この号の内容
貧困と低賃金が続く
英国の経済はこの2年、ゆるやかな成長にとどまった。ウェールズの人々の稼ぎは英国の大半の地域より少ない。人口の約5人に1人が貧困状態にあり、4世帯に1世帯は暖房費の支払いに苦しんでいる。「リアル・リビング・ウェイジ」(生活に足りるとされる賃金)以上を得ている労働者は約3分の2にとどまる。一方、男女の賃金格差は20年前よりかなり小さくなった。障害のある労働者や少数民族の労働者の賃金格差も縮まりつつある。
📖 報告書では:Easy Read版 第1章「A prosperous Wales」p.9–12
自然資源の消費が速すぎる
報告書は、ウェールズが森林・土地・水などの自然資源を非常に速いペースで使っていると指摘している。リサイクル率は世界でも最高水準で、リサイクルされた廃棄物の量はこの20年で大きく増えた。それでも、使う資源は補える量を上回っている。発電量の約3分の1は風力や太陽光などの再生可能エネルギーである。大気汚染はおおむね減っているが、健康へのリスクは残っている。生物多様性(ある地域に見られる生き物の種類の豊かさ)は以前より低下している。
📖 報告書では:Easy Read版 第2章「A resilient Wales」p.13–16
健康な期間が縮み心の健康も停滞
寿命は延びているものの、その伸びは以前より鈍くなった。健康な状態で過ごす期間は短くなっており、貧しい地域に住む人ほど、人生のうち健康に過ごす期間が短い。低体重で生まれる赤ちゃんの割合は上昇した。全体として健康的な選択をする人は増えたが、精神的な健康は改善していない。住宅の状態と安全性は以前より良くなった。
📖 報告書では:Easy Read版 第3章「A healthier Wales」p.17–18
子どもの貧困は年金世代の2倍
子どもが貧困状態にある割合は、年金受給者の2倍である。高齢者は若い成人よりウェルビーイングが高く、孤独を感じにくい傾向がある。少数民族の人々は白人よりウェルビーイングが高い一方、就業率は白人を下回る。ただし、その差は以前より縮まった。障害のある人は、ない人に比べて働いている割合が低く、貧困状態にある割合が高い。この2つの差はいずれも過去10年で縮小したが、障害のある人のウェルビーイングは依然として低い。
📖 報告書では:Easy Read版 第4章「A more equal Wales」p.19–21
地域への帰属感はコロナ前に戻る
地域の一員だと感じ、周囲とうまくやれていると答えた人は約10人に6人で、年齢が高い人ほどその割合が高い。こうした感覚はコロナ禍の間に高まったが、最近はコロナ前の水準に戻った。住んでいる地域に満足している人は10人に8人をやや上回る。一方で、地域の意思決定に影響を与えられると感じる人は減った。成人の約10人に3人がボランティアをしており、報告書はボランティアがウェルビーイングを高めることが示されているとしている。警察が記録した犯罪件数は前年より減ったが、犯罪が増えたと考える人は多い。
📖 報告書では:Easy Read版 第5章「A Wales of cohesive communities」p.22–24
文化・ウェールズ語・地球への責任
芸術や文化を鑑賞したり参加したりする人は10人に7人である。ただし、芸術活動に参加する子どもは10年前より減った。国勢調査によると、ウェールズ語を話す人の割合は過去最低となった。週3回以上スポーツをする成人は3人に1人をやや上回るが、学校外で定期的にスポーツをする子どもは減っている。温室効果ガスの削減は進んでいるものの、ウェールズは依然として地球に大きな負荷をかけている。最大の排出源は、ものを作る工場などの産業部門である。幼い子どもの多くは予防接種を受けているが、受ける子どもの数は数年前より減った。
📖 報告書では:Easy Read版 第6章 p.25–27、第7章「A globally responsible Wales」p.28–30
この号の調べ方
本報告は、2015年の「未来世代のウェルビーイング法(Well-being of Future Generations (Wales) Act 2015)」に基づき、毎年作成されている。7つの目標を、2016年にウェールズの大臣が定めた50の「国家指標」(目標をより小さく分けた指標)と、「マイルストーン」(必要な変化の速さを示す長期目標)に照らして評価している。評価には各種の報告書・調査・研究のデータを用いており、データの多くはStatsWalesで公開されている。今回の元資料は、本報告をやさしく書き直したEasy Read版(全34ページ)である。
この号から言えること
- 経済面の課題として、貧困と低賃金が続いている。人口の約5人に1人が貧困状態にあり、リアル・リビング・ウェイジ以上を得ている労働者は約3分の2にとどまる。
- 健康面では、寿命は延びているのに健康な期間は短くなり、精神的な健康も改善していない。貧しい地域ほど健康に過ごす期間が短く、格差がはっきり表れている。
- 男女の賃金格差や、障害の有無による就業・貧困の差は縮まっている。一方で、子どもの貧困やウェールズ語話者の減少、子どもの文化・スポーツ活動の減少といった後退も目立つ。
読むときの注意
元資料はEasy Read版であり、多くの項目は「増えた」「減った」といった方向だけが書かれていて、具体的な数値や年次は示されていない。精神的ウェルビーイング尺度(WEMWBS)の値もこの版には載っていないため、指標の値は空欄とした。年齢・民族・障害などによるウェルビーイングの違いは傾向を示すものであり、原因を示すものではない。