この号の内容
指数は悪化し2021年水準に
2024年のマインドヘルス指数では、「ストラグリング(不調)」が前年比3ポイント増の15%となった。「フラーリッシング(最も良好)」は1ポイント減の24%、「ゲッティング・バイ(まあまあ)」は35%から33%に減り、図では「ランギッシング(停滞)」が28%である。報告書は、前年に見られた改善が反転したとしている。フラーリッシングの割合が高い国はスイスと米国(31%)、中国とメキシコ(30%)で、ストラグリングが高い国は日本(22%)、英国(20%)、アイルランド(20%)である。個人の悩みでは金銭面の心配と孤独が上位で、61%が過去12か月に少なくとも1つの個人的な困難を経験している。
📖 報告書では:第1章「Mind health is growing in importance on a global scale」p.8、図「MIND HEALTH INDEX: 2023-2024 EVOLUTION」
心の不調は32%、女性と若者に偏り
現在メンタルの疾患を抱える人は5ポイント増の32%である。内訳はうつ病17%、不安障害・恐怖症・PTSD15%、摂食障害5%、強迫性障害4%、物質使用障害2%。重度以上のうつ・不安・ストレスが疑われる人は全体の23%で、女性は25%、若者は39%と、男性や34歳超より高い。前年と比べ女性はフラーリッシングが減りストラグリングが増えており、報告書は男女差が広がり続けていると指摘する。
📖 報告書では:第1章「Towards an epidemic of anxiety, stress and depression?」p.9、図「TOP 5 CURRENT MIND HEALTH CONDITIONS」
25歳未満の4割が「停滞」
25歳未満では39%が「ランギッシング」(2022年比4ポイント増)、19%が「ストラグリング」(1ポイント増)で、多くが最も状態の悪い層に入る。重度以上のうつ・不安・ストレスに該当する割合は18〜24歳で39%と、全体の23%より16ポイント高い。受診の壁としては偏見(スティグマ)、費用、秘密保持への懸念が挙げられ、若者はテクノロジー依存、SNS、体型、将来の不確かさを特に気にしている。報告書は、コロナ禍から2年たっても改善していない点を問題視している。
📖 報告書では:第1章「Young people on high alert」p.10、図「DEPRESSION, ANXIETY, STRESS」
自覚の欠如と自己管理の増加
重度のうつ・不安・ストレスが疑われる人の10人に7人が、自分の心の状態を「良い」か「普通」と捉えている。疾患を抱える人のうち専門家の管理下にある割合は50%(2022年)から43%(2023年)に下がり、10人に4人が自力で対処している(図では自己管理40%、処方薬ありの専門的支援28%、処方薬なし15%)。状態がうまく管理されていると考える人は47%で、2022年の56%から減った。自己管理している人の60%は、支援が不十分だと感じている。
📖 報告書では:第1章「Care deficit: from missing the signs to self-managing problems」p.11
仕事の影響は認識されにくい
働く人の4分の3が、職場環境が原因で強い疲労、睡眠の問題、制御しにくいストレスや不安など、少なくとも1つの不調を経験したと答えている。41%は5つ以上の不調を挙げた。一方で、不調の原因を「仕事寄り」とした人は23%にとどまり、「私生活寄り」は33%、「同程度」25%、「どちらでもない」19%である。在宅・ハイブリッド勤務者では、ハイブリッド勤務者の55%が「とても幸せ」と答える一方、在宅勤務者の48%が自信喪失の度合いが高く、出社組より強いストレスや無価値感も多い傾向がある。
📖 報告書では:第2章「Work has an impact on mind health, but problems are not attributed to it」p.13、「The paradoxical effect of remote and hybrid working」p.14、対談 p.17
離職意向と病気休暇、企業への期待
心の状態を理由に69%が仕事から距離を置く傾向を示し、関与を減らす38%、出社を避けて在宅を増やす35%、病気休暇33%、長期休暇30%などが挙がる。52%が転職・離職を考えており、18〜24歳では67%に上る。過去12か月に心の不調で病気休暇を取った人は23%(若い労働者は38%)だが、専門家に相談したのはそのうち40%で、管理職ほど仕事由来の不調が多い。企業の60%が心の健康を重視し57%が支援を提供している一方、上司に相談すると答えた人は42%(ストラグリングの人では34%)で、68%は友人・家族を頼る。従業員が望む支援は外部相談サービス42%、研修・セミナー36%、団体医療保険での精神医療カバー36%、管理職研修34%である。
📖 報告書では:第2章「Diagnosing a root cause of employee disengagement」p.15、「The rising toll of sick leave」p.16、第3章 p.19、p.21
日本の結果
この号の調べ方
アクサがイプソス・フランスと共同で、2023年11月15日〜12月11日に16か国でオンライン調査を行い、18〜75歳の計1万6,000人が回答した。性別・年齢・職業・地域で割り当て(クォータ)を設け、最新の国勢調査に合わせて各国の成人人口構成に近づくよう重み付けしている。マインドヘルス指数は、心の健康に関わる13の要因についての50問から算出し、要因は「調整要因(医療制度の質など本人が左右しにくいもの)」「前向きな行動(自己受容など)」「結果(生活満足度や不安など)」の3つに分かれる。指数のスコアが75%を超える人を「フラーリッシング」とし、全員を4区分のいずれかに分類する。
この号から言えること
- 心の状態は全体として悪化しており、良好・まあまあの人3人に対し、停滞・不調の人が2人いる計算である。とくに25歳未満と女性で悪化が目立つ。
- 働く人の多くが職場由来の不調を経験しながら、原因を仕事と結びつける人は少ない。報告書はこの認識のずれを、早期発見と受診を妨げる要因として扱っている。
- 心の不調は仕事への関与の低下、病気休暇、離職意向と結びついており、報告書は従業員の心の健康を支えることに明確な経営上の理由があると結論づけている。
- 日本は「ストラグリング」の割合が16か国で最も高く、国際比較で心の不調を抱える人の多さが際立つ。
読むときの注意
重度のうつ・不安・ストレスは診断ではなく、質問への回答から「疑われる」と判定した割合である。調査はオンラインで行われ、仕事が原因かどうかも回答者自身の受け止めに基づく。日本については国別の「ストラグリング」割合と順位しか示されておらず、日本の内訳や年代別の結果は本文に無い。