世論調査(Gallup World Poll)の質問、たとえば生活の選択の自由に満足しているかといった項目も含まれる。各年版では過去の年の値も計算し直され、2026年版では171か国の2011〜2025年の推移を同じ方法で比べられるようにしている。
これまでの歩み
指数は2014年に始まり、以後毎年発表されてきた。2024年版(170か国)は、2011年以降で初めて世界全体の社会進歩が後退したと報告し、これを「初の社会進歩の景気後退(recession)」と呼んだ。同版は、世界の5人に4人が社会進歩の停滞または後退している国で暮らしていると指摘している。2025年版は資産運用会社AlTi Tiedemann Globalと組んで「AlTi Global Social Progress Index 2025」として発表され、170か国の2011〜2024年を対象とした。この号は、コロナ禍以降はGDPが伸びても人々の暮らしの実際の改善につながっていないと指摘し、権利と自由、特に報道の自由が10年にわたって後退していることを示した。あわせて、民間資本が社会進歩に貢献できる4つの分野を示している。2026年版は171か国の2011〜2025年を追い、世界の社会進歩は10年間着実に伸びた後、2021年以降停滞していると報告し、直近1年では約3分の1の国がスコアを下げたとしている。
分かってきたこと
世界の社会進歩は伸びから停滞・後退へ
2026年版によると、世界の社会進歩は10年間着実に伸びた後、2021年以降は停滞している。2024年版は、2011年以降で初めて世界全体のスコアが下がったとして「初の社会進歩の景気後退」と呼んだ。その時点で、世界の5人に4人が停滞または後退している国で暮らしていた。2026年版でも、直近1年で約3分の1の国がスコアを下げている。
経済成長が暮らしの改善に結びつかなくなっている
2025年版は、コロナ禍以降、GDPが伸びても人々の暮らしの実際の改善につながっていないと指摘した。これは経済指標を使わずに社会の成果だけを測るこの指数だからこそ見える論点である。団体は公式ページで、どの国や地域が富を社会進歩へうまく変えているかを探ることを指数の用途の一つに挙げている。
権利と自由、報道の自由の長期的な後退
2025年版は、権利と自由、とりわけ報道の自由が10年にわたって後退していることを示した。2026年版も、権利と自由の長期的な後退と報道の自由の低下を指摘し、さらに不寛容の広がりにも触れている。基本的ニーズのような分野とは別に、「機会」の次元で後退が続いていることが、ここ数年の版に共通する指摘である。
豊かな国の間でも順位には大きな差がある
2026年版では、G7の中でもドイツ(11位)と日本(14位)が上位にある一方、英国は18位、カナダは22位、フランスは23位、イタリアは25位、米国は32位である。2024年版では、G7のうち第1層(上位グループ)に入ったのはドイツ、カナダ、日本の3か国だけだった。経済規模が大きい国どうしでも、社会の成果で見ると位置づけは一様ではない。