この号の内容
5教科の平均正答率
小学校の平均正答率は国語67.4%(14問中9.4問)、算数62.7%である。中学校は国語70.1%、数学51.4%、英語(聞く・読む・書くの合計)46.1%である。参考値として、令和4年度は小学校国語65.8%、算数63.3%、中学校国語69.3%、数学52.0%だった。前回英語を実施した平成31年度の英語は56.5%である。報告書は、年度ごとに難易度を厳密にそろえる設計ではないため、過年度との単純比較は適当でないと注意している。
📖 報告書では:「1.実施概要」p.2「教科に関する調査結果概要」
記述・表現する問題に共通の課題
小学校国語の「書くこと」は正答率26.8%で、グラフとカードの片方の情報しか使わずに誤答した児童が合わせて37.5%いた。小学校算数の記述式は47.6%である。二つの三角形の面積を比べて理由を説明する問題(大問2(4))は21.1%だった。中学校数学の図形領域は33.8%、箱ひげ図の箱に着目して説明する問題は33.9%である。中学校英語の「書くこと」は24.1%で、ロボットについて自分の考えと理由を書く問題は正答率20.1%、無解答率28.9%だった。
📖 報告書では:「2.教科に関する調査結果」p.3–16(小国語p.4、小算数p.9–10、中数学p.11–13、中英語p.14–16)
英語「話すこと」は12.4%
「話すこと」は5問中の平均正答数0.6問、正答率12.4%で、中央値も最頻値も0問だった。前回(平成31年度、参考値)は30.8%である。環境問題のプレゼンテーションを聞き、自分の考えと理由を話す「発表」の問題は正答率4.2%だった。聞いた内容は理解したが話す内容が思い浮かばなかった生徒は35.8%、話す内容は浮かんだが英語が思い浮かばなかった生徒は41.1%である。数値は、当日実施校499校・41,966人の結果に統計的補正をかけた推計値である。
📖 報告書では:p.2(※2)(※3)、p.17「話すこと」について
深い学びと家庭背景
報告書は、家庭の社会経済的背景(SES:家庭の経済・文化的な豊かさ)の代わりに「家にある本の冊数」を使っている。その結果、SESが低い児童生徒ほど正答率が低い傾向がある。一方で、授業で工夫して発表していた児童生徒は、SESが低くても正答率が高い傾向がある。中学校数学では、本が0〜25冊でも「発表していた」生徒の平均正答率は52.9%だった。本が101冊以上でも「発表していなかった」生徒は45.7%である。小学校国語では、本0〜25冊・発表していた群が66.7%、101冊以上・発表していなかった群が65.6%である。
📖 報告書では:「3.質問紙調査結果」(1)① p.18–20、三重クロス集計(p.20)
英語の授業と英語への意欲
学校の回答では、英語の言語活動に取り組んだ割合が前回より増えた。とくに「話す(やり取り)」と「統合的な言語活動」は11ポイント以上増加した。「英語の勉強が好き」に「当てはまる」と答えた生徒は全体で25.5%である。即興で英語で伝え合う活動が行われていたと強く感じる生徒に限ると、この割合は41.8%になる。「授業がよく分かる」も、全体28.4%に対し、この生徒たちでは47.5%である。家庭学習でICT機器を使って英語を「ほぼ毎日」聞いたり話したりする生徒では、「好き」が61.9%、「よく分かる」が62.4%だった。
📖 報告書では:「3.質問紙調査結果」(2) p.22、p.25、p.27
ICT活用の広がり
授業でICT機器を「ほぼ毎日」使う学校の割合は、前年度より小中学校とも約7ポイント増えた。ICT機器は、不登校の児童生徒や特別な支援が必要な児童生徒、外国人児童生徒の学習支援にも使われている。また、児童生徒の心身の状況の把握にも活用されている。該当する児童生徒がいない学校を除くと、学習支援に週1回以上ICTを使う学校は62.9%・60.6%である。報告書は、授業改善に取り組む学校ほどICT機器を活用している傾向を示している。
📖 報告書では:「3.質問紙調査結果」(3) p.28–31
日本の結果
この号の調べ方
調査日は令和5年4月18日である。教科調査(国語、算数・数学、中学校英語)と、児童生徒・学校への質問紙調査を実施した。集計対象は、小学校が977,345人・18,821校、中学校が923,981人・9,702校である。児童生徒質問紙は約80万人を対象にオンラインで実施した。質問紙は「当てはまる」から「当てはまらない」までの4段階などで回答する。
この号から言えること
- 英語の「話すこと」は中央値・最頻値とも0問である。話す内容や英語表現が思い浮かばなかったという回答が4割前後あり、考えを英語で表現する段階に大きな課題がある。
- 教科を問わず、複数の情報を関連付けて記述・説明する問題で正答率が下がる傾向が共通している。
- 報告書は、主体的・対話的で深い学びに取り組んだ児童生徒ほど、家庭のSESが低くても正答率が高い傾向を示している。教育格差を考えるうえでの読みどころである。
読むときの注意
質問紙と正答率の関係はクロス集計と相関係数で示されたものである。授業の取り組みが正答率を高めたという因果を示すものではない。過年度の正答率は難易度を調整していないため、単純比較はできない。目次にある「(4) 児童生徒の挑戦心、自己有用感、幸福感等に関する状況」(p.33〜)は今回の抜粋に含まれていない。そのため、「幸せな気持ちになる」「自分にはよいところがある」の数値はこの記事では扱っていない。