この号の内容
首位は北欧、日本は43位
0〜10で人生を評価するキャントリルの梯子の2010〜12年平均で、首位はデンマーク、続いてノルウェー、スイスである。4位はオランダ(7.512)、5位はスウェーデン(7.480)、6位はカナダ(7.477)、7位はフィンランド(7.389)となっている。米国は17位(7.082)、英国は22位(6.883)、ドイツは26位(6.672)、フランスは25位(6.764)である。アジアではシンガポールが30位(6.546)、韓国が41位(6.267)、台湾が42位(6.221)、日本が43位(6.064)である。
📖 報告書では:第2章、国別順位の図(PDF p.23)
地域差と6つの説明要因
世界全体の平均は5.158で、地域別の最高は北米・豪州・ニュージーランド(7.133)、最低はサハラ以南アフリカ(4.626)である。報告書は、国ごとの生活評価の差の4分の3を6つの変数で説明できるとしている。6つとは、1人当たりGDP、健康寿命、困ったときに頼れる人がいるか(社会的支援)、汚職の認識、寛大さ(寄付)、人生の選択の自由である。比較の基準には、6変数すべてが世界最低の架空の国「ディストピア(Distopia)」(1.977+残差)を置き、各国がそこからどれだけ上回るかを要因ごとに分けて示している。
📖 報告書では:第2章冒頭(PDF p.10)、図2.2(PDF p.22)
生活評価と感情は別物
6変数で説明できる割合(調整済み決定係数)は、生活評価では0.742である。これに対し、前日のポジティブ感情では0.482、ネガティブ感情では0.232にとどまる。所得と健康寿命は生活評価とは強く結びつくが、感情とは有意な関係がない。寛大さは生活評価やポジティブ感情とは強く正に関係する一方、ネガティブ感情とは関係がない。人間開発指数(HDI)と梯子の国平均の相関は0.77で、HDIと感情指標の相関の数倍である。
📖 報告書では:第2章、表2.1(PDF p.11–12、p.20)
中南米が上昇、ユーロ危機国が急落
報告書は、2007〜08年の金融危機の打撃はあったものの、過去5年で世界はわずかに幸福で寛大になったと結論づけている。改善が目立ったのは中南米・カリブとサハラ以南アフリカで、中東・北アフリカは悪化した。南アジアも有意に低下し、地域内の幸福の不平等が拡大している。2005〜07年と比べた低下幅が大きかったのは、エジプト(-1.153)、ギリシャ(-0.891)、スペイン(-0.750)、イタリア(-0.691)である。
📖 報告書では:第2章「Summary and Conclusions」、図2.6(PDF p.29–30)
ユーロ危機4か国の分析
スペイン、イタリア、ギリシャ、ポルトガルの4か国は、梯子の得点が平均で0.659下がった。このうち6変数の変化で説明できたのは平均0.212、失業率の上昇(平均7.6ポイント)で説明できたのは平均0.246である。報告書は、幸福の落ち込みが所得減少と失業増から予想される以上に大きかったとしている。順位の変化は4か国平均で18位下落で、ギリシャは28位下げた。
📖 報告書では:第2章、表2.2・表2.3(PDF p.21)
精神疾患は不幸の最大要因
第3章は、調べられたすべての事例で、心の健康が個人の幸福を左右する単一で最も重要な要因だったと述べる。世界人口の約10%が臨床的なうつ病か重い不安障害を抱えており、これらは障害と欠勤の最大の単一原因である。費用対効果の高い治療があり、回復率は50%以上に達するが、先進国でも治療を受けているのは必要な人の3分の1にとどまる。OECD諸国では、精神疾患のある人がほかの人と同程度に働けば、就業は4%高くなるとしている。
📖 報告書では:第1章(PDF p.5)、第3章「The Cost of Mental Illness」(PDF p.45–46)
幸福の効用と政策への活用
第4章は、感情面で幸福な人、生活に満足している人、幸福な地域に住む人ほど、現在も将来も健康で生産的で、人とのつながりを持ちやすい傾向を示す。そのうえで、幸福と他の側面には双方向の関係があるとしている。第5章は、アリストテレスや仏教の「徳の倫理」への回帰を提唱する。第6章は、健康・交通・教育の例から、ウェルビーイングを軸にした政策づくりがより良い政策につながると結論づけている。第7章はOECDの主観的ウェルビーイング測定ガイドラインを、第8章は人間開発指数との関係を扱う。
📖 報告書では:第1章「Outline of Report」各章要約(PDF p.5–6)
日本の結果
この号の調べ方
主な指標は、ギャラップ世界世論調査のキャントリルの梯子(最悪の人生=0、最良の人生=10で現在の生活を評価する質問)である。各国で毎年約1,000人に聞いており、2010〜12年の3年分を平均して、1か国あたり約3,000人の標本にしている。変化は2005〜07年平均との比較で測る。前日に笑ったか・楽しんだか・幸せだったかを数えたポジティブ感情と、心配・悲しみ・怒りを数えたネガティブ感情(各0〜3)も併せて分析している。
この号から言えること
- 生活評価は所得や健康寿命など暮らしの条件とよく対応するが、前日の感情はそうではない。このため報告書は、国際比較の主指標に生活評価を使っている。
- 世界平均がゆっくりとしか動かない裏で、中南米・アフリカの改善とユーロ危機国・中東の悪化が同時に進んでいる。
- ユーロ危機4か国では、所得と失業だけでは説明しきれないほど生活評価が落ち込んだ。
- 精神疾患は治療で回復が見込めるのに、先進国でも治療を受けているのは3分の1にとどまる。この点が本号の政策上の主な訴えである。
読むときの注意
報告書自身が、変化や説明の分析は暫定的な結論だと断っている。6変数による分解は、国ごとの差との相関の関係を示すもので、各国について因果を確かめたものではない。順位は3年平均の推定値で、近い得点の国どうしの順位の差には誤差の幅がある。