幸せの名言集

心配ごとがないの名言39選

「心配するな、何とかなる」

— 一休宗純(と伝わる) 遺言として弟子に残されたと伝わる逸話

※伝承であり史実性は不確か

多くの難局は、実際には何とかなる

心理学では
この言葉は、感情予測の「インパクト・バイアス」(嫌な出来事のつらさを実際より大きく長く見積もる傾向)を和らげる処方である。Gilbertら(1998)は、失恋や不採用などを扱った一連の研究で、人は出来事の後の苦しさを過大に予想し、自分の立ち直る力(心理的免疫)を見落としがちであることを示した。またLaFreniere & Newman(2020)は、不安の強い人に日々の心配を記録してもらい、その後を追跡したところ、心配の大半は現実にならなかったと報告している。心配がふくらんだときは、過去に「何とかなった」経験を思い出すことが、不安を等身大に戻す助けになる。 参考:Gilbertら(1998)「Immune neglect: A source of durabi…」 ↗/LaFreniere & Newman(2020)「Exposing Worry’s Deceit: Percentag…」 ↗
人物
室町時代の禅僧(1394-1481)。とんちの一休さんのモデル
「起こりうる最悪の事態を受け入れてしまえば、あとは良くなるだけである」

— デール・カーネギー 『道は開ける』(1948)

最悪の受容は不安の上限を画定する

心理学では
この名言は、認知行動療法でいう脱破局化(最悪の事態を具体的に思い描き、それでも対処できると確かめること)にあたる。Hoyerら(2009)は全般性不安障害の人を対象にした臨床試験で、最悪の場面をあえて繰り返し想像する「心配への曝露」が、リラクセーション法と並んで不安を和らげる効果をもつことを示した。またLaFreniere & Newman(2020)は、心配の強い人が記録した日々の心配の大半が、実際には起こらなかったことを報告している。漠然とした不安に輪郭を与えれば、恐れの上限が見える。心配ごとが頭を離れないときは、最悪の結末とそのときの手立てを紙に書き出すことが、次の一歩を踏み出す助けになる。 参考:Hoyerら(2009)「Worry Exposure versus Applied Rela…」 ↗/LaFreniere & Newman(2020)「Exposing Worry’s Deceit: Percentag…」 ↗
人物
米国の自己啓発作家(1888-1955)
「人事を尽くして天命を待つ」

— 胡寅 『読史管見』

人としてできる努力をすべてやり切ったら、あとの結果は天に委ねて思い煩わない。努力の放棄ではなく、「自分にできること」と「結果」を切り分けて、結果への執着だけを手放す態度

心理学では
この名言は、心理学でいう統制可能性の見きわめ(変えられることと変えられないことを区別すること)に沿った態度である。Forsythe & Compas(1987)は大学生を対象にした調査で、変えられる出来事には問題解決的に、変えられない出来事には気持ちの整理で対処する人、つまり状況と対処の仕方が合っている人ほど、心理的な苦痛が少ないことを示した。またPham & Taylor(1999)の実験では、良い成績を取った場面を思い描いた学生より、勉強の手順を具体的に思い描いた学生のほうが、不安が少なく、成績も高かった。大事な場面の前には自分がやるべきことを書き出してやり切り、終わったら結果の想像から離れて休むことが、心配を減らす助けになる。 参考:Forsythe & Compas(1987)「Interaction of cognitive appraisal…」 ↗/Pham & Taylor(1999)「From Thought to Action: Effects of…」 ↗
人物
南宋の儒学者(1098-1156)
「果報は寝て待て」

— 日本のことわざ

「寝て待て」は怠惰ではなく「慌てるな」の意

なすべきことを終えたら、焦らず時を待て

心理学では
このことわざは、なすべきことを終えたら結果を気に病まず、不確実さを受け入れて待つ姿勢を説く。心理学では、結果待ちの時期の心配(悪い可能性を繰り返し思い浮かべる思考)が苦痛を強めることが知られている。Rankinら(2019)は、結果を待つ人を対象とした調査と実験を行い、フロー(時間を忘れるほど活動に没頭した状態)を味わえる活動に取り組むと、待つ間の不安が和らぐことを示した。「寝て待つ」とは、結果から注意を離し、目の前のことに心を向けることである。手を尽くしたら結果の確認はほどほどにし、好きな作業や趣味に没頭する時間をつくることが、穏やかに待つ助けになる。 参考:Rankinら(2019)「A better distraction: Exploring th…」 ↗
「我々は、現実によってよりも、想像によって苦しむことのほうが多い」

We suffer more often in imagination than in reality.

— セネカ 『ルキリウスへの手紙』13

苦しみの多くは頭の中で製造される

心理学では
セネカの言葉は、予期不安(まだ起きていない出来事への不安)や感情予測の偏り(将来の気持ちの見積もりのずれ)を言い当てている。LaFreniere & Newman(2020)は、不安の強い人々に日々の心配を記録してもらい、後日それを実際の結果と照らし合わせた。すると心配の大半は現実にならず、心配が外れた割合の高さは症状の改善と関連していた。またGilbertら(1998)の実験では、人は失恋や不採用などのつらい出来事がもたらす苦しみの長さを過大に見積もり、実際には予想より早く立ち直っていた。心配が浮かんだら書き留め、後で「実際どうなったか」を確かめる習慣が、想像の苦しみから距離をとる助けになる。 参考:LaFreniere & Newman(2020)「Exposing Worry’s Deceit: Percentag…」 ↗/Gilbertら(1998)「Immune neglect: A source of durabi…」 ↗
人物
古代ローマのストア派哲学者(BC4頃-AD65)
「苦しむより先に苦しむ者は、必要以上に苦しむ」

He suffers more than necessary, who suffers before it is necessary.

— セネカ 『ルキリウスへの手紙』98

前倒しの苦悩は苦しみを二重にする

心理学では
この名言は、心理学でいう予期的心配(まだ起きていない出来事を先回りして思い悩むこと)のコストを言い当てている。Bernsら(2006)の実験では、電気刺激を待つ参加者の多くが、待たされるよりも強い刺激をすぐ受けるほうを選び、待つあいだも痛みへの注意に関わる脳の領域が働いていた。待つこと自体が苦痛になるのである。さらにLaFreniere & Newman(2020)は、全般性不安症(過度の心配が続く状態)の人に日々の心配を記録してもらい、後で実際に起きたかを確かめた。その結果、心配の大半は現実にならなかった。不安が湧いたら「それは今起きているか」と自問し、目の前の一歩に注意を戻すことが、余分な苦しみを減らす助けになる。 参考:Bernsら(2006)「Neurobiological Substrates of Drea…」 ↗/LaFreniere & Newman(2020)「Exposing Worry’s Deceit: Percentag…」 ↗
人物
古代ローマのストア派哲学者(BC4頃-AD65)
「明日のことを思い煩うな。明日のことは、明日自らが思い煩う」

Do not worry about tomorrow, for tomorrow will worry about itself.

— 新約聖書 マタイによる福音書6:34

心配の単位を「今日」に区切れ

心理学では
この名言は、心理学でいう「心配の先送り(ワーリー・ポストポーンメント:心配する時間と場所をあらかじめ決め、それ以外の時間に浮かんだ心配はそこまで後回しにする技法)」に通じる。Borkovecら(1983)は、慢性的な心配に悩む人を対象に実験を行い、決まった「心配タイム」以外の心配を先送りする方法が、心配に費やす時間を減らす効果を示した。またLaFreniereとNewman(2020)は、全般性不安症(日常のさまざまなことを過度に心配し続ける状態)の人に心配ごとを記録してもらい、後日その結果を確かめたところ、心配の大半は実際には起こらなかったと報告している。夜に明日の不安が浮かんだら「明日の心配タイムに考える」とメモして手放し、今日の自分は今日の課題に集中する。その区切りが、穏やかな一日につながる。 参考:Borkovecら(1983)「Stimulus control applications to t…」 ↗/LaFreniere & Newman(2020)「Exposing Worry’s Deceit: Percentag…」 ↗
「空の鳥を見よ。播かず、刈らず、倉に納めず。それでも養われている」

Look at the birds of the air; they do not sow or reap.

— 新約聖書 マタイによる福音書6:26

自然は思い煩いなしに生きている

心理学では
この言葉は、先のことをすべて自分の力で確定させようとする構えを手放すよう促している。心理学では、先行きの見えなさを耐えがたく感じる傾向を「不確実性への不耐性」(わからない状態への我慢しにくさ)と呼び、心配を長引かせる要因とみなす。Dugasら(1998)は、この傾向が強い人ほど慢性的な心配や不安を抱えやすいことを示した。さらにLadouceurら(2000)の実験では、不確実さを受け入れにくい気持ちを高められた参加者は、そうでない参加者より心配が増えた。「わからなさ」を許すことが、思い煩いを軽くする鍵である。明日の段取りを整えたら、残りは成り行きに委ねる。その練習が心の余白につながる。 参考:Dugasら(1998)「Generalized anxiety disorder: a pr…」 ↗/Ladouceurら(2000)「Experimental manipulation of intol…」 ↗
「まくとぅそーけー、なんくるないさ(誠を尽くしていれば、自然と何とかなる)」

— 沖縄の言葉 沖縄の格言

「なんくるないさ」単独での使用は本来の意味の省略形

正しく努めた上での楽観こそ本来の「なんくるないさ」

心理学では
この言葉は、心理学でいう現実的楽観主義(事実から目をそらさず、できることに取り組みながら良い結果を期待する姿勢)に重なる。Schneider(2001)は、根拠のない楽観とは区別して、現実を踏まえ努力と結びついた楽観こそが人を支えると論じた。またNes & Segerstrom(2006)のメタ分析では、楽観的な人ほど問題に正面から向き合って行動する対処(接近型コーピング)をとりやすく、問題から逃げる対処は少ない傾向が示された。楽観は何もしないことではなく、手を尽くす力と結びついている。不安なときは、今日できる誠実な一歩を一つ決めて果たし、あとは肩の力を抜く。それが心を軽くする助けになる。 参考:Schneider(2001)「In search of realistic optimism: M…」 ↗/Nes & Segerstrom(2006)「Dispositional Optimism and Coping:…」 ↗
「私の人生は不幸な出来事に満ちていたが、そのほとんどは実際には起こらなかった」

My life has been filled with terrible misfortune; most of which never happened.

— ミシェル・ド・モンテーニュ(原型) 『エセー』の趣旨に基づく。マーク・トウェインの言葉としても流通

※定型文としての初出は不明。トウェイン・チャーチル等にも仮託される

心配した不幸の大半は現実化しない

心理学では
この名言は、心理学でいう「破局的思考」(最悪の事態を先回りして思い描くくせ)と、まだ起きていない出来事に心をすり減らす「予期不安」の空回りを言い当てている。LaFreniere & Newman(2020)は、全般性不安症(過剰な心配が長く続く状態)の人に、心配した内容と、その後それが実際に起きたかどうかを一定期間記録してもらった。その結果、心配の大半は現実にならず、外れた心配の割合が高い人ほど、その後の不安症状の改善が大きいことが分かった。心配が浮かんだら書き留め、数日後に結果を見直す習慣をもつと、自分の心配がいかに外れやすいかを実感でき、心の余裕につながる。 参考:LaFreniere & Newman(2020)「Exposing Worry’s Deceit: Percentag…」 ↗
人物
フランスのモラリスト(1533-1592)。『エセー(随想録)』
出典に諸説あり
「どうにもならないことは、どうにもならない。どうにかなることは、どうにかなる」

— 夏目漱石(とされる) 典拠不詳

※漱石の著作に該当句は確認されていない

統制不能なものは手放し、統制可能なものは信じる

心理学では
この言葉は、ストレス研究でいう「統制可能性の評価」(その状況を自分の力で変えられるかの見きわめ)と、それに応じた対処の使い分けを言い表している。変えられる問題には問題焦点型対処(原因に直接働きかける)、変えられない問題には情動焦点型対処(受け止め方や気持ちを整える)を選ぶという考え方である。Cheng(2001)は大学生を対象に、日常場面と実験室の両方で、状況の統制可能性に合わせて対処を切り替えられる人ほど、心理的な適応が良好であることを示した。Chengら(2014)のメタ分析でも、こうした対処の柔軟性は心の健康の良さと関連していた。心配ごとが浮かんだら、まず「自分が動かせることか」を紙に書き分ける。動かせることには小さな一歩を、動かせないことには受け流す工夫を当てることが、心の荷を軽くする助けになる。 参考:Cheng(2001)「Assessing coping flexibility in re…」 ↗/Chengら(2014)「Coping flexibility and psychologic…」 ↗
人物
日本の作家(1867-1916)。『こころ』『草枕』
「あなたの力の及ぶものと、及ばないものとを区別せよ」

Some things are in our control and others not.

— エピクテトス 『提要(エンキリディオン)』第1章

統制可能なものだけに力を注げ

心理学では
この名言は、ストレス対処研究の「適合仮説」(状況を変えられる度合いに合った対処を選ぶほど、心の負担が軽くなるという考え)と重なる。Forsythe & Compas(1987)は大学生のストレス体験を調べた。その結果、変えられると見た出来事には問題解決で、変えられないと見た出来事には気持ちの整理で向き合った人ほど、心理的な症状が少なかった。Chengら(2014)のメタ分析(多数の研究の統合)でも、状況に応じて対処を切り替えられる人ほど、生活の変化にうまく適応していた。心配ごとは「できること」と「できないこと」に書き分け、できる側の一歩に力を注ぐことが心の余裕につながる。 参考:Forsythe & Compas(1987)「Interaction of cognitive appraisal…」 ↗/Chengら(2014)「Coping flexibility and psychologic…」 ↗
人物
古代ギリシャのストア派哲学者(55頃-135頃)
「解決できる問題なら、心配する必要はない。解決できない問題なら、心配しても仕方がない」

If it can be solved, there's no need to worry. If it can't be solved, worry is of no use.

— ダライ・ラマ14世 シャーンティデーヴァ『入菩薩行論』の偈に基づく

原典は8世紀インドの仏教者シャーンティデーヴァ

いずれにせよ、心配は不要である

心理学では
この言葉は、心配を「解決に向かう思考」と「同じところを回り続ける思考」に仕分ける発想と重なる。Watkins(2008)は反復的思考(同じことを繰り返し考えること)に関する研究を総覧した。その結果、具体的で手を打てる問題に向けた思考は計画や行動につながりやすい。一方、変えられない事柄を抽象的に考え続ける思考は、不安や落ち込みと関連していた。またBorkovecら(1983)は、心配性の大学生を対象に実験を行った。心配が浮かんだら一日のうちの決めた時間まで先送りする練習をした人は、日中に心配して過ごす時間が減った。心配が浮かんだら「いま打てる手はあるか」と自問し、あれば小さく一歩動き、なければ後の時間に預ける。この習慣が、気持ちを軽くする助けになる。 参考:Watkins(2008)「Constructive and unconstructive re…」 ↗/Borkovecら(1983)「Stimulus control applications to t…」 ↗
人物
チベット仏教の最高指導者(1935-)。ノーベル平和賞
「杞の国の人は、天が崩れ落ちてくることを心配して夜も眠れなかった(杞憂)」

— 『列子』天瑞篇

起こりそうもないことへの心配の愚

心理学では
杞憂は、心理学でいう脅威の確率の過大評価(起こる見込みの低い悪い出来事を、実際よりも起こりやすく感じてしまう認知の偏り)にあたる。Butler & Mathews(1983)は、不安の強い人ほど、自分に悪い出来事が起こる確率を高く見積もる傾向があることを示した。またLaFreniere & Newman(2020)は、全般性不安症(過剰な心配が続く状態)の人に日々の心配を書き留めてもらい、後日それが実際に起きたかを確かめる研究を行った。その結果、心配の大半は現実にならなかったことが明らかになった。眠れない夜は心配ごとを紙に書き出し、後日その答え合わせをする。この習慣が、心配の多くは杞憂に終わると実感する助けになる。 参考:Butler & Mathews(1983)「Cognitive processes in anxiety」 ↗/LaFreniere & Newman(2020)「Exposing Worry’s Deceit: Percentag…」 ↗
「過去と未来を締め出し、今日一日の区切りで生きよ」

Live in day-tight compartments.

— ウィリアム・オスラー 1913年イェール大学講演(カーネギー『道は開ける』で紹介)

人生は「今日」という防水区画で運航せよ

心理学では
オスラーの「今日の区画」は、心理学でいう現在志向の注意(いま起きていることに意識を向けること)にあたり、過去の反すう(同じ考えを繰り返し思い返すこと)や未来への心配から心を切り離す工夫である。Brown & Ryan(2003)は相関研究で、今この瞬間に気づいている傾向が強い人ほど幸福感が高く、不安や抑うつが低いことを示した。Killingsworth & Gilbert(2010)は、スマートフォンで日常の瞬間ごとの状態を尋ねる研究で、心が目の前の活動から離れているときほど気分が低いことを見いだした。朝に今日やることだけを確かめ、目の前の一つに集中することが、心配に振り回されない一日につながる。 参考:Brown & Ryan(2003)「The benefits of being present: Min…」/Killingsworth & Gilbert(2010)「A Wandering Mind Is an Unhappy Min…」
人物
カナダ出身の医学者(1849-1919)。「近代医学教育の父」
「船は橋のたもとに来れば、自然とまっすぐになる」

— 中国のことわざ 「船到橋頭自然直」

案じていた難所も、その場に至れば道が見える

心理学では
この名言は、感情予測(未来の気持ちの見積もり)の偏りを言い当てている。Gilbertら(1998)は、大学教員の昇進審査や失恋などを題材に、予想する人と実際に経験した人を比べる研究を重ね、人は悪い出来事の後の落ち込みを長く見積もりすぎることを示した。原因は、出来事に直面して初めて働く「心の免疫システム」(意味づけを変えて立ち直る働き)の見落としにある。LaFreniere & Newman(2020)も、過剰な心配が続く人に日々の心配を記録してもらい、その大半が現実にならなかったと報告している。難所を案じて眠れない夜は、いまできる一歩に目を向け、その場の自分の対処力に任せることが助けになる。 参考:Gilbertら(1998)「Immune neglect: A source of durabi…」 ↗/LaFreniere & Newman(2020)「Exposing Worry’s Deceit: Percentag…」 ↗
「心配するな、幸せでいなさい」

Don't worry, be happy.

— メヘル・バーバー 信奉者へのメッセージ(1960年代)

楽曲(1988)の題名の由来となった言葉

心配の手放しを端的に説いた言葉

心理学では
この言葉は、心配を力ずくで押し込めるのではなく、手放して今の幸せに目を向けよという教えである。心理学では、考えを無理に消そうとする「思考抑制」(頭から追い出そうとすること)は、かえって逆効果になりやすい。Wegnerら(1987)の実験では、白クマを考えないよう指示された人は、その後かえって白クマを多く思い浮かべた。一方、Borkovecら(1983)は、心配を決まった時間と場所にまとめる「刺激統制法」(心配の時間を区切る方法)を試し、心配に費やす時間が減ることを示した。心配は消すより、置き場所を決めて脇に置くのがよい。気がかりが浮かんだら「後で考える」とメモして目の前の楽しみに戻ることが、穏やかな毎日につながる。 参考:Wegnerら(1987)「Paradoxical effects of thought sup…」 ↗/Borkovecら(1983)「Stimulus control applications to t…」 ↗
人物
インドの導師(1894-1969)
「為すことなくして、為さざることなし(無為にして為さざるは無し)」

— 老子 『老子』第48章

「何もするな」という意味ではなく、作為・力み・支配への執着を手放したとき、物事はかえって自然にうまく運ぶ、という老子の逆説。眠ろうと力むほど眠れなくなる、といった日常の経験にも通じる

心理学では
この逆説は、心理学でいう「皮肉過程」(思い通りにしようと力むほど、かえって望まない結果を招く心の働き)とよく重なる。Wegner(1994)は、考えや行動を意志で統制しようとすると、失敗していないかを見張る監視の働きも同時に動き、心に余裕がないときほどその逆効果が表に出ると論じた。Ansfieldら(1996)の実験では、騒がしい音楽を聞きながら「できるだけ早く眠るように」と指示された人は、指示のない人より寝つくのが遅かった。力みを手放すことは怠けではなく、物事を自然に運ばせる知恵である。うまくやろうと焦ったときこそ、結果への執着をいったん脇に置き、目の前の一歩に注意を向けることが助けになる。 参考:Wegner(1994)「Ironic processes of mental control…」 ↗/Ansfieldら(1996)「Ironic effects of sleep urgency」 ↗
人物
古代中国の思想家。道家の祖
「死は、私たちにとって何ものでもない。私たちが存在するとき死は存在せず、死が存在するとき私たちは存在しない」

Death is nothing to us.

— エピクロス 『メノイケウス宛の手紙』

最大の不安である死への論理的処方

心理学では
この論法は、死への恐れ(死の不安)を受け止め方の組み替えによって和らげる試みであり、認知的再評価(出来事の意味づけを見直すこと)の先駆けである。精神科医のYalom(2008)は、死の恐怖に苦しむ人々との臨床経験から、エピクロスの論法が不安を鎮める支えになると述べている。また、Menziesら(2018)は無作為化比較試験のメタ分析(複数の研究を統合する分析)を行い、認知行動療法などの心理的介入が死の不安を和らげる効果をもつことを示した。ただし、理屈だけでは落ち着かない夜には、身近な人と気持ちを語り合うことを組み合わせるとよい。漠然とした不安が湧いたときは、いま確かに存在している自分の一日に目を向けることが助けになる。 参考:Yalom(2008)「Staring at the sun: Overcoming the…」 ↗/Menziesら(2018)「The effects of psychosocial interv…」 ↗
人物
古代ギリシャの哲学者(BC341-270)
「我々が恐れなければならない唯一のものは、恐怖それ自体である」

The only thing we have to fear is fear itself.

— フランクリン・D・ルーズベルト 1933年大統領就任演説

恐怖は対象よりも恐怖自体が害をなす

心理学では
この名言は、心理学でいう「不安感受性」(動悸や息苦しさなど、不安にともなう体の反応そのものを危険だと感じる傾向)の考え方と重なる。Schmidtら(1997)は、厳しい基礎訓練に入る米空軍士官学校の候補生を追跡した縦断研究で、不安感受性が高い人ほど訓練中にパニック発作を起こしやすいことを示した。恐怖を恐れる心が、恐怖をいっそう大きくするのである。一方、Jamiesonら(2012)の実験では、緊張による体の高ぶりを「力を発揮する準備」ととらえ直すよう教えられた人は、ストレス下での心臓や血管の反応がより健やかになった。胸が高鳴ったときは、それを危険の合図ではなく、体が本番に備えている印として受け止めることが落ち着きにつながる。 参考:Schmidtら(1997)「The role of anxiety sensitivity in…」 ↗/Jamiesonら(2012)「Mind over matter: Reappraising aro…」 ↗
人物
米国第32代大統領(1882-1945)。ニューディール政策
出典に諸説あり
「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」

— 日本のことわざ(横井也有の句とされる) 『鶉衣』の句に基づくとされる

恐怖の正体は、確かめれば案外つまらないものである

心理学では
この句は、心理学でいう解釈バイアス(曖昧なものを脅威の側に読んでしまう心の癖)と、現実検証(思い込みを事実と照らして確かめること)の効用を言い当てている。Eysenckら(1991)は、二通りに読める文を不安障害の患者らに示す実験で、不安の強い人ほど曖昧な文を脅威的な意味で受け取ることを示した。LaFreniere & Newman(2020)は、全般性不安症(慢性的な心配が続く状態)の人に日々の心配を記録してもらい、後でそれが実際に起きたかを確かめる研究を行った。その結果、心配の大半は現実にならなかったと報告している。気がかりを書き出し、後で実際の結果と見比べる習慣が、心の中の幽霊を枯れ尾花に戻す助けになる。 参考:Eysenckら(1991)「Bias in interpretation of ambiguou…」 ↗/LaFreniere & Newman(2020)「Exposing Worry’s Deceit: Percentag…」 ↗
人物
横井也有(1702-1783)は尾張の俳人
「放下著(ほうげじゃく)── 捨ててしまえ」

— 趙州従諗 厳陽尊者との問答(『五灯会元』ほか)

「一物不将来の時いかん」への答え

「何も持っていない」というこだわりさえ手放せ

心理学では
「放下著」は、心理学でいう非執着(物事や考えに固執しない心のあり方)にあたる。「捨てよう」と力むことまで手放す点では、ACTの脱フュージョン(考えを考えとして、距離をおいて眺めること)に通じる。Wegnerら(1987)の実験では、ある考えを抑え込むよう指示された人は、後でその考えをかえって多く思い浮かべた。またSahdraら(2010)は仏教の考え方に基づいて非執着の尺度を作り、相関研究によって、非執着の傾向が強い人ほど幸福感が高く、不安が低いことを示した。心配が湧いたら追い払おうとせず、「いま心配している」と眺めて流すことが、心を軽くする助けになる。 参考:Wegnerら(1987)「Paradoxical effects of thought sup…」 ↗/Sahdraら(2010)「A Scale to Measure Nonattachment: …」 ↗
人物
唐代の禅僧(778-897)
「ハクナ・マタタ ── 心配ないさ」

Hakuna matata.

— スワヒリ語の言い回し 東アフリカの日常表現(映画『ライオン・キング』で世界に広まった)

映画以前から現地で使われてきた表現

スワヒリ語で「問題ない、心配ない」を意味する日常語。困りごとを深刻化させず受け流す東アフリカの会話文化を映す言葉で、ケニアやタンザニアでは観光客への挨拶としても使われる

心理学では
「ハクナ・マタタ」は、心理学でいう脱破局化(最悪の事態を思い描く考え癖をゆるめること)を一言で表した言葉である。Lazarus & Folkman(1984)のストレス理論では、出来事を「脅威」と受け取るかどうか(一次評価)がストレスの強さを左右する。LaFreniere & Newman(2020)は、全般性不安症の人に心配ごとを日記に書き留めてもらい、後日それが実際に起きたかを確かめた。その結果、心配の大半は現実にならなかった。ただし差し迫った問題には、具体的な手立てを組み合わせるとよい。心配がわいたら書き出し、後で答え合わせをする習慣が、「なんとかなる」という実感を育てる。 参考:Lazarus & Folkman(1984)「Stress, Appraisal, and Coping. New…」 ↗/LaFreniere & Newman(2020)「Exposing Worry’s Deceit: Percentag…」 ↗
「あなたには行為そのものへの権利はあるが、その結果への権利はない。結果を動機とせず、なすべきことをなせ」

You have a right to your actions, but never to your actions' fruits.

— 『バガヴァッド・ギーター』 第2章47節(BC2世紀頃)

ガンジー、ソロー、アインシュタインらに影響を与えた

戦いを前に苦悩する王子アルジュナへのクリシュナの教え。結果(勝敗・成果)は自分の支配下になく、支配下にあるのは行為の質だけである。だから結果への執着を手放し、目の前の為すべきことに専心せよ、と説く(カルマ・ヨーガの核心)

心理学では
この教えは、心理学でいう「過程目標」(勝敗や点数ではなく、自分で直接コントロールできる行動の手順や質に向けた目標)を重んじる考え方と重なる。結果は相手や運にも左右されるが、行為の質は自分で選べる。Zimmerman & Kitsantas(1997)は、ダーツ投げを学ぶ女子高校生を対象にした実験で、フォームなどの手順に注意を向ける目標を与えた群が、得点だけを目標にした群よりも技能がよく伸び、自己効力感(「自分はできる」という感覚)や練習への興味も高かったことを示した。大事な場面で結果を思って心がざわついたら、「いま自分にできる一手」を言葉にして、そこへ注意を戻す。それが落ち着きと成果の両方につながる。 参考:Zimmerman & Kitsantas(1997)「Developmental phases in self-regul…」 ↗
人物
ヒンドゥー教の最重要聖典の一つ。ガンジーが生涯の指針とした
「考えても仕方のないことを思い悩むくらいなら、一杯の濁り酒を飲むほうがよいらしい」

— 大伴旅人 『万葉集』巻3・338(讃酒歌十三首)

十三首連作の一首。パブリックドメインの和歌

「験なき物を思はずは一坏の濁れる酒を飲むべくあるらし」。奈良時代の貴族が詠んだ、非生産的な思い悩みへの皮肉とユーモア。1300年前の日本人も「考えても仕方ないこと」に苦しみ、それを笑いに変えていたことを示す歌

心理学では
この歌が退けているのは、心理学でいう非建設的な反すう(答えの出ない問いを抽象的に繰り返し考えること)である。Watkins(2008)は反復的思考の研究を総説し、解決につながらない抽象的な思い悩みほど抑うつや不安と結びつきやすいことを示した。Nolen-Hoeksema & Morrow(1993)の実験でも、落ち込んだ人は自分の気持ちを考え続けるより、別の事柄に注意を向けたほうが気分が軽くなった。ただし酒に頼る気晴らしは習慣になりやすいため、散歩や談笑とも組み合わせるとよい。答えの出ない悩みに気づいたら、いったん手放して好きなことに没頭する時間が、心を軽くする助けになる。 参考:Watkins(2008)「Constructive and unconstructive re…」 ↗/Nolen-Hoeksema & Morrow(1993)「Effects of rumination and distract…」 ↗
人物
奈良時代の歌人・政治家(665-731)。大宰府長官。大伴家持の父
「平常心、これ道なり(平常心是道)」

— 馬祖道一/趙州従諗 禅の公案(『無門関』第19則)。剣道など武道で「平常心」として重視

武道・スポーツ界で最も引用される禅語の一つ

特別な悟りの状態を遠くに求めるのではなく、ふだんの当たり前の心こそが道そのものだ、という禅の教え。武道では、試合でも稽古と同じ心の状態を保てることが最高の境地とされ、この語が座右とされてきた

心理学では
「平常心」は、心理学でいえば大事な場面でも注意の向け方をふだんと変えないことにあたる。本番で自分の動きを意識しすぎると、練習で身についた自動化された技能(考えなくてもできる動き)がかえって崩れる。これを「チョーキング」(本番での失速)と呼ぶ。Baumeister(1984)は実験で、プレッシャーが自分への意識を高め、技能の遂行を損なうことを示した。Beilock & Carr(2001)はゴルフのパット実験で、熟練者が動作の細部に注意を向けると成績が落ちること、ふだんから人に見られる状況で練習した人は本番で失速しにくいことを示した。大事な場面ほどいつもの手順で臨み、日頃の稽古に少しの緊張を混ぜておくことが、本番の平常心につながる。 参考:Baumeister(1984)「Choking under pressure: Self-consc…」 ↗/Beilock & Carr(2001)「On the fragility of skilled perfor…」 ↗
人物
馬祖道一(709-788)は唐代の禅僧。趙州がこの語で悟ったと伝わる
「不安の誤報が多いのは、故障ではない。煙探知機は、本物の火事を一度も見逃さないために、パンにも鳴るように設計されている」

— ランドルフ・ネシー 「煙探知機の原理」(進化精神医学、『Good Reasons for Bad Feelings』2019)

不安が実際の危険より頻繁に鳴るのは、進化的には正しい設計だという理論。祖先の環境では「危険の見逃し(命を失う)」のコストが「誤報(少し疲れる)」のコストより桁違いに大きかったため、警報は過敏な方に調整された

心理学では
この名言は「煙探知機の原理」(危険を見逃す損失が誤報の損失よりはるかに大きいとき、警報は過敏に設定されるのが合理的だという考え)を表している。Nesse(2005)は、信号検出理論(警報の当たり外れを損得で分析する枠組み)を使って、この原理を理論的に示した。また、Jamiesonら(2012)の実験では、人前で話す課題の前に、緊張を「体が課題に備える有益な反応」と捉え直した人ほど、心臓や血管の反応がより適応的で、脅威への注意の偏りも小さかった。不安を「故障」ではなく「設計通りの働き」と見ることで、不安への不安を和らげられる。胸がざわついたら「探知機がちゃんと働いている」と受け止め、本当に火事かどうかを落ち着いて確かめることが助けになる。 参考:Nesse(2005)「Natural selection and the regulati…」 ↗/Jamiesonら(2012)「Mind over matter: Reappraising aro…」 ↗
人物
米国の精神科医・進化医学者(1948-)。進化精神医学の創始者の一人
「まず、ラクダを繋げ。それから、アッラーに委ねよ」

Tie your camel first, then put your trust in Allah.

— ムハンマド(ハディース) ティルミズィー伝承

「ラクダを繋がずに神に委ねてよいか」と尋ねた男への預言者の答え。人事(繋ぐ)と信頼(委ねる=タワックル)は矛盾せず、順番の問題である ──「人事を尽くして天命を待つ」のイスラム版

心理学では
この名言は、変えられることには自ら手を打ち(一次的コントロール=状況を変える働きかけ)、変えられないことは受け入れる(二次的コントロール=受け止め方を整える働きかけ)という二段構えを表している。Rothbaumら(1982)は、この二つを人が安心を保つために補い合う仕組みとして整理した。Pargamentら(1988)は教会員への質問紙調査で、神と協力して問題に取り組む人ほど自尊心や自己統制感が高く、すべてを神任せにする人ほどそれらが低いという関連を報告している。心配ごとが浮かんだら、まず自分にできる一手を実行し、残りは手放すと決めることが心の軽さにつながる。 参考:Rothbaumら(1982)「Changing the world and changing th…」 ↗/Pargamentら(1988)「Religion and the Problem-Solving P…」 ↗
人物
イスラム教の預言者(570頃-632)の言行録
「腑に落ちる。腹が決まる。肚が据わる ── 日本語は、納得と覚悟を「内臓」で語る」

— 日本語の身体語彙

頭で「理解する」ことと、腑(はらわた)に「落ちる」ことを、日本語は別の出来事として区別してきた。決断も「頭で決める」のではなく「腹が決まる」。不安が消えるのは理屈が揃ったときではなく、肚が据わったとき ── という身体知の言語化

心理学では
この名言が示すのは、内受容感覚(心拍や内臓の状態を感じ取る力)が納得や決断を支えるという見方であり、ダマシオのソマティック・マーカー仮説(身体反応が選択の良し悪しを知らせる信号になるという理論)と重なる。Becharaら(1997)はカードを使った賭け課題の実験で、参加者が有利な選び方を言葉にできる前から、不利な山を選ぼうとすると発汗反応が生じ、選択も有利な方向へ変わっていくことを示した。Dunnら(2010)は、自分の心拍を正確に感じ取れる人ほど、身体反応と直感的な判断の結びつきが強いことを報告している。迷ったときは呼吸を整え、胸や腹の感じに耳を澄ますことが、肚を据える助けになる。 参考:Becharaら(1997)「Deciding Advantageously Before Kno…」 ↗/Dunnら(2010)「Listening to Your Heart」 ↗
「毒矢に射られた人が、「射手の身分は、弓の材質は、矢羽の鳥は」と詮索して矢を抜かせなければ、答えを知る前に死んでしまう。まず、矢を抜きなさい」

— 仏教説話「毒矢のたとえ」 『中部経典』箭喩経(マールンキヤ経)

「世界は永遠か、死後はあるのか」という形而上学の問いに答えないブッダを弟子が問い詰めたときの返答。答えの出ない問いの詮索は、いま刺さっている苦しみ(矢)の手当てを遅らせるだけ ── 実践優先の仏教の立場を象徴する説話

心理学では
この説話は、答えの出ない「なぜ」を考え続ける反すう(落ち込みの原因や意味を堂々めぐりで考え続けること)よりも、いま目の前の苦しみへの対処(コーピング)を優先せよという教えと重なる。Lyubomirsky & Nolen-Hoeksema(1995)の実験では、気分の落ち込んだ大学生に反すうをさせると、気をそらす課題をした場合に比べて、対人関係の悩みに対する解決策の質が低くなった。さらにWatkins & Moulds(2005)の実験では、うつ状態の人が「なぜこうなったのか」と抽象的に考えるより、「どのように起きたのか」を具体的に考えたほうが、より有効な解決策を出せた。悩みが頭を離れないときは、「なぜ」を「どうすれば」に言い換え、今日できる小さな一歩を一つ決める。それが矢を抜くことにつながる。 参考:Lyubomirsky & Nolen-Hoeksema(1995)「Effects of self-focused rumination…」 ↗/Watkins & Moulds(2005)「Distinct modes of ruminative self-…」 ↗
人物
初期仏教の代表的な説話
「人間は計画し、神は笑う」

Man plans, and God laughs.

— イディッシュのことわざ Der mentsh trakht un got lakht

綿密に立てた人生設計が、思いもよらない出来事であっけなく変わる ── その理不尽を嘆くのではなく、笑いに変えて受け流す、ユダヤの苦難の歴史が生んだことわざ。計画するな、ではなく「計画の限界を知って計画せよ」という二重の知恵

心理学では
このことわざは、計画する力を認めつつ、統制の錯覚(実際以上に物事を操れると思い込む傾向)を手放し、先の見えなさをそのまま受け入れる構えを表している。Dugasら(1998)の研究では、不確実性への不耐性(先が分からない状態に耐えられない傾向)が強い人ほど、心配が多いことが示されている。また、Wroschら(2003)は成人を対象とした複数の調査で、達成が難しくなった目標から手を引き、新しい目標に切り替えられる人ほど、主観的ウェルビーイング(自分で感じる幸福感)が高いことを報告した。計画は立て、狂ったときには笑って次の手を考える。その切り替えの軽さが、心配に振り回されない毎日につながる。 参考:Dugasら(1998)「Generalized anxiety disorder: a pr…」 ↗/Wroschら(2003)「Adaptive Self-Regulation of Unatta…」 ↗
「マイペンライ ── 大丈夫、気にしないで」

Mai pen rai.

— タイの言葉 タイの日常会話の中心にある定型句

過度の我慢の符丁になりうる面も指摘される

謝罪への返答にも、失敗への慰めにも、予定変更の受け流しにも使われる万能句。「たいしたことではない、なんとかなる」という構えを、一語で共有する文化の装置。微笑みの国タイの対人関係の潤滑油とされる

心理学では
「マイペンライ」は、心理学でいう感情の受容(嫌な気持ちを否定せず、そのまま認めて流す姿勢)を、相手と一言で分かち合う言葉である。Fordら(2018)は実験・日記・縦断の研究で、ネガティブな感情や考えを受け入れる傾向の強い人ほど、ストレス場面での落ち込みが小さく、半年後の抑うつ症状も少ないことを示した。Rose(2002)も、悩みを友人と延々と話し込む共反すう(嫌な話題を二人で繰り返し掘り返すこと)が、子どもの不安や抑うつの高さと関連することを見いだした。ただし深刻な悩みには、じっくり話を聞く時間と組み合わせるとよい。小さな失敗や予定変更には、まず自分にも相手にも「大丈夫」と声をかけることが、気持ちの切り替えにつながる。 参考:Fordら(2018)「The psychological health benefits …」 ↗/Rose(2002)「Co–Rumination in the Friendships o…」 ↗
「私のサーカスではないし、私の猿でもない」

Not my circus, not my monkeys.

— ポーランドのことわざ Nie mój cyrk, nie moje małpy

英語圏でもそのまま流行した

他人の騒動や揉め事に巻き込まれそうになったとき、「それは私の管轄ではない」と一線を引くための、ユーモラスな定型句。混乱(サーカス)とその原因(猿)を、自分の責任範囲から切り離す

心理学では
この言葉は、境界設定(自分と他者の責任範囲を区別すること)を軽やかな定型句にしたものである。他人の問題まで背負い込む傾向は非緩和的共同性(自分を後回しにして他者に過剰に関わる傾向)と呼ばれる。Fritz & Helgeson(1998)の相関研究では、この傾向が強い人ほど他者の問題を繰り返し考え込み、心理的苦痛も高かった。またPatrick & Hagtvedt(2012)の実験では、「できない」より「私はしない」と自分の方針として断る言い方のほうが、誘惑を退けて目標を守る行動につながった。ただし身近な人が本当に助けを求めている場面は、別に考えるとよい。周りが騒がしいときは心の中でこの一言を唱え、自分の舞台に注意を戻す。 参考:Fritz & Helgeson(1998)「Distinctions of unmitigated commun…」 ↗/Patrick & Hagtvedt(2012)「“I Don’t” versus “I Can’t”: When E…」 ↗
「アール・イーズ・ウェル(うまーくいく)。心は臆病だから、騙してやるんだ」

All is well.

— ランチョー(映画『きっと、うまくいく』) ラージクマール・ヒラーニ監督『3 Idiots』(2009、インド)

「胸に手を当てて『うまくいく』と唱えても問題は解決しない。でも、問題に立ち向かう勇気が出る」と続く台詞。楽観の言葉は現実を変える魔法ではなく、心臓を落ち着かせて行動を可能にする技術だ ── 自己教示の機能を正確に説明した、インド映画史上の大ヒット作の合言葉

心理学では
この台詞は、心理学でいう自己教示(自分に向けた言葉で気持ちや行動を導くこと)による感情調整(感情の強さや向きを整えること)の働きを言い当てている。Brooks(2014)の実験では、人前で歌う・話すなどの課題の直前に「わくわくしている」と声に出した人は、「落ち着いている」と言った人より成績がよかった。Krossら(2014)も、自分を名前で呼び、他人に語りかけるように自分を励ますと、スピーチ課題での不安が和らぎ、出来もよくなることを実験で示した。臆病な心を外からなだめる発想そのものである。言葉で問題は消えないが、踏み出す力は生まれる。緊張する場面の前に胸に手を当てて合言葉を唱えることが、最初の一歩を後押しする。 参考:Brooks(2014)「Get excited: Reappraising pre-perf…」 ↗/Krossら(2014)「Self-talk as a regulatory mechanis…」 ↗
人物
インドの国民的映画。教育競争社会への批評として世界的に支持された
「逃げるは恥だが、役に立つ」

— ハンガリーのことわざ(ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』) Szégyen a futás, de hasznos。海野つなみ原作・TBSドラマ(2016)で日本中に広まった

正面から戦うことだけが正解ではない。撤退や回避が「恥」に見えても、自分が壊れずに生き延びて別の場所で戦えるなら、それは立派な戦略である ── 逃げ=敗北という等式を解除したことわざ

心理学では
このことわざは、心理学でいう「目標離脱」(達成が難しい目標から手を引く力)や「コーピングの柔軟性」(立ち向かう・距離を置くなどの対処を、状況に応じて使い分ける力)に通じる。Wroschら(2003)は学生や重い病気の子を持つ親などを対象に調査を行い、見込みの薄い目標から離れられる人ほど幸福感が高く、ストレスが少ないことを示した。Chengら(2014)のメタ分析でも、対処法を柔軟に切り替えられる人ほど心理的適応がよい。また、離れたあとに新しい目標へ向かい直すことも、幸福感の高さと関連する。行き詰まったときに「逃げ道」を一つ確保しておくことが、心の余裕につながる。 参考:Wroschら(2003)「Adaptive Self-Regulation of Unatta…」 ↗/Chengら(2014)「Coping flexibility and psychologic…」 ↗
人物
ドラマは新垣結衣・星野源主演で社会現象に
「一切、なりゆき」

— 樹木希林 『一切なりゆき 樹木希林のことば』(2019)

書名は没後に編まれた語録集による

「どう生きたいか」と問われ続けた晩年の答え。計画も抵抗も手放して、来たものを面白がって受けて立つ ── がんと共に生き、役を選ばず、家も持たない暮らしを貫いた女優の、五文字の人生哲学

心理学では
「なりゆき」は、心理学でいう受容(acceptance:思い通りにならない出来事や感情を、否定せずにそのまま受けとめる姿勢)に通じる。投げやりとは違い、変えられないものと争うのをやめて、目の前の現実に力を注ぐ構えである。Fordら(2018)は成人を対象に、実験室・日記・縦断の手法を組み合わせて調べた。その結果、つらい感情や考えを受け入れる傾向の高い人ほど、ストレス場面での否定的感情が少なく、半年後の抑うつ症状も少なかった。予定が崩れた日や思わぬ役目が回ってきたときは、「さて、これをどう面白がろうか」とつぶやいてから動き出す。それが心の余白を守る助けになる。 参考:Fordら(2018)「The psychological health benefits …」 ↗
人物
日本の俳優(1943-2018)。没後の語録集は年間ベストセラーとなった
「我、善く吾が浩然の気を養う。……其の気たるや、至大至剛、直を以て養いて害なうこと無ければ、則ち天地の間に塞(み)つ」

— 孟子 『孟子』公孫丑章句上

「浩然の気」の出典

浩然の気 ── 天地に満ちるほど大きく、何ものにも屈しない、おおらかで動じない生命力。それは一夜漬けで得られるものではなく、日々の「直(正しさ)」の積み重ねによってのみ育つ、と孟子は説く。「動じない心(不動心)」の育て方の古典

心理学では
孟子のいう「浩然の気」は、心理学でいえば、自分の価値観と行動が一致した真正性(オーセンティシティ:本心に沿って生きること)と、それに支えられた揺らぎにくい自己信頼に近い。Woodら(2008)は大学生などを対象とした調査で、自分の本心に沿って生きている人ほど自尊心や人生満足度が高く、不安やストレスが低いことを示した。またCreswellら(2005)の実験では、自分が大切にしている価値観について事前に書いた人は、人前でスピーチをする課題でのストレスホルモンの反応が小さかった。日々の小さな場面で「自分に恥じない選択」を一つずつ重ねることが、いざというとき動じない心の土台になる。 参考:Woodら(2008)「The authentic personality: A theor…」/Creswellら(2005)「Affirmation of Personal Values Buf…」 ↗
人物
戦国時代の思想家(BC372頃-289頃)
「それは、誰の課題か ── 他者の課題には踏み込まず、自分の課題に他者を踏み込ませない(課題の分離)」

— アルフレッド・アドラー(アドラー心理学の定式) 『嫌われる勇気』で広く知られた実践原則

定式化は現代の解説による

「その選択の結末を最終的に引き受けるのは誰か」で課題の持ち主を判定し、他人の課題(あなたをどう評価するか等)を手放す ── 対人ストレスの大部分は、他者の課題への越境か、自分の課題への侵入の放置から生じる、という整理術

心理学では
課題の分離は、心理学でいえば対人関係における境界(自分と他者の責任の線引き)の考え方に重なる。Fritz & Helgeson(1998)は、自分をおろそかにしてまで他者の問題に深入りする傾向を「非緩和的共同性」(行き過ぎた世話焼き)と名づけた。相関研究の結果、この傾向が強い人ほど抑うつや不安などの心理的苦痛が大きかった。またCrocker & Park(2004)は先行研究を総覧し、他者の承認に自尊心を預けるほど自尊心が揺らぎやすく、人間関係も損なわれやすいと論じた。ただし手放すことは突き放すことではなく、相手が求めたときには援助する姿勢と組み合わせるとよい。迷ったら「この結末を引き受けるのは誰か」と自問することが、心配の荷を軽くする助けになる。 参考:Fritz & Helgeson(1998)「Distinctions of unmitigated commun…」 ↗/Crocker & Park(2004)「The Costly Pursuit of Self-Esteem.」 ↗
「人生において、恐れるべきものは何もありません。あるのは、理解すべきものだけです」

Nothing in life is to be feared, it is only to be understood.

— マリー・キュリー 発言として伝わる

恐怖の多くは「わからないもの」への反応である。ならば、恐れの処方箋は勇気の空元気ではなく、理解 ── 放射能という未知に生涯を捧げ、二度のノーベル賞に至った科学者の、恐怖と知の関係についての定式

心理学では
キュリーの言葉は、心理学でいう「不確実性への非耐性」(先が分からない状態を強く嫌う傾向)と、その乗り越え方の要点を突いている。Carleton(2016)は不安研究を幅広く検討したレビューで、「未知への恐れ」が多くの恐怖や不安の根にある基本的な恐れだと論じた。またde Berkerら(2016)は電気刺激を用いた実験で、刺激が来るかどうか予測しにくい状況ほど、主観的なストレスや生理的なストレス反応が強まることを示した。分からないこと自体が、人を身構えさせ、消耗させるのである。心配ごとが浮かんだら、分かっていることと分かっていないことを書き出し、調べられることから調べる。その小さな理解の積み重ねが、恐れを扱える大きさに変える助けになる。 参考:Carleton(2016)「Fear of the unknown: One fear to r…」 ↗/de Berkerら(2016)「Computations of uncertainty mediat…」 ↗
人物
ポーランド出身の物理学者・化学者(1867-1934)。女性初のノーベル賞、史上初の2分野受賞

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名言の収集・分類・解説はAI(Claude)を活用し、はぴテックが確認したものです。「出典に諸説あり」の名言は、その人物の言葉として流通しているものの一次資料での確認が難しいもの、「要旨」は趣旨を短くまとめたものです。心理学の補足は、名言の知恵を心理学・幸福研究の知見で読み解いたもので、引用した論文は学術データベースで実在を照合しています。 解説付き全選(PDF) / 一覧(Excel)
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