この号の内容
首位フィンランド、米独は後退
順位はキャントリルの梯子(0=最悪の人生、10=最良の人生として今の人生を評価する質問)の2021〜23年平均で決まる。フィンランドが首位を保ち、デンマークがすぐ後に続き、北欧5か国はすべて上位10位に入った。上位20位では変化が大きく、コスタリカが12位、クウェートが13位に新たに入った。チェコ・リトアニア・スロベニアもそれぞれ18位・19位・21位に上がった。報告書は、これらの動きが米国(15位→23位)とドイツ(16位→24位)の後退につながったとしている。上位10か国のうち、オーストラリアとオランダを除く国はすべて人口が比較的少ない国である。
📖 報告書では:第2章 Key Insights(PDF p.13)、図2.1(PDF p.17)、Summary「Overall ranking of happiness」(PDF p.17)、第1章要約(PDF p.7)
若者と高齢者で順位が大きく違う
年齢層別に見ると、国の順位は大きく入れ替わる。米国とカナダでは、60歳以上の順位が30歳未満より50位以上高い。30歳未満では米国62位(6.392)・カナダ58位だが、60歳以上では米国10位(7.258)・カナダ8位である。逆に中東欧では、若者の順位が高齢者より40位以上高い国が多い。60歳以上の首位はデンマーク(7.916)で、フィンランド(7.912)が2位である。30歳未満の最下位はアフガニスタンで、平均は1.827である。
📖 報告書では:第2章 Key Insights(PDF p.13)、図2.2(PDF p.26–27)、図2.3(PDF p.28)、表2.2(PDF p.29–33)
2006〜10年からの地域別の変化
2006〜10年から2021〜23年にかけての変化は国によって大きく異なる。上昇が最も大きかったのはセルビアの1.8点(WHR2013から69位上昇)とブルガリアの1.6点(同63位上昇)である。一方、アフガニスタンは2.6点下がり、WHR2013の下から13番目からWHR2024では最も不幸な国になった。地域別では、中東欧の上昇が最も大きく、その幅はすべての年齢層でほぼ同じだった。CIS諸国(旧ソ連)の上昇はその半分で、東アジアも特に高齢層で大きく上がった。南アジアと中東・北アフリカはすべての年齢層で下がった。米国・カナダ・豪州・NZのグループも大きく下がり、若者の低下幅は高齢者の2倍だった。30歳未満の幸福度は、欧州の東西でいまや同じ水準である。
📖 報告書では:第2章 Key Insights(PDF p.13)、図2.5(PDF p.39–40)、結論部(PDF p.55)
感情・不平等・助け合い
2021〜23年には、すべての地域で女性のネガティブ感情(心配・悲しみ・怒り)が男性より多く、ほぼどこでも高年齢ほどその男女差が大きい。例外は米国・カナダ・豪州・NZのグループで、30歳未満の女性は男性よりネガティブ感情が3分の1多く、この差は高年齢ほど小さい。ネガティブ感情は、東アジアと欧州を除くすべての地域で2006〜10年より増えた。世界全体の幸福の不平等は、過去12年ほどで20%以上拡大した。コロナ禍後には困っている人を助ける人の割合がすべての世代で大きく増え、特にミレニアル世代とZ世代で増加が大きかった。Gallup/Metaの調査では、2022年に社会的支えを感じる人は孤独を感じる人の2倍以上いた。社会的支えと孤独はどちらも幸福と関係し、通常は社会的支えの影響のほうが大きい。
📖 報告書では:第2章 Key Insights(PDF p.13)、Box 2.1(PDF p.15)、結論部「Emotions at different ages」「Inequality by age」「Benevolence by generation」(PDF p.55)
世代差:1965年以前生まれが高い
第2章は、年齢の効果と「どの世代に生まれたか」の効果を切り分ける分析を行っている。年齢やその他の生活状況を考慮しても、1965年より前に生まれた人(ベビーブーマー以前)の生活評価は、1980年より後に生まれた人(ミレニアル世代・Z世代)より約0.25点高い。上の世代では年齢とともに生活評価が上がり、若い世代では年齢とともに下がる。中間の世代では年齢による変化が小さい。サンプルは1965年以前・1965〜80年生まれがそれぞれ約30%、1980年以降生まれが約40%である。中年期に底がある「U字型」は広く見られるが、それと同時に上の世代ほど有利な世代効果もある。
📖 報告書では:第2章 Key Insights(PDF p.13)、本文(PDF p.14)、結論部「The U-shape in age」(PDF p.55)
子ども・高齢者・インドの章
第3章によると、多くの国で生活満足度は子ども期から青年期、成人期へと徐々に下がる。15〜24歳の満足度は2006〜19年に世界全体で上がったが、コロナ禍で上昇が止まった。一方、北米・西欧・中東北アフリカ・南アジアでは若者の満足度が下がった。高所得国では女子の満足度が12歳ごろまでに男子を下回り、13歳・15歳で差が広がり、コロナ禍がその差を広げた。第4章は、もともとのウェルビーイングが高い人ほど将来の認知症リスクが低いという関連が繰り返し確認されていると述べる。第5章はWHRで初めてインドを扱った章で、インドでは高齢ほど生活満足度が高いが、高齢女性は高齢男性より低いと報告している。生活満足度を最もよく予測するのは、住まい方への満足、差別を受けているという認識、自己評価の健康の3つである。
📖 報告書では:第1章要約(PDF p.8–9)、第3章 Key Insights(PDF p.65)、第4章・第5章の要約(PDF p.9)
日本の結果
この号の調べ方
主なデータはギャラップ世界世論調査(Gallup World Poll)で、各国で毎年およそ1,000人が回答し、ウェイトをかけて人口を代表する国別平均を算出している。順位は2021〜23年の3年平均の生活評価(キャントリルの梯子)で決め、95%信頼区間と順位の幅もあわせて示している。1人当たりGDP・社会的支え・健康寿命・自由・寛容さ・腐敗の6変数は、国の差を説明するために使うもので、順位そのものには使っていない。年齢層は30歳未満・30〜44歳・45〜59歳・60歳以上の4区分で、変化の比較は2006〜10年を基準期間としている。
この号から言えること
- 「若いほど幸せ」という通説は地域によって異なる。北米では若者の幸福度が高齢者を下回った一方、中東欧では若者のほうがずっと高い。
- 国の順位は年齢層で大きく変わる。総合順位だけでは、その国の若者や高齢者の状況はわからない。
- 日本は総合51位だが、高齢者は36位、若者は73位で、年齢層によって国際的な位置が大きく違う。
- 1980年以降生まれは上の世代より生活評価が約0.25点低いが、困っている人を助ける割合はより高い。
読むときの注意
順位には統計的な誤差があり、報告書は各国の順位を幅(95%信頼区間)として示している。平均値が近い国どうしの数位の差は、確実な差とはいえない。認知症とウェルビーイングの関係、社会的支えと幸福の関係などは関連として報告されたものであり、因果関係を示したものではない。また、キャントリルの梯子の平均で比較することには、回答の目盛りを等間隔とみなせるかをめぐる議論がある(第2章注4)。