この号の内容
全体の4区分と国別の差
マインドヘルス指数(MHI=心の健康に関わる50問から心の状態を測る指標)で見ると、全体の内訳はフラーリッシング25%、ゲッティング・バイ(まあまあ)32%、ランギッシング29%、ストラグリング14%である。フラーリッシングは指数のスコアが75を超える人を指す。少なくとも一つの心の不調を経験している人の割合は、3人に1人(32%)で変わっていない。国別ではフラーリッシングの割合が最も高いのが中国の37%で、タイ(33%)、フランスと米国(各30%)が続く。報告書は、中国ではパンデミック中に心の健康への意識が高まり、企業も職場のメンタルウェルビーイングを推進してきたと説明している。一方、英国や日本などの人々が最も支援を必要としていると述べている。
📖 報告書では:p.4「5 key takeaways」、p.6「Global state of mind health」、p.7「Most flourishing countries」
心を損なう外的要因と男女差
心の健康に悪影響を与える外的要因の上位は、「経済的な不安定さと雇用不安」と「急速に変わる世界での将来の不確実さ」で、いずれも53%である。これに「メディアでの否定的なニュースへの絶え間ない接触」45%、「社会・政治の不安」42%、「孤独と社会的孤立」42%が続く。男女差も見られ、フラーリッシングは女性23%、男性27%である。将来の不確実さを心配する人は女性57%、男性48%である。報告書は対処の例として、資金計画を立てること、ニュースアプリに使う時間を減らすこと、対面のつながりを増やす活動を挙げている。
📖 報告書では:p.8「Leading external causes impacting mind health」
若者に偏る深刻な不調
18〜24歳の57%がランギッシングかストラグリングに当たり、55歳以上(29%)のほぼ2倍である。若年層の42%は、抑うつ・不安・ストレスが「重度以上」の水準にある可能性があり、全体の25%を大きく上回る。現在心の不調を抱えている若年層は44%である。一方で、若者は友人に悩みを打ち明けたり仲間に支えを求めたりする傾向が上の世代より強い。デジタルの場、SNS、AIアプリを頼る人も多い。24歳未満は鍼や薬草などの代替医療を試したり、専門家を介さず自分で対処したりする傾向も強い。年長者は従来の医療専門職や処方薬を頼る傾向がある。若者特有のストレス要因として、報告書は孤独・社会的孤立とSNSやデジタル機器の使い過ぎを挙げている。
📖 報告書では:p.4、p.9「Generation gap: Why are young adults struggling?」、p.10 ジャスミン・マネ氏インタビュー
ストレスの広がりと知識の差
抑うつ・不安・ストレスが重度以上の水準にある可能性がある人は25%で、2023年の23%から増えた。過去1週間の状態を尋ねた質問で心の健康に影響した症状は、ストレス64%、抑うつ47%、不安23%の順である。報告書は、重いストレス症状のある人ほど自分の状態を軽く見積もりがちだと指摘している。不調の可能性がある人の10人に7人は、自分の心の健康を「良い」か「普通」と捉えている。心の不調の要因について「よく知っている」と感じる人は69%だが、「とてもよく知っている」は19%にとどまる。フラーリッシング層では75%が十分な知識があると感じており、ストラグリング層の59%を上回る。報告書はこの結果をもとに、理解度と日々の心の状態には直接の結びつきがあると述べている。情報源は医療専門職52%、オンライン41%、家族・友人36%、SNS31%、テレビ等26%、書籍22%の順で、職場・教育プログラムは14%と最下位である。
📖 報告書では:p.11「Rising rates of stress in society?」、p.12–13「Raising awareness on the health benefits of knowledge」、p.19
仕事のストレスが生活に及ぶ
平均を上回るストレスを報告する従業員は53%で、12%は仕事が原因の重いストレスを抱えている。ストレス源の上位は給与の心配54%、仕事量と締め切り52%、仕事と生活のバランス51%である。仕事のストレスが日常生活に与えた影響は、睡眠の困難38%、頭痛や筋肉の緊張などの身体症状32%、いらだち・気分の波31%、意欲・生産性の低下30%の順である。また41%が、心の健康支援を利用できないことが心に悪影響を与えていると答えた。心の問題で病気休業した経験のある人は27%で、2023年の23%から増えている。18〜24歳では42%に上る。仕事のストレスへの対処予定(仕事のストレスがある就業者10,517人)は、運動を増やす33%、休暇を取る32%、マインドフルネスや瞑想27%が上位である。専門家の支援を求める人は16%、従業員支援プログラムなど職場の制度を使う人は11%にとどまる。
📖 報告書では:p.14–15「Reduced stress at work? Take home the benefits」、p.16 ローデ・ゴッデリス教授インタビュー
企業の方針とデジタル支援
心の健康に関する方針を設けている職場は47%にとどまり、大企業ほど支援を提供している。雇用主に支援を期待する従業員は52%である。年齢別の期待は18〜24歳59%、25〜34歳61%、35〜44歳56%、45〜54歳47%、55歳以上39%となっている。方針のある企業ではストラグリングの割合が8%で、方針のない企業の16%の半分である。フラーリッシングかゲッティング・バイの割合も63%と、方針のない企業の53%を上回る。デジタル面では、28%がすでにAIアプリやプラットフォームを心の健康のために使っている。心の健康のためのデジタルアプリ利用は、18〜24歳の51%から55歳以上の13%まで、年齢が上がるほど低い。オンラインの情報源を頼る人も、35歳未満では46%、55歳以上では33%である。
📖 報告書では:p.4、p.17「Companies hold a key to unlocking mind health」、p.18「Tech is opening doors to mind health management」
日本の結果
この号の調べ方
調査はAXAがイプソス・フランス(Ipsos France)と共同で実施した。2024年10月8日〜11月11日に16か国の18〜75歳、約1万7,000人にオンラインで聞き取りを行った。性別・年齢・職業・地域で割り当て(クオータ)を設け、各国の最新の国勢調査に合わせて人口構成を補正(ウエイト付け)している。マインドヘルス指数は13の要因に関する50問から作る。要因は「調整要因(医療制度や過去・現在の心の不調など本人が左右しにくいもの)」「前向きな行動(自己受容や自己効力感を育てる技能など)」「結果(生活満足度や幸福、不安・ストレス・抑うつ)」の3つに分類され、回答者を4区分に振り分ける。
この号から言えること
- 心の不調を抱える人は3人に1人で横ばいである。一方、重度以上の抑うつ・不安・ストレスの可能性がある人は25%(2023年23%)、心の問題での休業経験は27%(同23%)と、いずれも増えている。
- 世代差が大きい。18〜24歳の57%が停滞・不調の状態にあり、55歳以上の29%のほぼ2倍である。若者は友人やデジタル・AIを頼る傾向が強い。
- 企業の心の健康に関する方針は47%にとどまり、支援への期待(52%)に届いていない。方針のある企業ではストラグリングが8%と、ない企業(16%)の半分である。
- 日本はフラーリッシングが12%で調査国中最も低い。国別の差の大きさを示す数字である。
読むときの注意
方針の有無による企業間の差や、知識と心の状態の関係は、調査時点の回答を比べたものである。方針を導入すれば不調が減るという因果を、この比較だけで示したものではない。「重度以上の可能性」は自己回答の質問票にもとづく推定で、医師の診断ではない。国別の数字は報告書の地図に示された値で、国ごとの詳しい内訳はウェブサイトにあると報告書は記している。