この号の内容
首位はノルウェー、上位4か国は僅差
ノルウェーは2016年の4位から首位に上がり、デンマーク、アイスランド、スイスが続いた。報告書によると、この4か国の差は各国平均約3,000人の標本でも統計的に有意ではない。5位はフィンランドで、オランダ、カナダ、ニュージーランドが続き、オーストラリアとスウェーデンは2014〜16年のスコアが小数第3位まで同じで9位に並んだ。上位10か国はいずれも中小規模の西側工業国で、うち7か国が西ヨーロッパにある。上位10か国の平均は7.4点、下位10か国の平均はその半分に満たない3.4点である。公式ページは、ノルウェーが石油をゆっくり生産し、収益を将来に投資してきた点を挙げ、それを支えるのは相互信頼や良い統治だと述べている。
📖 報告書では:公式ページ冒頭/第1章 p.3/第2章「Conclusions」報告書p.37(PDF p.30)、図2.2
社会的基盤の効果は所得を上回る
国による幸福度の差の4分の3は、6つの変数で説明される。6つとは、1人当たりGDP、健康寿命、社会的支援(困ったときに頼れる人がいるか)、人生の選択の自由、寛容さ(最近寄付したか)、腐敗のなさである。報告書の試算では、4つの社会的変数を最低水準から世界平均まで引き上げると、生活評価は1.97点上がる。内訳は、頼れる人が1.19点、自由が0.41点、寛容さが0.25点、腐敗の少なさが0.12点である。頼れる人の効果だけで、最貧3か国の1人当たり所得を約600ドルから約1万ドルへ16倍にする効果と等しい。さらに上位3か国の水準まで引き上げると1.27点が加わり、合計3.24点になる。これに対し、健康寿命を最低から上位3か国の水準へ34年延ばす効果は0.98点、GDPを600ドルから10万ドルにする効果は1.78点と試算されている。
📖 報告書では:第2章 報告書p.37(PDF p.30)付表18への言及/第1章 p.3–4
米国の幸福低下は社会的要因
米国のキャントリルの梯子(0〜10で人生を評価する質問)の平均は、過去10年で0.51点下がった。6つの要因のうち、所得と健康寿命は幸福を高める方向に動いた。一方、社会的支援、個人の自由の感覚、寄付、政府や企業の腐敗のなさという4つの社会的変数はすべて悪化した。4つの社会的要因の悪化で0.31点分が説明され、所得と寿命の改善による押し上げは0.04点にとどまった。全体の低下のほぼ半分は6要因では説明できない。第7章は、米国の幸福低下の主因は経済ではなく社会的要因だと結論づけている。
📖 報告書では:第7章「Restoring American Happiness」(報告書p.178〜)/第1章 p.6/公式ページ
中国:GDP5倍超でも幸福は戻らず
中国のGDPは過去四半世紀で5倍以上になった。一方、主観的幸福(本人が感じる幸福)は1990年から約2005年まで15年間下がり続け、その後回復に転じた。それでも現在の水準は、平均すると25年前を下回っている。この章はリチャード・イースタリン(Richard A. Easterlin)らが執筆した。章は、失業の増加と社会的セーフティネットのほころびが前半の低下を、その両方の回復が後半の持ち直しを説明すると示している。
📖 報告書では:第3章「Growth and Happiness in China, 1990-2015」(報告書p.48〜)/第1章 p.4
アフリカ:「幸福を待つ」人々
第4章は、アフリカ諸国の生活評価が世界の他地域より全般に低い理由を探っている。出発点は、植民地支配からの独立を前にした1960年代のナイジェリアの人々の声である。キャントリルの調査で、彼らは暮らしを良くするには多くの変化が必要だと答えていた。50年後の社会指標からみると、多くの国の人々はまだその変化を待っている状態にある。多くの市民は民主主義を最良の制度とみなす一方で、自国の統治には批判的である。それでも、特に若者を中心にアフリカの人々は楽観的だと報告されている。
📖 報告書では:第4章「‘Waiting for Happiness’ in Africa」(報告書p.84〜)/第1章 p.4–5
心の健康と仕事が個人差を左右
世界の幸福度のばらつきのうち80%は国の内部で生じている。第5章は米国、オーストラリア、英国、インドネシアの調査を分析した。西側3か国では、診断された精神疾患が所得、雇用、身体疾患よりも重要だった。インドネシアでは精神疾患も影響するが、所得ほどではない。どの国でも、身体の病気が精神疾患より大きな不幸の要因になることはなかった。英国の追跡データでは、子どもの感情面の健康と行動のほうが学業成績よりも大人になってからの生活満足をよく予測し、それを最もよく予測するのは母親の心の健康だった。第6章は、就業者が失業者よりも人生をはるかに高く評価すること、失業にはほとんど慣れないことを示した。また、肉体労働は幸福度の低さと相関していた。
📖 報告書では:第5章(報告書p.122〜)・第6章(報告書p.144〜)/第1章 p.5–6/公式ページ
日本の結果
この号の調べ方
分析の中心は、ギャラップ世界世論調査(Gallup World Poll)の生活評価である。150か国以上で毎年各国約1,000人が回答しており、2014〜16年の3年分を平均すると、典型的な国の標本は約3,000人になる。これを155か国について順位づけた。6つの変数は幸福度の算出には使っておらず、国ごとの差を説明するために使っている。順位の図には、全変数が世界最低の架空の国「ディストピア」(1.85点)と残差も示されている。
この号から言えること
- この号の主張の柱は社会的基盤である。頼れる人がいること一つの効果が、最貧国の所得を16倍にする効果に匹敵すると試算されている。
- 米国では所得と寿命が改善したにもかかわらず、社会的支援や信頼の悪化とともに幸福が0.51点下がった。中国でも、GDPの伸びと主観的幸福は一致していない。
- 豊かな国では、国内での幸福の個人差は所得格差よりも、心の健康や人間関係との関連が大きい。
- 日本は51位で、10年前と比べた変化は-0.447点と、126か国中106番目である。
読むときの注意
上位4か国の差は統計的に有意ではないため、順位の入れ替わりを大きな変化と受け取る必要はない。6つの変数は国の差を「説明する」統計的な要因であり、それぞれの効果は相関に基づく推計である。米国の低下のほぼ半分のように、6要因では説明できない部分も残っている。