この号の内容
首位は5年連続フィンランド
2019〜2021年平均の順位では、フィンランドが7.821点で5年連続の首位、2位はデンマーク(7.636)、3位はアイスランド(7.557)である。北欧5か国はすべて上位8位に入り、スイス、オランダ、ルクセンブルクもそこに加わった。フランスは過去最高の20位、カナダは過去最低の15位となり、ドイツは14位、米国は16位、英国は17位である。過去10年で人生評価の伸びが最も大きかったのはセルビア、ブルガリア、ルーマニアで、上昇幅は平均1.4点、2008〜2012年の水準の20%を超える。一方、ベネズエラ、アフガニスタン、レバノンは大きく下がった。典型的な国の人生評価は2011年までわずかに上がり、その後は下がっている。
📖 報告書では:第1章(PDF p.9)、第2章 図2.1「Ranking of happiness 2019-2021」(PDF p.19–20)と要約部分
コロナ禍でも評価は底堅い
2021年のデータは、2020年と同じく人生評価の平均がコロナ禍でも目立って崩れていないことを裏づけた。ただし年齢で差があり、若者の生活満足度は下がり、60歳超では上がったため、全体としてはほとんど変わっていない。心配とストレスはコロナ前と比べて2020年に8%、2021年に4%増えた。ネガティブ感情全体は2020年にコロナ前より約8%高く、2021年には3%高い水準まで戻った。この増加を押し上げたのは心配と悲しみで、怒りではない。個人データでは、コロナ禍によって失業や健康不良がウェルビーイングに与える打撃が大きくなった。
📖 報告書では:第1章(PDF p.9)、第2章 要約(PDF p.49)
善意の急増と信頼の重要性
2021年には、寄付・見知らぬ人への手助け・ボランティアの3つの「向社会的行動」(他人のためになる行動)が、世界のすべての地域で増えた。3指標の平均はコロナ前の水準より約25%高く、伸びをけん引したのは見知らぬ人への手助けである。報告書は、この善意が与える人・受ける人・それを見る人の人生評価を支えたと述べている。また、公的機関への信頼が高く格差が小さい国ほど、2020〜2021年のコロナ死亡が少ない傾向がある。信頼の高さと死亡率の低さの結びつきは、2020年より2021年のほうが強い。
📖 報告書では:第1章(PDF p.9)、第2章 序論(PDF p.17)と要約(PDF p.49)
「幸福」がGDPより語られる
第3章は、書籍の語の出現頻度を記録するGoogle Booksの「Ngram」データベースを使っている。それによると、「happiness」は印刷された語100万語あたり25回以上現れる。2013年以降は「国内総生産(GDP)」より多く使われている。1995年以降、「happiness」の使用頻度は2倍超、「subjective well-being(主観的ウェルビーイング)」は8倍になった。一方、「income(所得)」は1995年以降に相対的な使用頻度が半減している。書籍の中で「World Happiness Report」が言及される回数は「Beyond GDP」の2倍に達した。幸福に関する研究の量は今世紀初めから10倍超に増え、章では150を超える進歩・ウェルビーイング指標の取り組みも検討している。
📖 報告書では:第1章 第3章要約(PDF p.11)、第3章 序論と図3.1(PDF p.56–59)
SNS分析と幸福の生物学
第4章は、英国とオーストリアのツイートから日々・週ごとの感情の動きを測った。その結果は、社会調査で測った感情と非常によく一致した。ただし、生活満足度の質問との関連は弱い。18か国のTwitterデータでは、コロナ禍で不安と悲しみが大きく増え、怒りは減った。第5章によると、一国の中で人々の幸福度の差の約30〜40%は遺伝的な違いで説明され、残りの60〜70%は遺伝子とは独立した環境の影響による。脳では、ぼんやりしているときに働く「デフォルトモードネットワーク(DMN)」の活動が高い人ほどウェルビーイングが低い、という結果が最も一貫している。
📖 報告書では:第1章 第4章・第5章要約(PDF p.11–12)
バランスと調和の初の世界調査
2020年、Gallup世界世論調査で初めて、生活のバランス、心の平穏、穏やかさなどを尋ねる質問が加わった。「穏やかさ」のように気分の高ぶりが小さい前向きな感情は、西洋中心の幸福研究では見過ごされてきた。生活がバランスしていると答えた人の平均割合は、WEIRD諸国(西欧と米国・カナダ・豪州・ニュージーランド)で81.0%、東アジアで71.2%、その他の地域で69.0%である。平穏を感じる人の割合も、WEIRD諸国90.1%、東アジア80.5%、その他79.8%となった。国のGDPと平穏を感じる人の割合の相関は0.48である。ほぼすべての国で、多数派が刺激的な生活より穏やかな生活を好む。バランスと平穏は、世界のどの地域でも満足できる人生に強く寄与している。
📖 報告書では:第1章 第6章要約(PDF p.13)、第6章(PDF p.135–137)
日本の結果
この号の調べ方
主なデータはGallup世界世論調査で、各国で年に通常約1,000人が回答し、重み付けによって人口を代表する平均値を作っている。順位はキャントリルの梯子(自分にとって最良の人生を10、最悪を0として現在の人生を評価する質問)の2019〜2021年の3年平均だけで決まり、各国の推定値には95%信頼区間が示される。ポジティブ感情は前日の笑い・楽しさ・興味深いことの学習または実行の3項目、ネガティブ感情は前日の心配・悲しみ・怒りの3項目について、「はい/いいえ」の平均で測る。コロナ禍の分析には2017〜2021年の個人データを使っている。
この号から言えること
- コロナ禍の2年間でも、世界の人生評価は大きく崩れず、順位の変動も小さい。ただし若者の生活満足度は下がり、高齢者は上がるという年齢差がある。
- 2021年は寄付・手助け・ボランティアがコロナ前より約25%増えた。報告書はこれを「善意のパンデミック」と呼び、続くことに希望を託している。
- 信頼の高い国ほどコロナ死亡が少ない傾向があり、報告書は信頼と善意の重要性がむしろ増したと述べている。
- 「バランス」や「平穏」は東洋的な価値とされがちだが、データ上は西洋の豊かな国で多く見られ、日本は上位ではない。
読むときの注意
報告書は、6つの説明変数による「説明」は相関を示すもので、因果を意味するとは限らないと明記している。印(*)の付いた国は2020・2021年の調査がなく2019年だけの値に基づくため、比較の際には注意が要る(例:6位のルクセンブルク)。第3章の書籍データはコロナ前で終わっており、コロナ禍以降の変化は反映していない。