この号の内容
上位10か国は西側の中小国
キャントリルの梯子(0=最悪の人生、10=最良の人生として、自分の今の人生を評価する質問)の2013〜15年平均で、首位はデンマーク、2位はスイス、3位はアイスランド、4位はノルウェー、5位はフィンランドである。上位10か国は今回もすべて西側の中小規模の工業国で、そのうち7か国は西欧にある。上位10か国の平均は7.4、下位10か国の平均はその半分に満たない3.4で、両者の差は約4点である。11位から20位になると顔ぶれは多様になり、10地域のうち4地域の国が入る。
📖 報告書では:第2章「Summary and Conclusions」(第2章PDF p.33)、図2.2「Ranking of Happiness 2013-2015」
6つの要因で国の差の4分の3
上位10か国と下位10か国の約4点の差のうち、4分の3超は6つの要因の違いで説明される。6つの要因とは、1人当たりGDP、健康寿命、社会的支援(困ったときに頼れる人がいるか)、人生の選択の自由、寛容さ(最近の寄付)、腐敗のなさ(政府や企業に腐敗がないと感じるか)である。このうち寄与が大きいのは、1人当たりGDP、社会的支援、健康寿命の3つである。ポジティブ感情とネガティブ感情(前日に経験した感情)を説明に加えると、有意に寄与するのはポジティブ感情だけである。ポジティブ感情は、自由と社会的支援の効果を伝える重要な経路になっているとみられる。
📖 報告書では:第1章「Chapter 2: The Distribution of World Happiness」(第1章PDF p.2–3)、第2章「Summary and Conclusions」(第2章PDF p.33)
約10年で55か国上昇、45か国下落
2005〜07年から2013〜15年にかけて、126か国の変化を比べた。生活評価が有意に上がった国は55か国、有意に下がった国は45か国である。上昇した国が多いのは、中南米、独立国家共同体(旧ソ連諸国)、中東欧である。一方、西欧では下落した国が多く、程度は小さいがサハラ以南アフリカと中東・北アフリカも同様である。下落幅が最も大きいのはギリシャ(-1.294)で、エジプト(-0.996)が続く。報告書は、制度や社会の基盤がしっかりした国では、危機がかえって社会の結びつきを強めることがあると指摘している。
📖 報告書では:第2章「Summary and Conclusions」(第2章PDF p.33)、図2.3「Changes in Happiness from 2005-2007 to 2013-2015」(Part 3、第2章PDF p.20)
幸福の格差が世界で拡大
この号の最大の新機軸は、国内の幸福度の不平等を、生活評価の標準偏差(平均からのばらつきの大きさ)で測ったことである。2005〜11年と2012〜15年を比べると、世界全体、10地域のうち8地域、調査国の半数超で、ばらつきが有意に広がった。有意に縮んだのは10分の1未満の国にとどまり、縮んだ地域は1つもない。ばらつきの縮小幅が最も大きいのはパキスタン(-0.425)で、アイスランド(-0.376)が続く。世界全体の分布は中央値5を中心にほぼ正規分布で、人口加重平均は5.4である。世界全体より不平等が大きい地域は、中東・北アフリカと中南米・カリブの2つだけである。
📖 報告書では:第1章(第1章PDF p.2–3)、第2章「Summary and Conclusions」(第2章PDF p.34)、図2.5・図2.7
格差が小さい社会ほど平均も高い
報告書は、幸福の格差が小さい社会に住む人ほど幸福度が有意に高いという研究結果を示している。そのうえで「幸福の不平等が大きいほど平均的な幸福度が下がる証拠がある」と結論づけているが、これは暫定的な証拠と位置づけている。また報告書は、幸福の不平等は所得や富の不平等よりも広い不平等の尺度になると主張する。所得の格差を縮めるには再分配が必要になるが、幸福は誰かの幸福を減らさずに底上げできる。報告書はこの点を、幸福の格差に注目する利点として挙げている。
📖 報告書では:第1章「Conclusion」(第1章PDF p.6)、第2章「Summary and Conclusions」(第2章PDF p.34)
倫理・SDGs・ローマ特別版
第3章(レイヤード)は、宗教的倫理の影響が弱まっていることを補うものとして、「最大幸福の原理」に基づく世俗的倫理を提案している。具体例として、人々が定期的に集まり支え合う組織「Action for Happiness」を挙げている。第4章(サックス)は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成度を示す指標(SDG指数)が、1人当たりGDPと失業率を考慮した後でも国ごとの幸福度の差の説明に役立つと示した。一方、経済的自由の指標には説明力がなかった。幸福担当大臣を置いた国は、ブータン、エクアドル、アラブ首長国連邦、ベネズエラの4か国である。別冊のローマ特別版には5本の論文が収められ、その1本は調査国の3分の2で「親であること」と生活満足度の間に負の関係があることを報告している。
📖 報告書では:第1章「Chapter 3」「Chapter 4」「The 2016 Special Rome Edition」「Conclusion」(第1章PDF p.3–6)
日本の結果
この号の調べ方
データはギャラップ世界世論調査(Gallup World Poll)で、150を超える国でそれぞれ年およそ1,000人に、キャントリルの梯子の質問をしている。国別順位は2013〜15年の3年平均で、1か国あたりの標準的なサンプルは約3,000人、対象は157か国である。国ごとの差は、2005〜15年の各国の年平均を6つの要因で説明する分析で示している。幸福の格差は国内の生活評価の標準偏差で測り、2005〜11年と2012〜15年を比較している。
この号から言えること
- 今号の主役は平均ではなく「ばらつき」である。世界の大半の地域と半数超の国で、幸福の格差が有意に広がった。
- 国ごとの幸福度の差の4分の3超は、1人当たりGDP・社会的支援・健康寿命などの6要因で説明される。
- 日本の平均点は53位と中位だが、約10年での下落幅(-0.446)は大きい側に入る。一方、国内のばらつきはわずかに縮小方向である。
- 報告書は、幸福の格差が小さい国ほど平均的な幸福度も高い傾向を示し、幸福の格差を所得格差より広い不平等の尺度として提案している。
読むときの注意
6要因による説明や、格差と平均幸福度の関係は国際比較による関連であり、報告書自身も格差の影響については「暫定的な証拠」としている。各国の点数と順位には95%信頼区間があり、点数が近い国の順位の差は確定的なものではない。日本の標準偏差の変化(-0.052)が統計的に有意かどうかは、元資料には示されていない。