この号の内容
第7波の規模と集め方
最終版データ(6.0版)は66か国・地域を収める。調査の大半は2018〜2020年に終わり、パンデミック発生後の2021〜2022年に実施したのは十数か国にとどまる。最後に加わったのはインドで、2023年7月に完了した。WVSの規則では1つの波で各国を1回だけ調べ、どの国も成人人口から無作為に選ぶ代表標本を用い、大半は対面面接で行った。2020年7月20日の初回公開時点では、欧州価値観研究(European Values Study、EVS)との共同分を含め77か国・社会、129,000人を超える回答者が対象で、標本の大きさは各国1,000〜3,200人である。
📖 報告書では:公式ページWVS7PRO「WVS Database」データ説明、「WVS-7 Fieldwork Progress」
日本の幸福度は高水準で微増
幸福感は「全体として、あなたは幸せだと思いますか」を「非常に幸せ」から「まったく幸せでない」までの4段階で尋ねる質問である。日本で「幸せ」と答えた人は2010年の86.5%から2019年は88.3%に増えた。生活満足度で「満足」と答えた人も73.8%から74.4%へ微増した。電通総研のリリースは、他の意識が変化する中でも幸福度と生活満足度は初回調査から高い水準を保っているとまとめている。
📖 報告書では:電通総研・同志社大学リリース(2020.03.26)「4. 幸福度と生活満足度は微増で維持」
生活程度は「上」「下」が微増
自分の生活の程度を尋ねる質問では、もっとも多い「中の中」が1990年の56.3%から2019年は42.2%に下がった。「下」は一貫して増え、5.1%から9.6%になった。「上」は0.5%から1.5%となり、初めて1%を超えた。リリースは、幸福度や生活満足度が高いまま維持される一方で、29年間を通じて「上」と「下」の意識がわずかに増えていると指摘している。
📖 報告書では:電通総研・同志社大学リリース(2020.03.26)「5. ジワリ広がる格差」
「人生の自由」は増えたが国際的には低い
日本で「人生を自由に動かせる」と感じる人は、2010年の50.0%から2019年は58.4%に増えた。若い人ほど自由度を高く感じる傾向がはっきり出ている。ただし77か国の比較では、「人生は自由にならない」と答えた日本人は38.6%で、77か国中6位と上位である。日本人が重視する価値は「安全」が「自由」より上で、「自由」と「安全」では「安全」が82.3%、「自由」と「平等」では「自由」57.2%、「平等」34.2%であった。
📖 報告書では:リリース(2020.03.26)「2. 自分の『人生を自由に動かせる』意識、増加」、リリース(2021.03.22)「3.【自由の価値】」
仕事より余暇、でも働くことは大事
生活における仕事の重要度は2010年の84.2%から2019年は80.0%に下がった。「働くことがあまり大切でなくなる」ことを「良いこと」「気にしない」とする回答は、合計で21.1%から42.6%へ倍増した。国際比較では、「余暇が減っても常に仕事を第一」に反対する人が59.2%で77か国中2位、仕事を「重要」とする81.3%は77か国中71位である。一方、「働くことがあまり大切でなくなる」を「良いこと」とする回答は10.5%で74位と低い。
📖 報告書では:リリース(2020.03.26)「1.『働く』ことの優先順位が低下」、リリース(2021.03.22)「1.【仕事】」
多様性の受容と政治・権威への態度
同性愛を「正しい(認められる)」とする回答は2010年の33.2%から2019年は54.4%となり、調査開始以来初めて半数を超えた。国際比較での順位は75か国中18位である。「男性の方が経営幹部に適している」に反対する人は42.7%から63.6%、政治の指導者では37.3%から54.4%に増えた。政治を生活で「重要」とする人は65%で77か国中6位と高いが、友人と政治の話を「する」人は51.4%で47か国中39位にとどまる。「権威や権力がより尊重される」ことを「良いこと」とする回答は1.9%で、77か国中最下位であった。
📖 報告書では:リリース(2020.03.26)「3. ダイバーシティを尊重する意識」、リリース(2021.03.22)「2.【ジェンダー】」「6.【政治】」
日本の結果
この号の調べ方
対象は各国の成人で、全国から無作為に選ぶ代表標本を用い、大半は対面面接で調べる。日本調査は18歳以上の男女約1,000サンプルの回収を基本とし、政治観・経済観・労働観・家族観などの幅広い質問を含む。日本の国際比較は、電通総研と同志社大学池田研究室が2020年9月時点で集計の終わっていた77か国を対象に独自に行った分析である。質問ごとに回答国の数が違い、45〜77か国で集計できた設問を順位の形で示している。
この号から言えること
- 日本の幸福度と生活満足度は9年間ほとんど変わらず高い水準にある。一方で、仕事観・ジェンダー観・同性愛への態度は同じ期間に大きく変わった。
- 「人生を自由に動かせる」と感じる人は9年前より増えたが、国際比較では「人生は自由にならない」と答える割合が77か国中6位と高い。時系列で見るか国際比較で見るかで、日本の姿は違って見える。
- 電通総研のリリースは、「政治は重要だが話題にしない」「国家に安心を求めるが権威を嫌う」など、一見矛盾する回答や、二択で迷う回答が日本に多いとまとめている。
読むときの注意
国の数は資料によって66か国・地域(WVS最終版)と77か国(EVSとの共同分を含む2020年9月時点の集計)で異なり、日本の国際順位は後者に基づく電通総研・同志社大学の独自分析である。調査時期も国によって2017〜2023年と幅がある。日本を含む多くの国はCOVID-19流行前に調査を終えている一方、2021年以降に調査した国もあるため、国どうしを比べるときは調査年に注意が要る。