この号の内容
Wave 2の参加国とデータ
公式ページには47か国・地域が挙げられている。調査年は、日本・米国・中国・ロシアなどが1990年、アルゼンチン・ブラジルが1991年、ポーランドが1989年、スイスが1988/89年である。オーストリアやフランスなど「EVS」と記された国は、欧州価値観調査(European Values Study)のネットワークが実施した。EVSのデータはこの号のデータセットに含まれず、欧州価値観調査のサイトで提供される。IHSNのカタログによると、統合データはアルゼンチン、ベラルーシ、中国、インド、日本、韓国、ナイジェリア、南アフリカなど18か国・社会、回答者24,558人を収める。統合データの正式公開は2014年4月29日である。
📖 報告書では:公式ページ(WVSDocumentationWV2.jsp)の参加国一覧とリリースノート、IHSNカタログ「Series Information」「Coverage」「Sampling」
調査の作り方と日本の設計
WVSでは、世界各地の社会科学者から質問案を集め、英語の基本調査票(マスター質問票)を作る。各国語に翻訳したあと、多くの国では英語に訳し戻して翻訳の正確さを確かめる。調査票はすべての国で忠実に使うことが求められ、国ごとに省いてよい質問は最大12問までである。調査の基本は自宅での対面面接で、多くの国では最低1,200件の回答が求められる。日本の調査は1990年9月に行われた。対象は全国18歳以上の男女個人で、地域などで層に分けて段階的に無作為に選ぶ方法(層化多段無作為抽出)で対象者を選び、訪問面接で尋ねた。調査は日本リサーチセンターが担当し、有効回収数は1,011である。
📖 報告書では:IHSNカタログ「Survey instrument」「Data collection」「Sampling」、電通総研レポートp.3「日本調査の概要」、SSJDA調査番号1453の概要
1990年日本の幸福感と満足
日本の1990年調査では、「幸せ」と答えた人が77.7%だった。1995年以降は86.5〜89.0%で推移し、2024年は88.4%である。ただし1990年の選択肢は「とても幸せ+かなり幸せ」という文言で、後の調査とは表現が異なる。生活全般の満足度(1〜10の尺度で6〜10を「満足」とする)は1990年が71.7%で、2024年の71.2%とほぼ同じ水準である。家計の満足度は1990年が60.1%で、1995年に67.9%まで上がり、2010年に54.2%まで下がったあと、2024年は61.9%である。自分の生活の程度を「中の中」とした人は1990年が56.3%で、全7回の調査のなかで最も高い。2024年は43.9%である。
📖 報告書では:電通総研レポートp.6 図1-1・図1-2、p.7 図1-3・図1-4
人生の自由度と人生の意味
「自分の人生をどの程度自由に動かせると思うか」(1〜10の尺度)で「自由になる」(6〜10)と答えた人は、1990年が45.8%だった。これは全7回の調査で最も低い値である。その後は1995年55.3%、2000年63.0%、2010年50.0%と上下し、2024年には68.9%に達した。「人生の意味や目的を考える機会がある」と答えた人は、1990年が76.5%である。この割合は2000年に83.4%まで上がり、2024年は69.3%に下がっている。
📖 報告書では:電通総研レポートp.8 図1-5・図1-6
仕事・競争・所得への考え方
1990年には、生活で「仕事」を重要とした人が80.5%、「余暇時間」を重要とした人が79.6%で、両者はほぼ同じ割合だった。その後は余暇が上回る状態が続き、2024年は余暇91.6%、仕事78.5%である。現在の仕事に満足している人は1990年が69.3%で、2024年の52.8%より約17ポイント高かった。「競争は好ましい」は1990年が65.6%、「勤勉に働けば成功する」は65%である。所得については、1990年は「個々人の努力を刺激するよう報奨金を大きくすべき」が47.1%で、「収入はもっと平等に」の36.7%を上回った。暮らしの安心に「国はもっと責任を持つべき」とした人は63.2%で、2024年の77.0%より低い。
📖 報告書では:電通総研レポートp.9 図1-7、p.10 図1-9・図1-10、p.11 図1-11・図1-12、p.15 図2-1
メディア・政治・国家への意識
1990年の日本では、新聞・雑誌を「信頼する」人が54.6%だった。1995年以降は7割前後で推移しているが、1990年の選択肢は「非常に信頼する+かなり信頼する」という文言だった。国会を「信頼する」人は28.3%、行政は33.0%である。生活にとって政治が重要だとした人は49.1%で、全7回の調査で最も低い。一方、政治に「関心を持っている」人は60.1%だった。「戦争になったら進んでわが国のために戦うか」に「はい」と答えた人は10.3%で、これも全7回で最も低い。
📖 報告書では:電通総研レポートp.17 図2-4、p.19 図2-7・図2-8、p.21 図2-11・図2-12、p.30 図3-10
日本の結果
この号の調べ方
Wave 2は1990〜1994年に行われた。WVSの統合データには18か国・社会の24,558人が含まれ、EVSが実施した欧州の調査は含まれない。主な指標は三つある。一つ目は幸福感で、「全体として幸せか」を4段階で尋ねる。二つ目は生活満足度、三つ目は人生を自由に動かせる感覚で、どちらも1〜10の尺度で答える。日本の数値は、電通総研の『世界価値観調査 1990〜2024年 日本時系列分析レポート』(2024年12月)に載っている1990年の値であり、国際比較の数値は元資料に含まれていない。
この号から言えること
- 1990年の日本で「幸せ」と答えた人は77.7%で、1995年以降の9割弱より低い。ただし1990年は選択肢の文言が違うため、報告書の数字をそのまま比べることはできない。
- 人生を「自由に動かせる」と答えた人は1990年の45.8%が全期間で最も低く、2024年には68.9%まで上がった。日本の時系列のなかで、変化の幅が特に大きい項目である。
- 1990年には仕事と余暇を重要とする人がほぼ同じ割合で、仕事に満足する人も69.3%いた。どちらも、その後の余暇重視や仕事満足の低下と比べるときの出発点になる数字である。
- 政治を生活上重要とした人(49.1%)と、国のために進んで戦うとした人(10.3%)は、どちらも1990年が全期間で最も低い。
読むときの注意
日本の調査方法は年によって異なる。1990年は訪問面接だったが、2000年・2005年・2019年・2024年は郵送で行われ、質問の文言が変わった項目もあるため、年ごとの差をそのまま変化と読むことはできない。この記事の日本の数値は2024年に出た時系列レポートのグラフから取ったもので、Wave 2当時の報告書ではない。このレポートが示す誤差幅±2.748%は2024年調査のものであり、1990年調査の誤差幅ではない。