この号の内容
41か国・地域が参加した第4波
公式ページによると、第4波は41か国・地域で実施された。調査年は国によって1999年から2004年までと幅がある。たとえば米国は1999年、日本・カナダ・メキシコ・スペインは2000年、中国・インド・韓国・ベトナムは2001年である。さらにサウジアラビアとキルギスは2003年、イラクは2004年に実施した。参加国には、アルジェリア、エジプト、イラン、ヨルダン、モロッコ、パキスタンなど中東・イスラム圏の国が多い。ナイジェリア、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエ、南アフリカといったアフリカ諸国も含まれる。なお、欧州の国々で実施された欧州価値観研究(EVS)の調査は、このデータセットには入っておらず、別に公開されている。
📖 報告書では:WVS公式ページ Wave 4(1999-2004)の参加国一覧、リリースノート
日本調査2000年の設計
日本の第4回調査は2000年7月に行われ、有効回収数は1,362人である。対象は全国の18歳以上の男女である。調査会社の消費者パネル(郵送調査に協力する登録者)から、国勢調査の結果に合わせて性別・年齢別に人数を割り当てて選び、郵送で回答を集めた。1990年と1995年は、無作為に選んだ人を訪ねて面接する方式だったため、手法が変わっている。主な調査項目は、幸福感、健康状態、家計の満足度、生活満足度、人生の自由度、信頼、政治、宗教、国家目標などである。
📖 報告書では:SSJDA「世界価値観調査(日本調査)Wave4,2000」調査番号1455の概要/電通総研レポート p.3「日本調査の概要」
幸せは86.5%、満足は69.3%
幸福感は「全体として幸せか」を4段階で尋ねる質問である。2000年に「幸せ」(非常に幸せ+やや幸せ)と答えた人は86.5%で、「幸せでない」は10.5%だった。前後の回と比べると、1995年は89.0%、2005年は87.3%であり、9割近い水準が続いている。生活満足度は1〜10で答える質問で、6〜10を「満足」とした人は69.3%、1〜5の「不満」は27.5%だった。満足の割合は1995年の72.6%、2005年の80.9%より低く、1990〜2024年の7回の中で最も低い。
📖 報告書では:電通総研レポート p.6 図1-1「現在の幸福度」、図1-2「生活全般の満足度」
家計・暮らし向き・人生の自由
2000年に家計に「満足」と答えた人は61.9%で、1995年の67.9%より下がった。自分の生活の程度を「中の中」とした人は44.3%で、1990年の56.3%から減っている。「自分の人生をどの程度自由に動かせるか」は1〜10で答える質問で、2000年に「自由になる」(6〜10)と答えた人は63.0%だった。この割合は1990年の45.8%、1995年の55.3%から上がっている。
📖 報告書では:電通総研レポート p.7 図1-3「家計満足度」・図1-4「自分の生活の程度」、p.8 図1-5「人生を自由に動かせる程度」
仕事・競争・収入・国の責任
2000年に生活の中で「重要」とされた割合は、余暇時間が88.3%、仕事が84.2%で、余暇のほうがやや高い。「競争は人に働く気を起こさせ、新しいアイデアを生むので好ましい」を選んだ人は76.3%、「競争は有害」は15.7%だった。収入については、「個人の努力を刺激するよう収入の開きを大きくすべき」が54.9%で過半数を占め、「収入はもっと平等に」は36.8%だった。暮らしの責任については、「国がもっと責任を持つべき」が65.7%、「個人が責任を持つべき」が30.7%である。
📖 報告書では:電通総研レポート p.9 図1-7、p.10 図1-10、p.11 図1-11、p.15 図2-1
メディア・政治・国への意識
2000年に新聞・雑誌を「信頼する」と答えた人は70.2%、テレビを「信頼する」人は65.1%だった。一方、国会を信頼する人は19.7%、行政を信頼する人は29.4%にとどまり、メディアへの信頼を大きく下回る。政治に関心を持つ人は62.6%、生活の中で政治が重要だとする人は62.7%である。「戦争になったら進んで国のために戦うか」には、「はい」が15.6%、「いいえ」が46.7%だった。
📖 報告書では:電通総研レポート p.17 図2-4・2-5、p.19 図2-7・2-8、p.21 図2-11・2-12、p.30 図3-10
国際比較での使われ方
リー(Andrew Leigh)とウォルファーズ(Justin Wolfers)のNBER論文は、1995〜2000年のWVSデータを使って、各国の幸福度と発展の度合いを比べている。発展の度合いの物差しは、国連の人間開発指数(HDI)である。HDIは、寿命・教育・1人あたりGDPの3つを合わせた指数である。この論文が使った欧州・世界価値観調査の統合データは、78か国の11万5,000人を含み、世界人口の83%をカバーする。これに対し、比較対象とした国際社会調査プログラム(ISSP)の2002年調査は、32か国の約5万人で、世界人口の21%にとどまる。論文は、WVSのデータでは生活満足度と発展の度合いの間に強い関係が見られると述べている。そのうえで、「オーストラリアは発展度のわりに幸福度が低い」という先行研究の主張を裏づける証拠は見つからなかったと結論づけている。日本も、幸福感(1〜4)と生活満足度の国別比較図に含まれている。
📖 報告書では:NBER Working Paper 11925, Introduction(p.2〜3)、第3節「The World Values Survey」(p.5)、Figure 6・Figure 7(p.12〜13)
日本の結果
この号の調べ方
第4波は、1999〜2004年に41か国・地域で、基本的に共通の調査票を使って行われた。各国の研究チームが調査を担い、国ごとに全国の18歳以上から1,000人以上の回答を集めることを基本としている。日本の調査は日本リサーチセンターが実施した。2000年7月に、消費者パネルから国勢調査の結果に合わせて性別・年齢別に選んだ人を対象に郵送で調べ、有効回収数は1,362人である。本記事の日本の数字は、電通総研の時系列レポートの図に示された2000年の値を読み取ったものである。
この号から言えること
- 2000年の日本では、幸せと答える人が9割近いのに、生活満足度は7回の中で最も低い69.3%だった。幸福感と生活満足度が必ずしも同じ動きをしないことがわかる。
- 2000年は「競争は好ましい」が76.3%、「収入の開きを大きくすべき」が54.9%と、競争や成果を重んじる回答が多い年だった。
- 国会への信頼19.7%、行政への信頼29.4%に対し、新聞・雑誌への信頼は70.2%であり、政治の制度とメディアへの信頼の差が大きい。
- 第4波は中東・アフリカ・アジアの国が多く参加しており、NBER論文のように、幸福度と発展の度合いを国際比較する研究の材料として使われている。
読むときの注意
日本の数字は、WVS協会の公式報告書ではなく、電通総研による日本の時系列レポートの図から読み取った値である。2000年調査は郵送法で、面接法だった1990年・1995年とは集め方が異なるため、年ごとの比較には注意が要る。第4波全体の国別の結果(幸福度の平均や順位)は、元資料に数値として示されていない。