この号の内容
豊かなウェールズ:経済と教育
ウクライナ戦争と新型コロナの影響は弱まったが、英国経済は2023年にほとんど成長しなかった。インフレ(物価が上がり、同じお金で買える量が減ること)は通常の水準に戻ったが、生活水準への悪影響は続いており、収入の少ない人ほど影響が大きい。英国経済は2008年以降ゆるやかにしか成長しておらず、ウェールズは英国の他地域より豊かでなく、生産量も少ない。一方、雇用面での他地域との差は以前より縮まり、男女の賃金格差は20年前よりかなり小さくなった。資格を取る人は増えたが、貧しい家庭の子どもは学校の成績が振るわないことが多い。
📖 報告書では:第1章「A prosperous Wales」(イージーリード版 p.10–14)
回復力あるウェールズ:環境
ウェールズは森林・土地・土壌・大気・動植物などの天然資源を速いペースで使い続けており、補える以上の資源を消費している。大気汚染は2020年以降わずかに増えたが、パンデミック前よりは低い水準にある。リサイクル量は過去20年で大きく増え、リサイクル率は世界でも最高水準の一つである。ウェールズで発電される電力の30%近くが風力や太陽光などの再生可能エネルギー由来である。生物多様性(ある地域に見られる生き物の種類の豊かさ)は生息場所の減少によって以前より低下した一方、海・川・地下水の水質はおおむね以前より良くなっている。
📖 報告書では:第2章「A resilient Wales」(イージーリード版 p.15–17)
より健康なウェールズ
女性は男性より長生きする傾向があるが、健康な状態で過ごす期間は男性の方が長い。年初からの死因で最も多いのは心臓病である。低体重で生まれる赤ちゃんの割合は横ばいで、母乳で育てられた赤ちゃんの割合は記録上最高となった。喫煙者はおよそ100人に13人、健康的な量を超えて飲酒する人は約100人に17人、果物と野菜を十分に食べている人は10人に約3人である。十分な運動をしている成人は半数をやや上回り、心の健康を心配する人が多い。
📖 報告書では:第3章「A healthier Wales」(イージーリード版 p.18–20)
より平等なウェールズ
若い成人は、高齢者や子どもに比べて物質的剥奪(家を十分暖かく保つ、定期的に貯金する、年1回休暇をとるなどができない状態)にある割合がかなり高い。一部の少数民族の子どもは学校の成績が良く、白人と少数民族の雇用の差は以前より縮まったが、少数民族の人は白人より孤独を感じやすい。高齢者は若い成人よりウェルビーイングが高く、孤独感が少ない。障害のある人は働いている割合が低く、収入が少ない傾向があり、働いていても平均収入は障害のない人より低い。障害のある人は障害のない人よりはるかに孤独を感じやすい。
📖 報告書では:第4章「A more equal Wales」(イージーリード版 p.21–23)
結束したコミュニティ
地域の一員だと感じ、地域の人とうまくやれていると答えた人は10人に6人をやや上回り、高齢者ほどそう感じている。地域を住む場所として満足している人は10人に9人で、暗くなってからの安心感は男性の方が女性より高い。地域の意思決定に影響を与えられると感じる人は増えており、若い人や少数民族の人ほどそう感じている。ボランティアをする成人は10人に約3人で、報告書はボランティアがウェルビーイングを高めることが示されていると述べている。孤独を感じる人は10人に1人強で、過去2年と同じ水準である。警察が記録した犯罪は前年より減ったが、ホームレス化を防げた世帯数は減り、一時的な住まいで暮らす人は増えた。
📖 報告書では:第5章「A Wales of cohesive communities」(イージーリード版 p.24–25)
文化・ウェールズ語と地球への責任
映画やライブ音楽の鑑賞、演劇への参加など芸術・文化に触れる人は10人に7人だが、芸術イベントに参加する子どもはパンデミック前より少ない。国勢調査によれば、ウェールズ語話者の割合は過去最低である。学校外で定期的にスポーツをする子どもは減り、定期的にスポーツをする成人は増えた。温室効果ガスの削減は進んでいるが、国として地球に大きな負荷をかけており、最大の排出源は産業の供給部門である。気候変動を心配する成人は10人に約7人である。現代奴隷(意思に反して、多くは無給で働かされること)の被害者として照会された人は増えたが、その一部は報告体制の改善によると報告書は述べている。幼い子どものワクチン接種率は高いままだが、近年は低下している。
📖 報告書では:第6章「A Wales of vibrant culture and thriving Welsh language」・第7章「A globally responsible Wales」(イージーリード版 p.26–29)
この号の調べ方
本報告はウェールズ政府が未来世代のウェルビーイング法に基づき毎年作成するもので、2024年版は8回目である。7つの目標を、2016年にウェールズの大臣が定めた50の「全国指標(ナショナル・インディケーター)」に分け、さらに必要な変化の大きさを示す長期目標「マイルストーン」と合わせて評価している。データはさまざまな報告書・調査・研究から集めたもので、多くは統計サイトStatsWalesで地域別・属性別に公開されている。本記事はそのイージーリード版(32ページ)に基づく。
この号から言えること
- 経済面では2023年に英国経済がほとんど成長せず、インフレが落ち着いた後も低所得層の生活水準への悪影響が続いている点が、この号の重い論点である。
- リサイクル率が世界最高水準で再生可能エネルギーが発電の30%近くを占める一方、天然資源の消費や生物多様性の低下は課題として残っており、環境分野では改善と悪化が並んでいる。
- ウェルビーイングや孤独感には年齢・障害・民族による差がある。高齢者ほどウェルビーイングが高く孤独感が少ない一方、障害のある人や少数民族の人は孤独を感じやすい傾向がある。
- ウェールズ語話者の割合が国勢調査で過去最低となり、子どもの芸術・スポーツ参加も減っていることは、文化の目標にとって注意すべき結果である。
読むときの注意
本記事が依拠したイージーリード版は「10人に約3人」のような丸めた表現が中心で、精神的ウェルビーイング尺度(WEMWBS)の平均点や貧困率などの詳しい数値は載っていない。正確な値や年次比較は、HTML版の本報告やデータファイル(ODS)で確認する必要がある。属性ごとの差は傾向を示すもので、因果関係を示すものではない。