この号の内容
16か国・都市が参加した第2回
SSESは、児童生徒の社会情動的スキルの形成と発達にかかわる要因を評価する国際調査で、今回が2回目(Round2)である。1回目(Round1)は2019年に実施された。Round2にはブルガリア、ボゴタ、ヘルシンキ、群馬など16か国・都市が参加し、Round1から続けて参加したのはボゴタとヘルシンキの2都市だけである。回答は1人1台端末を使いオンラインのフォームで行われ、個人が特定される情報は収集されていない。
📖 報告書では:p.1「1 SSESの概要」(1)(2)①②
報告書はスキルと環境の相関を分析
第1弾の題名は「Social and emotional skills for better lives ~Findings from the OECD Survey on Social and Emotional Skills 2023~」である。内容は、社会情動的スキルと個人・家庭・学校のさまざまな状況との相関関係を、国際比較などで分析したものである。各参加国・都市のスキルレベルそのものの比較は、Round1とRound2の結果比較を除いて行われていない。
📖 報告書では:p.2「2 SSES Round2 国際報告書(第1弾)」(1)(2)
スキルが低いと幸福の結果も悪い傾向
参加国・都市全体では、年齢・性別・家族の背景によって社会情動的スキルに格差がある。スキルが低い生徒はウェルビーイングの結果が悪い傾向がある。目標達成への動機、粘り強さ、好奇心が高い生徒ほど学業的成功が大きい傾向があり、広い心と柔軟な思考をもつ生徒ほど将来の教育やキャリアへの準備ができている傾向がある。社会経済的に恵まれていない生徒を含め、成功したいという強い思いをもつ生徒がいることも示された。
📖 報告書では:p.2(3)①「参加国・都市全体の主な傾向」
睡眠不足と女子の低い満足度
睡眠は心理的なウェルビーイングや生活満足度と強い関係があるが、15歳のほとんどは十分な睡眠をとっていない。女子は男子より健康的な行動が少なく、人生の満足度や心理的幸福感も低い傾向がある一方、より成功を求める傾向がある。両回に参加したボゴタとヘルシンキでは、いずれも2019年より2023年のほうが、ほとんどの社会情動的スキルのレベルが低かった。
📖 報告書では:p.2(3)①「参加国・都市全体の主な傾向」
群馬の強み:格差の小ささと生活習慣
群馬県は、社会情動的スキル全体として極端な性差がなく、共感する力・楽観主義・粘り強さ・責任感に社会経済的な差がない。自分の生活や人間関係に対する満足度にも社会経済的な差がない。毎日朝食を食べる生徒は8割で、参加国・都市全体の約半数を上回る。健康的な行動をとる傾向は参加都市の中で2番目に高く、遅刻もほとんどない(全体では2週間に少なくとも1度遅刻する生徒が約半数)。
📖 報告書では:p.2–3(3)②ア「参加国・都市全体よりも良い傾向のもの」
群馬の課題:見た目・不安・睡眠
「自分の見た目が気に入っている」生徒は群馬県で3分の1と、全体の3分の2より少ない。起業する可能性があると答えた生徒は5分の1未満で、全体の約半数を大きく下回る。テストや悪い成績への不安を感じる生徒は参加国・都市の中で最も多い。8時間睡眠が週1回未満の生徒は半数以上で、参加都市全体の3分の1より多い。管理職や専門職への希望に性差がない点も、全体(女子のほうが多い)と異なる傾向として挙げられている。
📖 報告書では:p.3(3)②イ「参加国・都市全体よりも悪い傾向のもの」
日本の結果
この号の調べ方
群馬県での本調査は令和5年(2023年)5月9日~6月30日に、公立・私立高校全79校で実施された。各校から15歳3か月~16歳2か月の生徒50人を無作為に抽出し、生徒3,528名、教員608名、校長79名が回答した。社会情動的スキルに関する質問のほか、家庭環境、健康状態、学校生活、キャリアやジェンダーへの意識などをオンラインで尋ねている。
この号から言えること
- 報告書は、社会情動的スキルが低い生徒ほどウェルビーイングの結果が悪い傾向を示しており、スキルと幸福の結びつきが国際的な分析の中心にある。
- 群馬県は、生活や人間関係への満足度や楽観・粘り強さなどに社会経済的な差がない点が、参加国・都市全体と比べた特徴である。
- 群馬県では、テストや悪い成績への不安を感じる生徒が参加国・都市で最も多く、見た目への満足や睡眠時間でも全体より悪い傾向が出ている。
- 睡眠は生活満足度と強い関係があるとされ、群馬県で8時間睡眠が週1回未満の生徒が半数以上いる点は読みどころである。
読むときの注意
報告書の分析は相関関係であり、例えばスキルが高いことが幸福をもたらすという因果を示したものではない。今回の第1弾ではスキルレベルそのものの都市間比較は行われておらず、群馬県の記述は全体の傾向分析の中で特異な傾向として言及された項目に限られる。また本資料は県による概要で、数値の多くは「8割」「3分の1」などのおおよその割合で示されている。