2026.10.21
一人でも「人のそば」にいるだけで幸福度は上がる
「一緒にいる」と「周りにいる」の違いについての、アメリカの最新研究。
シカゴの高齢者352人に、1日5回スマホで「今の気分」を聞いて、12,860回分のデータを集めた研究です。
面白いのは「一人」を2つに分けたこと。
①完全に一人(周りに誰もいない)
②一人だけど、周りに人はいる
(カフェで一人、待合室で一人、家族が別の部屋にいる、とか)
結果としては、
- 誰かと一緒にいると幸福度アップ(これは想定通り)
- でも、一人でも「周りに人がいるだけ」で幸福度アップ
- その効果、なんと「趣味の活動をしている」や「屋外にいる」より大きい
- 一番高いのは「誰かと一緒+周りも賑わってる」とき
さらに、
「一人だけど周りに人がいる」は、
「連れと二人きり」と統計的に区別できないくらいの幸福度でした。
周りが顔なじみだと、なおさら良いみたい。
誰かと約束して会うのはエネルギーがいりますが、
「人のいる場所に身を置くだけ」なら今日からできる。
- 在宅仕事に疲れたら、カフェや図書館で作業してみる
- 一人ランチも、賑わうお店を選んでみる
- 家族と同じ家の中に「別々にいる」時間も、実は悪くない
という感じでしょうか。
無理に交流しなくても、人の気配の中にいるだけで、私たちはちょっと幸せになれるようです。
Happiness Loves Company? Positive Affect and the Momentary Social Context
幸せは人の集まりを好む?ポジティブ感情とその瞬間の社会的文脈
Alyssa W. Goldman & Sara M. Moorman(ボストンカレッジ、アメリカ)
Socius: Sociological Research for a Dynamic World, 2026
https://doi.org/10.1177/23780231261483803
一人でも「周囲に人がいる」だけで幸福感は高まる? 日常の社会的文脈と感情の関係 日常の社会的文脈が、個人のポジティブ感情(幸福感やエネルギー)に与える影響。 直接の交流がなくても、「周囲に人がいる」という状況は幸福感を高める。 2つの異なる【社会的状況】の定義 「一緒(With)」:目的を持った直接的な交流 会話や食事などとともに、直接的な関係性を共有している状態。 「周囲(Around)」: 空間を共有する背景としての他者 直接対話はしなくても、同じ空間や背景に他者が存在する状態。 社会的文脈ごとのポジティブ感情 (幸福感・充実感・活力)の予測値比較 1. 一人+周囲に誰もいない(完全孤独) 最も低い 2. 一人+周囲に人がいる(サードプレイス等) 明確に上昇 3. 人と一緒+周囲に誰もいない 高い 4. 人と一緒+周囲にも人がいる 最も高い 社会的状況がポジティブ感情に与える影響 完全に一人より 「周囲に人がいる一人」の 方が幸福感が高い 他者と直接的な関わりからの 気分を感じるだけで気分向上する。 「直接の一緒+周囲に人がいる」 組み合わせで幸福感は 最も高くに! 同行者がある人がいると 身を置くことで感情が高まり大化する。 「周囲に人がいる」効果は 屋外やショッピング活動に顕著 種に人がいる空間へ できるだけ進出することで、 明確な気分転換効果を持つ。 幸せは「そば」にある 最新研究が明かす、完全な孤独でも、密な交流でもない「第3の心地よい居場所」 Based on Goldman & Moorman (2026), "Happiness Loves Company? Positive Affect and the Momentary Social Context" 「一人」か、「誰かと一緒」か。 幸せの条件は2つだけではありません。 完全な孤独(一人でいる)=辛い、不健康 直接的な交流(誰かと話す)=幸せ、健康 これまでの社会や研究は、「誰かと一緒にいること(交流)」の重要性を強調し、「一人でいること(孤独)」を悪としてしまいました。しかし、最新の社会学研究は、私たちの日常には、そのどちらでもない「豊かな時間」が存在することを証明しています。 つながりの「波紋」を理解する 幸福度に影響を与えるのは、直接話をしている相手(同伴者)だけではありません。あなたの周囲を取り巻く「環境としての他者」もまた、心の状態に大きな影響を与えています。 自分(Self) 同伴者(With others) 目的を持って一緒にいる相手 周囲の人々(Around others) 直接的な関わりを持たない人々 Genius Notebook 4つの社会的文脈 シカゴに住む352名の高齢者を対象にした調査では、人々の日常的な感情の動きを、この4つの状態に分類してリアルタイムに追跡しました。最も注目すべきは、右下の「公衆の中の孤独」という状態です。 闊じた交流 (With others, no others around) 例:自宅で家族と過ごす 完全な孤独 (Alone, no others around) 例:自宅に一人でいる 闊かれた交流 (With others, around others) 例:友人とレストラン食事 公衆の中の孤独 (Alone, others around) 例:カフェで一人読書する 周囲の人の有無 (Around others) (文字なし) 「ただ周りに人がいるだけ」で、幸福度はジャンプする 完全な孤独(左端)から、ただ「周囲に人がいる空間」に移動するだけで、 ポジティブな感情(幸福感、満足感、活力)は有意に上昇します。 無理に誰かと話さなくても、他者の気配を感じるだけで心は満たされるのです。 大きな飛躍 誰もいない・一人 周囲に人がいる・一人 誰もいない・同伴者あり 周囲に人がいる・同伴者あり Gemma Notebooks 趣味を楽しむよりも、外の空気を吸うよりも。 驚くべきことに、「一人のまま、周囲に人かいる環境(カフェや図書館など)」に身を置くことの幸福度上昇効果は、単に趣味をしたり、屋外に出たりする効果を上回ることがデータで示されています。 趣味をする +0.039 pt 周囲に人かいる空間にいる +0.047 pt 屋外に出る +0.039 pt なぜ「アンビエントなつながり」は心に効くのか? 直接的な交友関係は幸せをもたらす一方で、気遣いやストレス(心理的コスト)を生むこともあります。周囲に人がいるだけの状態は、焦わしい義務感なしに「社会とのつながり」や「安心感」だけを享受できる、非常にコストパフォーマンスの良い心の回復手段なのです。 帰属意識 Sense of Belonging 低プレッシャー Low Obligation/Stress 安心感 Potential for Assistance 適度な刺激 Novel Stimuli Gemma Notebook 魔法の距離感:「見知った顔」 研究では、周囲にいるのが「顔見知り」である場合、幸福度がさらに高まることが分かりました。 挨拶を交わす程度のカフェの店員、よくすれ違う犬の散歩をしている人など。彼らは友人ではありませんが、平凡な日常に「さらやかな彩り」と「嬉かなつながり」を与えてくれる重要な存在です。 完全な見知らぬ人 (Strangers) 見知った顔 (Fringeships) 親しい友人 (Friends) 最大の幸福度ブースト! Gemma's Notebook 3つの「心の居場所」を使い分ける 常に誰かと交流する必要はありません。人間関係に少し疲れた時、あるいは一人きりで寂しさを感じた時は、「公衆の中の孤独」という第3の選択肢を意識的に選んでみましょう。 完全な孤独 公衆の中の孤独 積極的な交流 心理的コスト (ストレス・気遣い) ゼロ ほぼゼロ 中~高 得られる幸福感 低 中~高 最高 社会的な帰属意識 無し 適度にある 強くある 適した場所の例 自宅の自室 カフェ、図書館、公園 レストラン、パーティ Genesis Notebook 「ホーム・アローン」の新しい意味 興味深いことに、「一人だけ周囲に人がいる」という状態の多くは自宅で報告されています。 家族やパートナーと同じ空間にいながら、別々のことをして過ごす時間。直接会話をしていなくても、 互いの気配を感じ合うだけで、それは豊かな「社会的つながり」として機能しています。 気配(淡数)の重なりエリアエントとなっていがり 気配(淡数)の重なりエリアエントとなっがり Germana Notebooks 「一人でいられる空間」をデザインする 【個人の方へ】 孤独を感じたら、無理に約束を取り付ける必要はありません。まずは街のカフェや図書館に出かけてみましょう。 【コミュニティ形成・都市計画に関わる方へ】 人々が「会話を強要されず、ただそこに居られる」サードプレイス(公園のベンチ、読書室など)の拡充が、人々のウェルビーイングを根本から底上げします。 つながりは、無理に結ぶものではなく、 ただそこに「漂う」もの。 孤独を恐れる必要も、交流を強要される
動画解説はこちら😊
https://youtu.be/0wkBGZ1vfeo
本研究のウェルビーイング小話はこちら😊
はぴテク相談室:ひとり時間、「誰かがいる場所」で過ごしてみる?
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-10-21-1792588141/
【研究背景】
■ はじめに:この論文が立っている土台
この論文(Goldman & Moorman, 2026)は、「人と一緒にいること」ではなく「人が周りにいること」が、高齢者のその瞬間のポジティブ感情(幸せ・満足・元気といった前向きな気分)にどう関わるかを調べたものです。研究の問いにたどり着くまでに、著者らはいくつかの先行研究の流れを整理しています。以下、その流れを順に追います。
■ 1. 出発点:孤立・孤独の害と、「人と一緒にいる」ことの価値
▼ 孤立・孤独は健康リスクとして注目されている
▼ 「一緒にいる」とポジティブ感情が高い
▼ なぜ一緒にいると良いのか:先行研究が挙げる経路
▼ 重要なポイント
■ 2. 「一緒にいる」と「完全にひとり」の中間:新しい概念の芽
著者らが注目するのは、「一緒にいるわけではないが、周りに人はいる」という状態です(例:ひとりで買い物をする、ひとりで病院の待合室で待つ)。この中間的な社会状態については、まだ研究が始まったばかりです。
ただし著者らによれば、こうした状態での健康や幸福感は、まだ十分に調べられていません。
■ 3. 「周りに人がいる」状況はどこで起こるか
▼ 自宅
▼ サードプレイス(第三の場所)
■ 4. なぜ「周りに人がいるだけ」でポジティブ感情が高まりうるのか
▼ 従来の説明は「直接の関わり」を前提にしていた
▼ 直接の交流にはコストもある
▼ 周囲の人の存在そのものが効く可能性
▼ 周りの人が「知っている人」か「知らない人」か
■ 5. なぜ高齢者に注目するのか
▼ 高齢者は孤立の懸念が特に高く、機会も多い
▼ 「一緒にいる・周りにいる」が常に良いとは限らない
▼ それでも、高齢者にとって「周りに人がいる」ことは良い方向に働きうる
■ 6. 研究手法と「ポジティブ感情」を選ぶ理由
▼ EMA(生態学的瞬間評価)という方法
▼ ポジティブ感情が重要とされる根拠
▼ データの文脈に関する先行知見
■ まとめ:先行研究の空白と本研究の問い
【研究内容】
■ この研究が扱う問い:「一緒にいる」と「周りにいる」は違うのか
▼ 背景
孤独や社会的孤立が健康に悪いという証拠が増えるなか、「誰かと一緒に過ごす時間」を増やす取り組みに関心が集まっています。先行研究では、人と一緒にいるときは一人でいるときより「ポジティブ感情」(うれしい、満足、元気といった前向きな気分)が高いことが繰り返し示されてきました(Csikszentmihalyi & Hunter (2003) など)。
ただ、これまでの研究が注目してきたのは主に「人と一緒にいる(with others)」状態、つまり食事や会話や用事などを目的をもって共にする「社会的同伴」でした。
Goldman & Moorman (2026) はもう一つの状態に目を向けます。それが「人の周りにいる(around others)」状態です。これは、同じ空間に他の人はいるけれど、その人たちは自分の相手ではなく、いわば背景や雰囲気の一部である状態を指します。たとえば一人で買い物をしている、一人で病院の待合室に座っている、といった場面です。
Weinstein, Hansen, & Nguyen (2023) が「公共の中の孤独」、Campbell & Ross (2022) が「社会的な一人状態」と呼んだように、完全な孤独と同伴の中間にある状態は近年注目され始めていますが、それがウェルビーイングとどう関係するかはあまり調べられていません。
▼ なぜ「周りに人がいる」だけで気分が良くなりうるのか
著者らは次のような理由を挙げています。
▼ なぜ高齢者か
高齢者は社会的孤立の懸念が特に高い集団です。退職後はサードプレイスにいる機会が増える可能性がある一方、一人の時間を自ら求める傾向も強い(Lay et al. (2020))ため、「同伴とは別に、周りに人がいることの効果」を検討するのに適した集団だと著者らは位置づけています。ただし、完全な孤独を好む高齢者もいること、見知らぬ人が不安を生むこと、健康状態や安全への不安が社交を妨げることも指摘されており、効果が常にプラスとは限らないと注意しています。
▼ 研究の問い
補足分析として、周りの人が顔見知りかどうかの役割も検討しています。
■ データと方法
▼ データ
シカゴの10地区に住む高齢者を対象とした CHART 研究(Chicago Health and Activity Space in Real-Time)のデータを使用しました。2018〜2019年に収集されたものです。参加者はGPS付きスマートフォンを渡され、約5〜6か月間隔で3回、それぞれ1週間ずつ携帯しました。1日5回、決められた時間帯(8〜10時、10時半〜12時半、13〜15時、15時半〜17時半、18〜20時)の中のランダムな時刻に通知が届き、「その瞬間」の気分や状況について短い質問に答えます。
これは「生態学的瞬間評価(EMA)」と呼ばれる方法で、日常生活のその場での状態を記録するため、後からの思い出しに頼らずに気分の変動を捉えられます。
最終的な分析対象は352人、12,860件のEMAです。1人あたり平均37件(中央値32件)を回答しました。回答率は各ウェーブで約50%で、若い人・学歴の高い人ほど回答数が多く、黒人の回答者は平均して回答数が少なかったため、これらの属性と総回答数をモデルで調整しています。
▼ 測定
これらを組み合わせて、4分類(一人・周りに誰もいない/一人・周りに人がいる/一緒・周りに誰もいない/一緒・周りにも人がいる)と、顔見知りの区別を加えた6分類を作りました。なお「一人・見知らぬ人が周り」は536件(4%)、「一人・顔見知りが周り」は597件(5%)と少ないため、6分類の結果は慎重に解釈すると明記しています。
▼ 調整した変数
EMAレベル:屋内か屋外か、自宅か外か、娯楽活動(くつろぎ、趣味、運動、社交、宗教・団体活動、ボランティア)をしていたか、義務的活動(身の回りの世話、睡眠、介護、家事、仕事、医療受診)をしていたか、時間帯、月。
個人レベル:性別、黒人かどうか、ヒスパニックかどうか、学歴、年齢、独居かどうか、自己評価の健康、自己評価の精神的健康、日常生活動作(食事・着替え・トイレ・入浴・起床の困難さ)。
▼ 分析
1人が複数のEMAに答えているため、EMA(レベル1)を個人(レベル2)に入れ子にした「マルチレベルモデル」を使いました。日単位の3層モデルも試しましたが、日による分散はほぼゼロだったため2層にしています。無条件モデルでは、ポジティブ感情の分散の約60%が個人間、約40%が個人内(瞬間ごとの変動)でした。
重要な工夫として、社会的文脈の変数を「個人内成分」と「個人間成分」に分けています(Curran & Bauer (2011))。個人内効果は「その人の普段と比べて、周りに人がいる瞬間は気分がどう違うか」を、個人間効果は「普段から周りに人がいることが多い人は、少ない人と比べて気分がどう違うか」を表します。著者らは主に個人内効果に注目しています。
■ 結果
▼ 記述統計
図3 高齢者が回答した約1万3千件の「その瞬間」のうち、最も多かったのは完全に一人の状態で全体の約4割。次いで誰かと一緒で周りに顔見知りがいる状態が多かった。
Goldman & Moorman(2026)の本文「Descriptive Statistics」の節(Supplemental Table 1に基づく記述)の数値をもとに、はぴテックが作図。出典:Goldman & Moorman (2026). Socius: Sociological Research for a Dynamic World, 12. https://doi.org/10.1177/23780231261483803
▼ 問い1:それぞれ独立に関連するか(モデル1)
個人内効果を見ると、
個人間効果では、普段から人と一緒にいることが多い人ほどポジティブ感情が高い(b = .294, p < .01)一方、普段から周りに人がいることが多いかどうかは有意ではありませんでした。著者らは、周囲の人の影響は瞬間単位でより観察されやすいのかもしれないと述べています。
▼ 問い2:組み合わせで見る(モデル2)
「一人・周りに誰もいない」を基準にすると、
と、いずれも有意に高いポジティブ感情と関連しました。
表1 社会的文脈とポジティブ感情の関連(マルチレベルモデルの係数)
誰かと一緒にいる瞬間も、周りに人がいるだけの瞬間も、その人の普段より気分が高い。一人でも周りに人がいれば完全な孤独より高く、最も高いのは一緒にいてかつ周りにも人がいる瞬間だった。
注:従属変数はポジティブ感情(0〜3の3項目平均)。個人内効果=その人の普段と比べた瞬間ごとの差、個人間効果=普段からその状態が多い人と少ない人の差。括弧内はクラスター頑健標準誤差。時間帯・月・屋内外・自宅か・活動内容・総回答数・性別・年齢・人種/民族・学歴・独居・自己評価健康・自己評価精神的健康・ADLを調整。*p < .05、**p < .01、***p < .001(両側)。N=12,860 EMA、352人。
Goldman & Moorman(2026)のTable 2(Model 1, Model 2)の数値をもとに、はぴテックが作成。出典:Goldman & Moorman (2026). Socius: Sociological Research for a Dynamic World, 12. https://doi.org/10.1177/23780231261483803
図1 完全に一人の瞬間と比べたポジティブ感情の高さ。一人でも周りに人がいれば気分は高く、誰かと一緒でかつ周りにも人がいる瞬間が最も高かった。いずれも統計的に有意。
Goldman & Moorman(2026)のTable 2(Model 2)および本文「結果」の節の数値をもとに、はぴテックが作図。出典:Goldman & Moorman (2026). Socius: Sociological Research for a Dynamic World, 12. https://doi.org/10.1177/23780231261483803
係数の差の検定では、「一人・周りに人がいる」と「一緒・周りにも人がいる」の差はぎりぎり有意(χ² = 3.84, p = .05)、「一人・周りに人がいる」と「一緒・周りに誰もいない」の差は有意ではありませんでした。
大きさの目安として、「一人・誰もいない」と「一人・周りに人がいる」の差(.047)は、娯楽活動をしていること(.039)や屋外にいること(.039)の差より大きく、「一人・誰もいない」と「一緒・周りにも人がいる」の差(.093)は、他のEMAレベル変数の差の2倍以上でした。
▼ 補足分析
顔見知りについて:
図2 周りにいる人が顔見知りかどうかを区別した補足分析。誰かと一緒で周りに顔見知りがいる瞬間が最も高く、一人でも顔見知りが周りにいれば高い傾向(p=.051)が見られた。
Goldman & Moorman(2026)のSupplemental Table 3(Model 2)、本文「Additional Analyses」の節の数値をもとに、はぴテックが作図。出典:Goldman & Moorman (2026). Socius: Sociological Research for a Dynamic World, 12. https://doi.org/10.1177/23780231261483803
ネガティブ感情(イライラ、疲れ、ストレス、痛み、孤独の平均)について:
項目別:
感度分析として、10件以上回答した人に限っても結果は同様で、直前のEMAのポジティブ感情を調整しても結果は頑健でした。一方、直前の社会的文脈がその後のポジティブ感情を予測することはありませんでした。
■ 考察
▼ 何が分かったか
屋外か、自宅か、娯楽活動中かを調整しても「周りに人がいる」効果が残ったことから、著者らは、意図的な同伴でなくても周りに人がいること自体が所属感や「社会に参加している感覚」につながりうると考えています。顔見知りが周りにいる場合は、必要なら支援を得られるという感覚を反映しているのかもしれないとも述べています。ただし、これらは著者らの解釈として提示されており、メカニズムが直接検証されたわけではありません。
▼ 「一人でいる」ことの捉え直し
この研究は「一人」という状態の多義性を示しています。完全な孤独の瞬間が最もポジティブ感情が低かった一方、「群衆の中で一人」の瞬間はそうではありませんでした。先行研究でも、一人の時間は必ずしも悪い状態ではなく、望ましい場合もあると示されており(Ren, Wesselmann, & van Beest (2021) など)、本研究はそれと整合的です。
注意点として、「一人・周りに誰もいない」の90%、「一人・顔見知りが周り」の78%は自宅で記録されたものでした。自宅外で一人かつ顔見知りが周り、というEMAは1%未満で、自宅と自宅外の比較はできません。そのため著者らは、自宅が社会的つながりの重要な場であること、家族が同じ家にいる中で一人で過ごす時間は、孤独の利点と「必要なら相手がいる」という感覚を同時に得られる可能性を指摘しています。なお、独居かどうかは個人レベルの変数として有意ではなく、瞬間の気分は実際の「その場に人がいるか」により左右されるようだと述べています。
▼ 限界
▼ 今後の方向と含意
著者らは、双方向の関係を推定する動的モデル、より長期の縦断研究、高齢者が周囲の人をどう認識しているかの質的研究、周りの人数や顔見知り度の閾値の検討、文化や関係の質による違いの検討を提案しています。
実践面では、人が集まり一緒に・周りに過ごせる公共空間をつくる取り組みに加え、「人の近くでの意味ある一人時間」を促す取り組みも日々の気分を支えうると述べています。共同居住や共有空間を重視した集合住宅といった住まいのかたちも有効かもしれない、としつつ、ランダムに割り当てた社会的環境が個人の傾向を超えて効果を持つかは今後の検証が必要だと結んでいます。