この号の内容
58か国・地域が参加した第5波
第5波には58か国・地域が参加した。日本・イタリア・韓国などは2005年、米国・ドイツ・ブラジルなどは2006年、中国・ノルウェー・スイスなどは2007年、エジプトは2008年、ジョージアとハンガリーは2009年に実施された。グアテマラ(2004年)やニュージーランド(2004/05年)のように、2005年より前に始まった国もある。国別データを一つにまとめたデータファイルの現行の公式版は2018年9月12日版(v2018-09-12)で、欠けていたラベルの修正が主な改訂内容である。なお、欧州価値観調査(EVS)が欧州で行った調査は、このデータセットに含まれない。
📖 報告書では:WVS公式ページ「WVS Wave 5 (2005-2009)」の参加国一覧とリリースノート
日本の幸福感と生活満足度
幸福感は「全体として、あなたは幸せだと思いますか」を4段階で尋ねる質問である。日本の2005年調査では、「幸せ」(「非常に幸せ」+「やや幸せ」)が87.3%、「幸せでない」が10.0%だった。1990年の77.7%より高く、1995年以降の9割弱の水準と同程度である。生活全般の満足度は1〜10の尺度で尋ね、6〜10を「満足」として数える。2005年の「満足」は80.9%、「不満」は17.6%で、「満足」の割合は7回の調査で最も高い。2024年の「満足」は71.2%である。
📖 報告書では:電通総研「世界価値観調査 1990〜2024年 日本時系列分析レポート」p.6 図1-1・図1-2
人生を自由に動かせる感覚
「自分の人生をどの程度自由に動かすことができると思うか」を1〜10で尋ねる質問で、6〜10を「自由になる」として数える。2005年の「自由になる」は62.4%、「自由にならない」は31.7%だった。2000年の63.0%とほぼ同じ水準で、その後2010年に50.0%まで下がり、2024年は68.9%に上がった。家計の満足度は2005年が61.7%で、1995年の67.9%と2010年の54.2%の間にある。
📖 報告書では:同レポート p.7–8 図1-3・図1-5
仕事・競争・成功の考え方
2005年に生活の中で「重要」と答えた割合は、余暇時間が90.1%、仕事が84.9%で、余暇時間のほうが高い。「競争は好ましい」は78.3%だった。収入については「成果報酬をより多く」が65.9%で、「収入はもっと平等に」の28.1%を上回り、成果報酬の支持が過半数を占めていた。一方、「勤勉に働けば成功する」は57%で、1995年の70%から約13ポイント下がった。
📖 報告書では:同レポート p.9 図1-7、p.10 図1-10、p.11 図1-11・図1-12
制度への信頼と政治意識
2005年に「信頼する」と答えた割合は、新聞・雑誌が72.5%、テレビが67.4%で、国会は21.4%、行政は30.2%にとどまる。政治に「関心を持っている」は63.4%、生活の中で政治を「重要」とした人は61.4%だった。「国民が安心して暮らせるよう国はもっと責任を持つべき」は71.4%である。「戦争になったら進んでわが国のために戦うか」には、「はい」が15.1%、「いいえ」が46.4%だった。
📖 報告書では:同レポート p.15 図2-1、p.17 図2-4・図2-5、p.19 図2-7・図2-8、p.21 図2-11・図2-12、p.30 図3-10
世界で幸福度は上がったか
イングルハート(Ronald Inglehart)らの2008年の論文は、1981〜2007年の5回分の調査(88か国、世界人口のほぼ9割をカバー)を分析している。時系列データが十分にある52か国のうち、45か国で幸福度が上昇していた。長期データがある26か国では19か国が上昇しており、日本も上昇した国の一つに挙げられている。米国・スイス・ノルウェーは横ばい、オーストリア・ベルギー・英国・西ドイツは低下である。論文は回帰分析(複数の要因の影響を同時に推定する統計手法)にもとづき、経済発展・民主化・寛容さの広がりが「自由に選べる」という感覚を高め、それが幸福度の上昇につながったと結論づけている。
📖 報告書では:Inglehart, Foa, Peterson & Welzel (2008) "Development, Freedom, and Rising Happiness" Perspectives on Psychological Science 3(4):264、PDF p.2の要旨、本文の長期データの節とDISCUSSION、付表(PDF p.21にJapan (2005)の行)
日本の結果
この号の調べ方
第5波は2005〜2009年を中心に58か国・地域で、基本的に共通の質問票を使って行われた。各国は全国の18歳以上から1,000人以上の回答を集めることを基本としている。日本では日本リサーチセンターが実施し、消費者パネル(調査に協力する登録者の集団)から、国勢調査の性・年齢構成に合わせて対象者を割り当てた。調査は郵送法で、有効回収数は1,096である。幸福感は4段階、生活満足度と人生の自由度は1〜10の尺度で尋ねている。
この号から言えること
- 日本の2005年は、生活満足度「満足」が80.9%と、時系列で最も高い年である。幸福感「幸せ」も87.3%と高い水準にある。
- 人生の自由度「自由になる」は、2005年の62.4%から2010年に50.0%へ下がり、2024年は68.9%に上がった。2005年は、変化を見るうえでの比較の起点になる。
- 2005年は、成果報酬の支持が過半数を占めた一方で、「勤勉に働けば成功する」が大きく下がった年である。働くことと報われることについての見方が分かれ始めたことが数字に表れている。
- イングルハートらは、自由に選べる感覚が高まったことが幸福度上昇の要因だと主張している。ただしこれは論文の結論であり、日本の個別の数字が示すのは、自由度と幸福感がともに高いという並びまでである。
読むときの注意
日本の2005年の数値は、2024年に公表された時系列レポートのグラフから読み取ったものである。第5波だけを扱った報告書の数値ではない。調査方法は年によって異なり(1995年は訪問面接、2000年・2005年は郵送とパネルからの割当、2010年は訪問面接など)、設問の文言が変わった項目もあるため、年ごとの差をそのまま変化と読むことはできない。また、自由度と幸福感の関係は、日本のデータの中では相関として見るべきものである。