この号の内容
11分野すべてで客観指標を確認
2019年7月の暫定版ダッシュボード(「計器盤」のように関連指標を一覧表示する仕組み)には、分野別満足度と客観指標の間に都道府県レベルで明確な相関が見出せないという課題が残っていた。報告書は原因として、県によってサンプルが少ないこと、都道府県の区分が粗いこと、人々が周囲と比べて満足度を答えている可能性の3点を挙げた。そこで2020年2月に、サンプルの少なかった県にやや重点を置いた約5,000人の追加調査を行い、2019年調査と合わせた約15,000サンプルで分析し直した。その結果、11分野すべてで満足度と相関する客観指標が抽出できた。11分野は、当初13の候補から「政治、行政、裁判所への信頼性」を除外し、「生活の楽しさ・面白さ」の位置づけを見送って残ったものである。
📖 報告書では:はじめに p.1–2、第1章1〜3節(PDF p.5–7)、図表1-0-1
所得・資産と満足度は山型
世帯年収が高い人ほど「家計と資産」の満足度は高い傾向にあり、個人レベルの相関係数は0.21である。満足度は100万円未満の4.02点から、3000万〜5000万円の6.37点まで上がり、それ以上では下がる。ただし年収3000万円以上の人は1%未満である。金融資産との相関係数は0.25で、資産100万円未満の人の満足度は3.64点と低い。60歳代では資産と満足度の相関係数が0.43と高く、報告書は年齢が上がるほど金融資産の重要性が増すとしている。
📖 報告書では:第1章Ⅰ「家計と資産」(PDF p.8–14)、図表1-1-1〜1-1-7
不本意な非正規雇用は求職者より低い
「雇用環境と賃金」の満足度は、正規雇用が4.77点、非正規雇用が4.35点、求職者(失業者)が3.29点である。50歳代男性の求職者は1.7点ときわめて低い。不本意非正規(正規の仕事がなく非正規で働く人)は3.09点で、求職者よりも低い。このため報告書は、不本意非正規雇用者数をダッシュボード指標に新たに加えた。都道府県別では、所定内給与額(相関係数0.368)と最低賃金額(0.351)が高い県ほど満足度が高い傾向がある。
📖 報告書では:第1章Ⅱ「雇用環境と賃金」(PDF p.15–21)、図表1-2-1〜1-2-5
持家と借家で1.11点の差
「住宅」の満足度は、持家が5.93点、借家が4.82点で、差は1.11点である。この差は50歳代以降で特に大きい。住宅が広いほど満足度は高いが、150〜200㎡未満で頭打ちになる。都道府県別では、老朽化していない住宅の割合と正の相関がある(相関係数0.388)。
📖 報告書では:第1章Ⅲ「住宅」(PDF p.22–28)、図表1-3-1〜1-3-6
長時間労働と満足度の低さ
「仕事と生活」の満足度は、1日の労働時間が3時間以内の人で5.81点、13時間以上の人で4.05点である。都道府県別では、実労働時間との相関係数が-0.411である。7時間と9時間の差は0.2点未満だが、7時間と10時間では0.76点に広がる。これを受けて、週49時間以上の長時間労働者の割合を新たな指標に採用した。睡眠時間は、都道府県別で満足度と負の相関(-0.492)だったため指標から除いた。休暇を取りやすい人は5.84点、取りにくい人は4.35点である。
📖 報告書では:第1章Ⅳ「仕事と生活」(PDF p.29–38)、図表1-4-1〜1-4-10
コロナ下で満足度が大幅低下
2020年5〜6月の調査では、生活全体の満足度が5.96点から4.48点へ1.48点下がった。分野別の低下幅は、仕事が1.03点と小さい一方、生活の楽しさ・おもしろさは1.96点(図表では1.95)、社会とのつながりは1.75点と大きい。年代別では高齢層ほど低下幅が大きく、60歳代は1.85点、70歳代以上は1.97点下がった。シニアでは6割を超える人の満足度が下がった。一方、満足度が上がった人の割合は、若者で16.2%、シニアで4.8%である。英国では若者の低下幅が大きく、日本とは傾向が異なる。
📖 報告書では:第2章「withコロナの暮らしと満足度」第1節(PDF p.96–99)、図表2-1-1、2-1-5、2-1-6
日本の結果
この号の調べ方
第1章は、2019年2月(約10,000人)と2020年2月(約5,000人、同一回答者を含まない)に行ったWEB調査のプールデータ約15,000サンプルを使っている。生活満足度と分野別満足度を0〜10点で尋ね、都道府県別の平均値と公的統計などの客観指標との相関を調べた。複数の指標を合成した総合指標も試算しており、方法は単純合成法(標準化したz値を足す)と主成分分析の2つである。第2章は、2020年5月25日〜6月5日に全国の15歳以上の登録回答者10,128人が答えたインターネット調査で、1度の調査で「感染症拡大前」と「感染症影響下」の満足度を両方尋ねた。
この号から言えること
- 満足度と客観指標の関係は、所得・資産、住宅の広さ、労働時間のいずれでも途中で頭打ちになる「山型」や「ちょうどよさ」が見られる。指標を「多いほど良い」とは単純に読めないことがわかる。
- 総合指標と満足度の相関は、健康状態が0.61と最も高い。雇用環境と賃金(0.48)、教育(0.49〜0.50)がそれに続き、分野によって客観指標で捉えられる度合いに差がある。
- コロナ下では、仕事よりも生活の楽しさや社会とのつながりの満足度が大きく下がった。女性と高齢者の低下幅が大きかった点が読みどころである。
読むときの注意
都道府県別の相関は地域平均どうしの関係であり、個人の因果関係を示すものではない。報告書自身も、分野別満足度を客観指標で説明するモデルの構築には至っていないとしている。コロナ調査は1度の調査で拡大前と影響下の満足度を両方尋ねる方式のため、影響下の値が低く出やすい可能性があり、英国の結果とは直接比較できないと報告書は注意している。