どんな調査か
OECD社会情動的スキル調査(OECD Survey on Social and Emotional Skills、略称SSES)は、OECD(経済協力開発機構)が行う国際比較調査である。社会情動的スキルとは、粘り強さ、感情のコントロール、共感、協調性、創造性、楽観性、好奇心など、学力テストでは測りにくい「人と関わり、感情を整え、物事に取り組む力」を指し、非認知能力とも呼ばれる。調査の目的は、10歳と15歳の生徒について、こうしたスキルの発達を後押しする条件や実践、逆に妨げる条件や実践を明らかにすることである。あわせて、スキルが学業成績、生活満足度、健康的な生活、テストへの不安、将来の進路の希望とどう関係しているかを調べる。第1回は2019年、第2回は2023年に行われた。国単位ではなく、都市・地域単位で参加できる点が大きな特徴である。
何をどう測っているか
調査は生徒本人に加え、保護者・教員・校長にも質問紙で尋ねる仕組みである。生徒は自分の粘り強さや共感、楽観性、好奇心などのスキルについて回答し、あわせて生活満足度(自分の生活にどれだけ満足しているか)、睡眠や朝食などの健康的な行動、テストや授業への不安、進路の希望なども答える。スキルも満足度も自己評価で測っている。分析では、これらのスキルが年齢・性別・家庭の社会経済的な状況(家庭の経済力や親の学歴などの背景)によってどう偏っているか、またスキルと学業・幸福の成果がどう結びついているかを見る。調査は同じ時点で一度に尋ねる横断調査で、実施間隔は決まっていない不定期の調査である。2023年の第2回には16の国・都市が参加した。日本からは群馬県が参加し、県内の公立・私立高校全79校から、15歳(高校1年相当)の生徒3,528人、教員608人、校長79人が回答した。
これまでの歩み
第1回調査は2019年に実施された。第2回は2023年に16の国・都市で行われ、主に15歳の生徒を対象とした国際報告書「Social and Emotional Skills for Better Lives」が2024年4月26日に公表された。同じ日に、群馬県(日本)、イタリアのエミリア=ロマーニャとトリノ、インドネシアのクドゥス、スペインなど参加地域ごとの第1巻(Vol I)サイト報告書も公開された。群馬県教育委員会は同日、国際報告書(第1弾)の要点をまとめた日本語の概要を出している。続いて2024年10月24日には第2巻(Vol II)として、群馬県、ブルガリア、ペルー、イタリア、クドゥスなどの地域別報告書が公開された。第3回は2026年に実施し、2027年末に結果を公表する予定である。
分かってきたこと
スキルは年齢・性別・家庭環境で偏って分布している
2023年調査の国際報告書は、社会情動的スキルが生徒の間で均等ではなく、年齢、性別、家庭の経済状況によって偏って分布していると示している。つまり、どの生徒も同じようにこれらの力を身につけているわけではない。この結果は、スキルの育ち方に背景による差があることを示すものである。
スキルが高い生徒ほど学業や幸福の成果がよい傾向
報告書は、社会情動的スキルが学業成績、生活満足度、健康的な行動、テストや授業への不安の少なさ、意欲的な進路希望と結びついていると示している。逆に、スキルが低い生徒ほどウェルビーイング(心身の良い状態)の結果が悪い傾向がある。特に目立つのは、楽観性・活力・信頼が低い生徒ほど生活満足度などが低いという傾向である。これらは同時点での結びつきであり、スキルを高めれば満足度が上がるという因果を示したものではない。
15歳の睡眠不足と生活満足度
国際報告書は、15歳の生徒の半数超が睡眠8時間未満であるという結果を示している。さらに、睡眠と生活満足度の間には強い関係があるとしている。よく眠れている生徒ほど生活満足度が高い傾向があり、睡眠が若者のウェルビーイングを考えるうえで重要な観点として浮かび上がっている。
都市・地域単位で見える地域ごとの特徴
SSESは国単位ではなく都市・地域単位で参加できるため、参加地域ごとの報告書が出されている。2023年調査では群馬県、エミリア=ロマーニャとトリノ、クドゥス、ブルガリア、ペルー、スペインなどについて個別の報告書が公開された。これにより、それぞれの地域が参加国・都市全体と比べてどのような強みや課題を持つかを把握できる。