どんな調査か
『ウェールズのウェルビーイング(Wellbeing of Wales)』は、ウェールズ政府(Welsh Government)が毎年公表する年次報告である。根拠となるのは2015年の「未来世代のウェルビーイング法(Well-being of Future Generations (Wales) Act 2015)」で、この法律は国が目指す7つのウェルビーイング目標を定めている。7つの目標とは、繁栄、回復力、健康、平等、まとまりのある地域、文化とウェールズ語、地球への責任である。報告の目的は、これらの目標に向けてウェールズがどこまで進んでいるかを点検することにある。初回は2017年9月25日に公表され、2026年10月1日の2026年版がシリーズ10回目となる。
何をどう測っているか
進み具合は、法律に基づく50の「全国指標」で測る。全国指標とは、経済・社会・環境・文化の各分野の状態を数字で追うために国が選んだ物差しのことである。データは独自の一斉調査ではなく、ウェールズ全国調査など複数の既存統計や行政データから集めている。そのため、年度や対象となる年齢層は指標ごとに異なる。心の状態を表す指標には、ウォーリック・エディンバラ精神的ウェルビーイング尺度(WEMWBS)を用いる。これは日々の気分や生活への対処の状態を点数化する尺度で、若者には短縮版(SWEMWBS)を使う。報告は7つの目標ごとに1年間の変化を整理し、指標データや品質報告書(quality report)もあわせて公開している。
これまでの歩み
報告は2017年9月25日に始まり、2018年9月20日、2019年9月26日、2020年12月3日、2021年11月25日、2022年9月29日、2023年11月17日、2024年9月26日、2025年10月7日、2026年10月1日と毎年公表されてきた。2018年6月には利用者調査への回答を、2021年8月には報告がどう使われているかをまとめた資料を出している。8回目の2024年版は、経済が2023年にほとんど成長しなかったことを示した。インフレは落ち着いたが、低所得層の生活水準には悪影響が残ったとしている。改善点としてリサイクル率の高さや母乳育児の割合が過去最高であることを挙げる一方、国勢調査ではウェールズ語話者の割合が過去最低となった。9回目の2025年版は貧困と健康を大きな話題とし、人口の約5人に1人が貧困状態で、子どもの貧困は年金受給者の2倍であると報告した。10回目の2026年版は「より健康なウェールズ」を最大の話題に据え、若者の精神的ウェルビーイングの悪化と地域間の差の拡大を取り上げた。
分かってきたこと
長生きにはなったが、健康に過ごせる期間は短くなっている
2025年版は、寿命は延びているものの、健康な状態で過ごす期間は短くなっていると報告した。2026年版も同じ点を最大の話題とした。人々は長生きになっているが、その伸びは鈍っている。寿命の長さだけでは健康の改善を語れないことが、近年の版で繰り返し示されている。
精神的ウェルビーイングは改善せず、若者では下がっている
2025年版によると、成人のWEMWBSの平均は2024〜25年度に48.4で、前年並みであった。11〜16歳の値は、2017〜18年度の24から2023〜24年度の23.5へ下がった。2026年版は、若者の精神的ウェルビーイングが時間とともに悪化していると指摘している。同じ版は、豊かな地域と貧しい地域の差が広がったことも挙げている。
約5人に1人が貧困、子どもの貧困は年金受給者の2倍
2025年版と2026年版は、いずれも人口の約5人に1人が貧困の状態にあると報告している。2025年版は、子どもの貧困が年金受給者の2倍であることを示した。貧困は健康と並ぶ、近年の報告の中心的な課題となっている。
経済の停滞と、環境・文化の明暗
2024年版によると、経済は2023年にほとんど成長しなかった。インフレは落ち着いたものの、低所得層の生活水準には悪影響が残った。一方で、リサイクル率は高く、母乳育児の割合は過去最高となった。文化の面では、国勢調査でウェールズ語話者の割合が過去最低となった。