この号の内容
首位はフィンランドに交代
総合順位は、ギャラップ世界世論調査(Gallup World Poll)の2015〜2017年の結果をまとめたもので、156か国が対象である。首位はフィンランドに交代したが、上位10か国の顔ぶれは過去2年と同じで、順位が入れ替わったにすぎない。直近4回の報告書では、デンマーク、スイス、ノルウェー、フィンランドと毎回違う国が首位になっている。上位国はどこも、幸福を支える6つの要因(所得、健康寿命、社会的支え、自由、信頼、寛容さ)がいずれも高い。上位国どうしの差は小さく、報告書は年ごとの順位変動は当然起こるとしている。2008〜2010年からの変化では、2015年版で最下位だったトーゴが17位上昇して最大の上昇国となった。最大の下落国はベネズエラで、0〜10の尺度で2.2ポイント下がった。
📖 報告書では:Executive Summary p.1、第1章 p.9
移民の幸福度順位も首位はフィンランド
移民の順位は、2005〜2017年の全データを使い、外国生まれの回答者が100人を超える117か国について作られた。総合順位の上位10か国は、移民の幸福度順位でも上位11位のうち10枠を占めた。典型的な国では、移民と地元生まれの人の幸福度の差は10点満点で0.1点未満である。ただし、最も幸福な国では移民のほうが地元生まれより幸福度が低く、最も幸福度の低い国では逆に移民のほうが高い。
📖 報告書では:Executive Summary p.1–2、第1章 p.9 図1.2、第2章
移民の幸福は移住先でほぼ決まる
報告書によると、移民一人ひとりの幸福度は、移住先の住民の幸福度におよそ0.75、出身国の幸福度におよそ0.25の重みで左右される。つまり、移民は出身国と移住先の平均幸福度の差のおよそ4分の3を得る。残る出身国の影響を報告書は「足跡(footprint)効果」と呼び、その大きさは10〜25%としている。移民が最も多く集まる国は、最も豊かな国ではない。社会や制度による生活の支えがバランスよく整った国である。
📖 報告書では:Executive Summary p.1–2、第1章 p.9
受け入れに寛容な国ほど双方が幸福
ギャラップは新たに「移民受け入れ指数」を作った。地元住民に、国に移民がいること、隣人が移民であること、近親者が移民と結婚することが「良いこと」か「悪いこと」かを尋ねて測る指標である。受け入れ度が1標準偏差高い国では、移民の幸福度が0.1点高い。地元生まれの人の幸福度も平均0.15点高く、受け入れ度の高さは移民と地元生まれの双方の幸福度の高さとほぼ同程度に結びついている。一方、人口に占める移民の割合は、地元生まれの人の平均幸福度と関連が見られなかった。
📖 報告書では:第1章 p.9、p.11、注11・12、Annex(Migrant Acceptance Index)
移住で平均0.47点上昇、ただし損をする人も
第3章は、移民を、出身国にとどまっていて移住を考えているよく似た人たちと比べた。その結果、国際移民は移住によって幸福度(キャントリルの梯子=0〜10で人生を評価する質問)を平均0.47点高めていた。ただし、多数は得をする一方で損をする人も多い。トンガからニュージーランドへの移住希望者を抽選で選んだ実験では、移住した人のほうが残った人より平均して幸福度が低かった。移住後の年数がたっても、幸福度は平均で横ばいである。ドイツの難民は他の移民より0.4点幸福度が低いが、移住前の時点でもすでに大きく低かった。出身国に残された家族は、身内が国外にいると生活満足度とポジティブ感情が高まる。同時に、悲しみ・心配・怒りといったネガティブ感情も強まり、身内が一時的な出稼ぎの場合に特に強い。
📖 報告書では:第1章 p.10–11、第3章
中国の都市移住と中南米の家族
中国では1990〜2015年に都市人口が463百万人増え、そのおよそ半分が農村からの移住者である。同じ期間の世界全体の国際移民の増加は90百万人で、その半分にも満たない。農村から都市への移住者は勤労所得がおよそ2倍になったが、農村にとどまる人より幸福度が低い。報告書は、最大の要因を比較対象(準拠集団)が都市住民に変わったことに求めている。第6章によると、中南米の生活満足度は所得などから予測される水準より大幅に高い。ポジティブ感情の上位10か国のうち8か国が中南米にあり、その源は家族の絆の温かさと強さにあるとしている。最終の第7章は、肥満・オピオイド(鎮痛薬などの依存性薬物)危機・うつ病という3つの健康問題を、主に米国を対象に論じている。
📖 報告書では:第1章 p.6 表1.1、p.10、p.12、第4章、第6章、第7章
日本の結果
この号の調べ方
総合順位は、ギャラップ世界世論調査で各国毎年約1,000人を対象に集めた回答を、2015〜2017年について平均したもので、156か国が対象である。指標は、0(最悪の人生)〜10(最良の人生)で自分の人生を評価するキャントリルの梯子である。移民の順位は2005〜2017年の全データを使い、外国生まれの回答者が100人を超える117か国について算出している。難民キャンプは調査対象外のため、現在の難民の多くは含まれていない。
この号から言えること
- 移民の幸福度は、出身国よりも移住先の社会の質に大きく左右される。報告書は、人が住む社会の質によって幸福は変わりうると結論づけている。
- 受け入れに寛容な国ほど、移民だけでなく地元生まれの人の幸福度も高い。移民の人口比率と地元生まれの人の幸福度には関連が見られなかった。
- 移住は平均では幸福度を上げるが、損をする人も多い。報告書は、移住後に地域で良い人間関係を築けるよう支えることが重要だとしている。
- 中国の都市移住者は所得が約2倍になったのに、農村住民より幸福度が低い。比較対象の変化が幸福の感じ方に影響することを示す事例である。
読むときの注意
上位国どうしの差は小さく、報告書自身が年ごとの順位変動は当然起こるとしている。順位の上下を過大に解釈しないことが必要である。移民の順位は2005〜2017年のデータで、総合順位(2015〜2017年)とは対象期間が異なる。また、元資料では変化を比べる期間の終わりが「2015-2015」と表記されており、誤記を含む。