この号の内容
60か国・地域、8万5千人超
第6回調査は世界60か国・地域を対象とし、回答者は85,000人を超える。調査年は国ごとに異なり、日本・韓国・カタールは2010年、アメリカは2011年、ドイツは2013年、アルジェリアやヨルダンなどは2014年、ハイチは2015/16年に実施された。調査全体は1981年に始まり、世界人口の約90%を占める約100か国で、累計約400,000人に面接してきた非営利の国際時系列調査である。
📖 報告書では:公式ページ「参加国と調査年」、IHSNカタログ「Series Information」「Abstract」
共通の質問票と調査の方法
質問票は英語の原版を各国語に翻訳し、多くの国で英語へ訳し戻して正確さを確認する。各国は共通質問票を忠実に使うことが求められ、省略できるのは最大12問までである。対象は国籍を問わず18歳以上の居住者で、多くの国で最低1,200人の回答を集める。主な調査方法は回答者の自宅での対面面接で、紙の調査票かCAPI(コンピューターを使った個人面接)で記録する。
📖 報告書では:IHSNカタログ「Universe」「Sampling」「Survey instrument」「Data collection」
日本:満足度低下と「中の下」
日本の2010年調査では、生活や家計の満足度がここ5年で約7ポイント低下した。自分の生活程度について、1990年には過半数だった「中の中」が縮小し、「中の下」(ロワーミドル)の拡大が目立つ。現在の日本に不安を感じる人は93%に達した。発表は、その背景として経済競争力や雇用・労働状況の悪化、国際政治力の低下といった社会不安を挙げている。
📖 報告書では:東京大学プレスリリース「結果の概要」1・2および本文第1段落
日本:幸せ86.5%、満足73.8%
2010年の日本では、幸福感の質問で「幸せ」と答えた人が86.5%、生活満足度で「満足」とした人が73.8%であった。「人生を自由に動かせる」と感じる人は50.0%である。次の2019年調査では、それぞれ88.3%、74.4%、58.4%となり、幸福度と生活満足度は微増、人生を自由に動かせる感覚は8ポイント余り増えた。電通総研は幸福度と生活満足度を「初回調査から高水準を維持」と表現している。
📖 報告書では:電通総研リリース「世界価値観調査2019」日本結果「主なトピックスとデータ」2・4
日本人が望む国と暮らし
今後10年の国家目標として、日本の回答者は「高い経済成長の維持」を期待した。国の役割は「国民の安心な暮らし」の実現とされ、財政規律を重んじつつ福祉などの行政サービスが充実した社会が望まれている。「科学技術水準」と「文化・芸術」については、日本がよい方向に向かっているとの評価であった。
📖 報告書では:東京大学プレスリリース「結果の概要」3〜5
共生個人主義と堅実消費
重視するライフスタイルとして、環境や安全に配慮し、創造性を生かし、人と助け合う「共生個人主義」志向が2005年調査に続いて見られた。同時に、無駄な出費を避け、必要なことにだけお金をかける堅実消費志向も明らかになった。消費でも自分の利益だけでなく「公共性も考慮すべき」と考える人が増えている。
📖 報告書では:東京大学プレスリリース「結果の概要」6・7および本文第4段落
日本の結果
この号の調べ方
第6回調査は2010〜2014年に60か国・地域で実施され、回答者は85,000人を超える。各国で18歳以上の居住者を代表する標本を抽出し、多くの国で最低1,200人を対象に、共通質問票を用いて主に対面面接で尋ねる。主な幸福の指標は「全体として、あなたは幸せだと思いますか」(4段階)、生活満足度(1〜10)、人生を自由に動かせる感覚(1〜10)である。データは国別にまとめたプール版で公開され、現行の公式版は2018年9月12日版である。
この号から言えること
- 2010年の日本では、9割近くが「幸せ」と答える一方、生活や家計の満足度は低下し、93%が日本に不安を感じていた。幸福感の高さと社会への不安が同時に存在する。
- 日本の回答者は、経済成長と福祉による安心、自分の利益と公共性といった一見相反する目標の両立を求めていると、東京大学・電通総研の発表はまとめている。
- 2010年を起点に2019年と比べると、幸福度と満足度はほぼ横ばいで、仕事観や多様性への意識、人生を自由に動かせる感覚が大きく動いた。この号は日本の価値観変化を見るうえでの基準点になっている。
読むときの注意
日本の数値は世界価値観調査協会の報告書ではなく、日本の担当機関(東京大学・電通総研)の発表資料から引いたもので、「幸せ」「満足」の割合がどの回答区分を合計したものかは元資料に明記されていない。また日本は訪問留置法で実施されており、主な方法である対面面接とは異なる。参加国の調査年は2010〜2016年にばらつくため、国際比較では時期の違いに注意が必要である。