この号の内容
平均正答率は国語・算数で6割台
全国(国立・公立・私立)の平均正答率は、小学校国語67.8%(9.5問/14問)、小学校算数63.6%(10.2問/16問)、中学校国語58.4%(8.8問/15問)、中学校数学53.0%(8.5問/16問)である。参考として示された令和5年度は、小学校国語67.4%、算数62.7%、中学校国語70.1%、数学51.4%だった。ただし報告書は、年度ごとに難易度を厳密に調整しておらず出題内容も異なるため、過年度との単純比較は適当ではないと明記している。
📖 報告書では:1.調査の概要-2「教科に関する調査結果概要」p.3
書く・説明する力に課題
小学校国語では、「たてわり遊び」のよさを下級生の声を引いて書く問題の正答率が56.7%で、事実と意見を区別せずに事実を自分の考えのように書く誤答が見られた。中学校国語では、図と文章を結び付けて図の役割を答える問題の正答率が36.7%にとどまった。小学校算数では、分速200mで走り続けた場合の分速を問う問題で正答率54.4%、「分速400m」とする誤答が24.3%あった。中学校数学では、一次関数を使った解き方を説明する問題の正答率が式で9.4%、グラフで8.2%、箱ひげ図の比較を説明する問題は26.4%(令和5年度の同種問題は33.9%)で、報告書は課題が継続していると指摘している。
📖 報告書では:2.教科に関する調査結果 pp.5–27(p.5、p.13、p.19、p.24、p.26–27)
主体的な学びと自己有用感
「課題の解決に向けて自分で考え、自分から取り組んでいたか」と「自分には、よいところがあると思うか」の相関係数は、小学校0.313、中学校0.297である。小学校では、自分から取り組んだに「当てはまる」と答えた児童(28.7万人)のうち64.4%が「よいところがある」に「当てはまる」と答えたのに対し、「当てはまらない」児童(2.4万人)では24.1%だった。話合いで考えを深めたかと「自分と違う意見について考えるのは楽しい」の相関係数は小学校0.415、中学校0.364である。報告書は、主体的・対話的で深い学びが挑戦心・自己有用感・幸福感等に影響を与えている可能性があると述べている。
📖 報告書では:3.(1)①「『主体的・対話的で深い学び』と『児童生徒の挑戦心・自己有用感・幸福感等』との関係」p.30
主体的な学びと正答率・家庭背景
課題解決に自分から取り組んだと答えた子どもほど各教科の正答率が高く、たとえば中学校数学では「当てはまる」群63.3%、「当てはまらない」群32.5%だった。この質問と「自分で学び方を考え、工夫できているか」との相関係数は小学校0.522、中学校0.516である。家庭の社会経済的背景(SES=家庭の経済・文化的な環境。ここでは家にある本の冊数などで区分)が低いほど正答率が低い傾向がある中でも、主体的な学びに取り組んだ子どもはSESが低くても正答率が高い傾向が見られる。
📖 報告書では:3.(1)① pp.28–29、p.31「SES×主体的・対話的で深い学び×正答率」
個別と協働の両方で高い傾向
授業が自分にあった教え方・教材・学習時間になっていた(個別最適な学び)と答えた割合は小学校84.2%・中学校80.9%、友達と協力して課題解決に取り組んでいる(協働的な学び)は小学校91.6%・中学校92.3%である。両方に取り組んだ群(小77.7万人、中70.2万人)の正答率は他の群より高く、小学校国語では両方に取り組んだ群69.4%、どちらにも取り組んでいない群56.4%だった。この両方に取り組んだ群は「授業の内容はよく分かる」「学校に行くのは楽しい」「自分にはよいところがあると思う」と答えた割合も最も高かった。
📖 報告書では:3.(1)②「個別最適な学び・協働的な学び」pp.32–34
ICT活用と学校外の過ごし方
1人1台端末を「ほぼ毎日」「週3回以上」授業で活用した学校は小学校93%(前年比3ポイント増)、中学校91%(同4ポイント増)である。端末は不登校、特別な支援を要する子ども、外国人の子どもへの支援や心身の状況把握にも使われている。一方、平日にテレビゲームを1日3時間以上する群(児童生徒の約30%)は、3時間未満の群より勉強時間が短く、毎日同じくらいの時刻に寝ていない傾向が見られる。SNSや動画視聴を1日3時間以上する子どもは小学校約21%、中学校約32%で、同様の傾向が見られた。
📖 報告書では:3.(2)①「ICTの活用状況等」pp.36–39、3.(5)「学校外での過ごし方」p.49
日本の結果
この号の調べ方
調査日は令和6年4月18日で、対象は小学校6年生と中学校3年生である。集計対象は小学校960,389人(18,673校)、中学校904,048人(9,603校)で、教科調査(国語、算数・数学)と、児童生徒・学校への質問調査からなる。質問調査は「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」「どちらかといえば、当てはまらない」「当てはまらない」などの4段階で答える形式で、今年度は児童生徒質問調査を全面的にオンライン回答で実施した。結果は質問への回答と正答率などのクロス集計(回答ごとに分けた集計)と相関係数で示されている。
この号から言えること
- 授業で自分から課題に取り組んだと答えた小学生のうち64.4%が「自分にはよいところがある」に強く肯定したのに対し、取り組まなかった児童では24.1%であり、学び方と自己有用感の結び付きが数字で見える。
- 個別最適な学びと協働的な学びの両方に取り組んだ群は、正答率だけでなく「学校に行くのは楽しい」「自分にはよいところがある」の回答割合も最も高い傾向にある。
- 家庭の社会経済的背景が低い子どもでも、主体的な学びに取り組んだ子どもは正答率が高い傾向があり、報告書は授業改善の意義を強調している。
- 「幸せな気持ちになることがある」は小中とも約9割が肯定しており、子どもの主観的な幸福感は全体として高い水準にある。
読むときの注意
示されている関係はすべて同じ時点の回答同士の相関であり、主体的な学びが自己有用感や幸福感を高めたことを示すものではない(報告書自身も「可能性がある」という表現にとどめている)。私立学校の集計対象は小学校52.8%、中学校32.1%と低く、全国値は主に公立校の姿を反映している。また教科の正答率は年度により難易度が異なるため、前年度との単純比較はできない。