この号の内容
首位フィンランド、6年連続
図2.1は、2020〜2022年の3年平均の生活評価で各国を順位づけている。上位10か国は1位フィンランド、2位デンマーク、3位アイスランド、4位イスラエル、5位オランダ、6位スウェーデン、7位ノルウェー、8位スイス、9位ルクセンブルク、10位ニュージーランドである。主な国では米国が15位、ドイツが16位、英国が19位、フランスが21位、シンガポールが25位、台湾が27位となった。最下位の2か国は戦争で荒廃したアフガニスタンとレバノンで、生活評価の平均は上位10か国より5点以上(0〜10の尺度)低い。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー 第2章の項(本文p.3/PDF p.5)、図2.1「Ranking of Happiness based on a three-year-average 2020–2022」(PDF p.36–37)
コロナ禍でも落ちない生活評価
報告書によると、生活評価の世界平均は、コロナ禍の2020〜2022年もコロナ前の2017〜2019年と同じ水準にあり、報告書はこれを「驚くほど底堅い」と表現している。報告書は不幸(misery)の指標として、生活評価が4以下の人の割合と3以下の人の割合の2つを追っている。世界全体では、この2つはコロナ禍の3年間にわずかに下がった。幸福の格差は、人口の上位半分と下位半分の幸福の差で測る。この差が小さい国ほど人々の幸福度が高い傾向にある。差は世界全体ではおおむね安定しているが、アフリカの多くの国では広がっている。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー 第2章の項(本文p.3/PDF p.5)
善意の高まりと信頼の役割
2020年、とくに2021年には、善意(benevolence)の高まりが世界中に広がった。2022年のデータでも、向社会的行動(人助け・寄付など他者のためになる行動)はコロナ前より約4分の1多い。新型コロナについては、2020〜2021年に地域内の感染を抑え込もうとした国ほど、死亡率が低く、ウェルビーイングも全体に良かった。2022年はオミクロン株の出現で封じ込めが不可能になり、各国の状況は似通った。それでも3年間の死者総数は、封じ込めを図った国で大幅に少ない。信頼の高い国ほど死亡率が低いという相関は、2022年も続いている。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー 第2章の項(本文p.3/PDF p.5)、第2章本文
ウクライナ・ロシアと人間関係
ウクライナとロシアは、どちらも2020〜2021年には世界的な善意の高まりを共有していた。しかし2022年には、善意がウクライナで急増し、ロシアでは減った。ウクライナの2022年9月の生活評価は、被害の大きさにもかかわらず、2014年の併合直後より高い。報告書は、共通の目的意識、善意、指導部への信頼がこれを支えたとしている。ウクライナでのロシア指導部への支持は、2022年にウクライナ全域でゼロになった。また、6地域にまたがる主要7か国の新しいデータでは、2022年に前向きな社会的つながりと支えが、孤独の2倍多く見られた。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー 第2章の項(本文p.3/PDF p.5)
第1章:幸福を政府の目標に
第1章は、国の幸福を測る自然な方法は、国を代表する標本の人々に「最近の生活にどのくらい満足しているか」を尋ねることだとしている。社会全体で見ると、生活満足度と、アリストテレスのいう「エウダイモニア」(徳ある生き方による善き生)は連動する。一方、個人の水準では両者は一致しないことがある。たとえば、一部のフルタイムの介護者は、徳ある行動をしていても生活満足度がかなり低い。報告書は、平均だけでなく不幸の規模を重視すべきだと主張している。そのための手段として、世界人権宣言の権利保障と、持続可能な開発目標(SDGs)の拡充を挙げる。さらに、すべての政策を「1ドルあたりのウェルビーイング」で評価するよう求めている。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー 第1章の項(本文p.2/PDF p.4)、第1章「The Happiness Agenda: The Next 10 Years」(PDF p.17–23)
第3章・国家の有効性
第3章は、国家の能力を次の5つで測っている。財政能力(資金を集める力)、集合的能力(サービスを提供する力)、法的能力(法の支配)、内戦の回避、抑圧の回避である。国どうしを比べると、5つの指標はいずれも平均生活満足度とよく相関する。5つの特性と所得を使うと、国は「共通利益国家」「特殊利益国家」「弱い国家」の3つに分類できる。平均生活満足度は、共通利益国家で弱い国家より2点(10点満点)、特殊利益国家で弱い国家より1点高い。生活満足度の平均が高い国ほど、満足度の分布も平等である。
📖 報告書では:エグゼクティブ・サマリー 第3章の項(本文p.3–4/PDF p.5–6)、第3章 注34・35
日本の結果
この号の調べ方
国別順位は、Gallup世界世論調査(Gallup World Poll)のキャントリルの梯子(0=考えうる最悪の人生、10=最良の人生として、自分の人生を0〜10で評価する質問)の2020〜2022年の3年平均で決めている。図2.1は各国の平均値に95%信頼区間を添えている。*印の国は2022年の調査がなく、2020年と2021年の調査にもとづく。各国の差を説明する要因としては、1人あたりGDP、社会的支援、健康寿命、人生の選択の自由、寛容さ、腐敗の認識の6つを用いる。比較の基準には、6つの要因すべてで世界最低の値をとる架空の国「ディストピア」を置いている。
この号から言えること
- 危機が重なった2020〜2022年でも、世界の生活評価の平均はコロナ前と同水準で、不幸の指標はむしろわずかに下がった。報告書は、信頼・善意・社会的つながりがこの底堅さの説明を助けるとしている。
- 2022年の向社会的行動はコロナ前より約4分の1多く、善意の高まりは一時的なものにとどまっていない。
- 第4章は、利他的行動と幸福の正の関係を示している。人助けが助けた人自身のウェルビーイングを高め、逆に幸福度が上がった人はより利他的になるという両方向の因果を、実験などの証拠から認め、これを「好循環」と結論づけている。
- 第5章は、ソーシャルメディアを使った幸福の測定の進歩を整理している。データの集め方は、無作為な投稿の分析から、利用者を時間を追って追跡するデジタル・コホート設計へと進んだ。言語の解析は、キーワード辞書から大規模言語モデルへと進んだ。これにより、月単位・地域単位の推計が可能になりつつある。
読むときの注意
順位には誤差の幅がある。図2.1の中位の国々では、順位の95%信頼区間が「34〜61位」「38〜68位」のように広く、47位という順位は近い国々との差を確定するものではない。6つの要因や国家の有効性と幸福の関係は、国どうしを比べた相関である。因果を述べているのは、第4章のように報告書自身が実験などの証拠をもとに結論づけている部分に限られる。