この号の内容
二つの枠組みを統合
第6回のEVSは「動的な視点」を採用した。この視点は、欧州の価値観を調べる二つの枠組みを統合するものである。一つは従来の「欧州における価値観(Values in Europe)」という枠組みである。もう一つは新しく導入した「欧州的価値(European Values)」という枠組みで、欧州、とくにEUで現在交わされている議論にもとづく。公式ページによれば、EUは変化する世界秩序のなかで自らの役割と独自性を模索している。
📖 報告書では:公式ページ「Point of departure: Change in approach to the EVS2026 questionnaire」
背景にある欧州の情勢
EUは、2008年の欧州条約に定められた一連の「欧州的価値」を基盤としている。公式ページによれば、これらの価値は最近になって重みを増した。その背景として、2014年以降のロシアによるウクライナ侵攻と、欧州の一部の国でのポピュリスト政権・運動の台頭を挙げている。後者は民主的な制度を弱め、基本的人権と法の支配を損なう方向に働いているとされる。さらに、ロシアや中国の権威主義体制による脅威や、トランプ政権下の米国の動向もある。こうした状況のもとで、欧州の人々に共通する価値とは何かが、以前よりはっきりと議論されている。
📖 報告書では:公式ページ「Point of departure」
伝統的な7領域
EVSは、長期の時系列を構成してきた質問を引き続き調査票に含めている。その土台となるのが7つの伝統的な価値領域である。 - 家族(Family) - 仕事(Work) - 環境(Environment) - 人生観(Perceptions of life) - 政治と社会(Politics and Society) - 宗教と道徳(Religion and Morale) - 国民アイデンティティ(National identity)
📖 報告書では:公式ページ「Point of departure」(7つの伝統的価値領域の列挙)
EU由来の新しい6分野
今回は、7つの伝統領域にEUの政策文書から導いた6つの価値分野を組み合わせた。これが新しい概念枠組みであり、これによって調査票を刷新した。6分野は次のとおりである。 - 社会・経済の変容(Social and economic transformations) - 持続可能な未来(Sustainable future) - 文化遺産(Cultural heritage) - 差別の禁止(Non-discrimination) - 法の支配(Rule of law) - 福祉国家(Welfare state) 6分野を既存の調査構成に組み込む作業は、科学委員会とEVSコミュニティが慎重に検討して進めた。
📖 報告書では:公式ページ「Point of departure」(6つの新しい価値分野の列挙)
約2年かけた調査票づくり
調査票の作成は2023年10月に始まり、2025年末まで続いた。その間、さまざまな国で会合を開いた。会合では、理論と時事的な課題にもとづいて新しい質問項目を検討した。公式ページには、この過程の主な節目をまとめたタイムラインが掲載されている。完成したEVS2026のマスター調査票(最終版)は、公式ページからダウンロードできる。
📖 報告書では:公式ページ(調査票作成の経緯・タイムライン、「EVS2026 Questionnaire」の項)
他の国際調査との連携
公式ページは、この動的な視点を採用したことで、他の国際調査との協力の将来性が確保されると述べている。対象は、世界価値観調査(World Values Survey)および欧州社会調査(European Social Survey)との継続的な協力である。
📖 報告書では:公式ページ「Point of departure」末尾
この号の調べ方
EVS 2026は、EVSの第6回にあたる国際比較調査である。各国で実査を順次進めており、すでに実査中の国があるほか、多くの国が2026年と2027年に開始する予定である。調査票は、伝統的な7つの価値領域と、EUの政策文書に由来する6つの価値分野を組み合わせた構成である。共通のマスター調査票は2023年10月から2025年末にかけて作成した。元資料の抜粋には、各国の標本規模や個々の質問文は記載されていない。
この号から言えること
- EVS 2026は、従来の「欧州で人々がどんな価値観を持っているか」という観点に、「EUが掲げる価値を人々がどう受け止めているか」という観点を加えた。
- 法の支配・差別の禁止・福祉国家などEU由来の6分野が新しく入った。そのため、民主主義や権利をめぐる欧州の論点を、価値観調査の形で捉えようとする設計になっている。
- 長期の時系列を構成してきた質問は残している。このため、過去の調査回との比較の土台は維持されている。
読むときの注意
この号は実査の途中であり、元資料には幸福感や生活満足度を含め、調査結果の数値はまだ掲載されていない。今回の内容は調査票の設計方針と作成経緯の紹介にとどまる。元資料の抜粋には、個別の質問文や回答の選択肢の詳細も含まれていない。