幸せの名言集

孟子の名言3選

戦国時代の儒学者(BC372頃-289頃)

「自ら反みて縮くんば、千万人と雖も吾往かん」

— 孟子 『孟子』公孫丑上

自分の内面を振り返って、やましいところが一点もないと確信できるなら、たとえ敵が千万人いようとも、私は恐れず進んでいこう ── 内なる正しさに根ざした勇気の宣言

心理学では
この名言は、心理学でいう道徳的確信(考えを好みではなく善悪の問題として固く信じる状態)に根ざした自己肯定を表している。Hornseyら(2003)は、ある社会問題への態度が道徳に根ざしている人ほど、多数派と意見が違っても同調せず、むしろはっきりと意見を表明しやすいことを示した。Aramovichら(2012)の研究でも、拷問に反対する道徳的確信が強い人ほど、多数派からの圧力の中でも意見を変えにくかった。ただし確信は独りよがりに転じることもあるため、孟子の言う「自ら反みる」点検を先に置くとよい。迷う場面では自分の良心に照らして行いを振り返り、やましさがなければ臆せず一歩を踏み出す。 参考:Hornseyら(2003)「On being loud and proud: Non‐confo…」 ↗/Aramovichら(2012)「Opposing torture: Moral conviction…」 ↗
「惻隠の心は、仁の端(はじまり)なり ── 井戸に落ちかけた幼子を見れば、誰であれ、はっと駆け寄らずにはいられない」

— 孟子 『孟子』公孫丑章句上(BC4世紀頃)

四端説(惻隠・羞悪・辞譲・是非)の第一

見返りも評判も考える暇なく、思わず身体が動く ── その「いたたまれなさ(惻隠)」こそ、人間に生まれつき備わった善性の芽だと論じた性善説の中心論証。共感の生得性を、思考実験によって示した世界最古級の議論

心理学では
孟子のいう惻隠の心は、心理学でいう共感的関心(他者の苦しみを前に、助けたいと感じる気持ち)と、そこから生まれる向社会的行動(他者のためになる自発的な行い)の芽にあたる。Warneken & Tomasello(2006)は実験で、生後18か月の幼児が、手の届かない物を取ろうとして困っている大人を、頼まれも褒められもしないうちに自分から助けることを示した。さらにWarneken & Tomasello(2008)では、手助けのたびにご褒美を与えられた幼児のほうが、その後の手助けがかえって減った。人を助ける心は、見返りによって教え込まれる前から、内側に備わっているのである。日々の暮らしでは、ふと「放っておけない」と感じた瞬間を打ち消さず、小さな手助けとして形にすることが、その芽を育てることにつながる。 参考:Warneken & Tomasello(2006)「Altruistic Helping in Human Infant…」 ↗/Warneken & Tomasello(2008)「Extrinsic rewards undermine altrui…」 ↗
「我、善く吾が浩然の気を養う。……其の気たるや、至大至剛、直を以て養いて害なうこと無ければ、則ち天地の間に塞(み)つ」

— 孟子 『孟子』公孫丑章句上

「浩然の気」の出典

浩然の気 ── 天地に満ちるほど大きく、何ものにも屈しない、おおらかで動じない生命力。それは一夜漬けで得られるものではなく、日々の「直(正しさ)」の積み重ねによってのみ育つ、と孟子は説く。「動じない心(不動心)」の育て方の古典

心理学では
孟子のいう「浩然の気」は、心理学でいえば、自分の価値観と行動が一致した真正性(オーセンティシティ:本心に沿って生きること)と、それに支えられた揺らぎにくい自己信頼に近い。Woodら(2008)は大学生などを対象とした調査で、自分の本心に沿って生きている人ほど自尊心や人生満足度が高く、不安やストレスが低いことを示した。またCreswellら(2005)の実験では、自分が大切にしている価値観について事前に書いた人は、人前でスピーチをする課題でのストレスホルモンの反応が小さかった。日々の小さな場面で「自分に恥じない選択」を一つずつ重ねることが、いざというとき動じない心の土台になる。 参考:Woodら(2008)「The authentic personality: A theor…」/Creswellら(2005)「Affirmation of Personal Values Buf…」 ↗

← 人物の一覧

あわせて読む 世界の主要ウェルビーイング研究 → 名言が言ってきたことを、研究はどう確かめてきたか。幸せの研究の著名論文2,358本を、要旨と研究の系譜で。 思想ごとの名言も 世界の思想と宗教の幸福観マップ → 47の思想・宗教それぞれを代表する名言を、思想の幸福観とあわせて。
名言の収集・分類・解説はAI(Claude)を活用し、はぴテックが確認したものです。「出典に諸説あり」の名言は、その人物の言葉として流通しているものの一次資料での確認が難しいもの、「要旨」は趣旨を短くまとめたものです。心理学の補足は、名言の知恵を心理学・幸福研究の知見で読み解いたもので、引用した論文は学術データベースで実在を照合しています。 解説付き全選(PDF) / 一覧(Excel)
© 株式会社はぴテック