どんな調査か
「満足度・生活の質に関する調査」は、内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)が2019年から毎年行っている国内の公的調査である。公式ページは目的を「我が国の経済社会の構造を人々の満足度(Well-being)の観点から多面的に把握し、政策運営に活かしていくこと」としている。背景には、GDPだけでは見えない暮らしの良さを「見える化」するという考え方がある。第1回は2019年2月に始まり、2026年調査で第8回を数える。毎年の結果は報告書「我が国のWell-beingの動向」にまとめられ、2026年版は2026年7月31日に公表された。
何をどう測っているか
中心となる質問は生活満足度(総合)で、「現在の生活にどの程度満足しているか」を0〜10点で自己申告してもらう。あわせて、家計と資産、雇用環境と賃金、健康状態、住宅、仕事と生活(ワークライフバランス、WLB)、社会とのつながり、子育てのしやすさなど13分野の満足度も、同じく0〜10点で尋ねる。対象はインターネット調査会社に登録した15〜89歳のモニターで、2026年調査の回答者は10,632人である。第3回からは同じ人を毎年追いかけるパネル調査を含み、2026年調査ではうち7,160人が継続回答者である。報告書は、性別・年齢・地域・雇用形態などの属性や生活実態と満足度の関係を分析し、年ごとに特集テーマも設ける。さらに内閣府は、主観的な満足度を頂点とし、分野別満足度、失業率・最低賃金・平均寿命・有給休暇取得率などの客観統計を3層に並べた「満足度・生活の質を表す指標群(Well-beingダッシュボード)」を作成している。
これまでの歩み
2019年5月の第1次報告書は、ダッシュボードづくりに向けた約1万人のWEB調査の最初の報告で、全国平均5.89点を示し、社会とのつながりと満足度の関係を中心に分析した。2020年9月の第4次報告書は、2019年と2020年の調査を合わせた約1.5万人分で、11分野すべてについて都道府県レベルで満足度と相関する客観指標を見つけ、ダッシュボードを改善した。同報告書は新型コロナの影響も扱い、2020年5〜6月の調査で満足度が感染症拡大前の5.96点から4.48点へ下がったことを示した。2021年版(第3回、約5,000人)からは同じ人を追跡するデータが加わり、2022年版(第4回)以降は約1万人規模に戻ってコロナ禍からの持ち直しを追った。2023年版は世帯構成・結婚・子育て・将来不安・仕事のやりがい、2024年版は満足度を判断する際に重視する分野や転職・起業・生涯の就業意向を分析した。2025年版は人生の充実感(エウダイモニア=生きがいや意義を感じる側面の幸福)や社会との信頼関係を初めて尋ね、共働き世帯・SNS・サードプレイスも扱った。2026年版は「AIサービスの利活用」と「食」を特集テーマとしている。
分かってきたこと
「社会とのつながり」が満足度と強く結びつく
第1次報告書のいちばんの読みどころは、頼りになる人の数やボランティア活動の頻度と満足度の関係である。頼りになる人が多い人、ボランティアをしている人、趣味・生きがいのある人ほど満足度が高い傾向がある。2025年版で新たに尋ねた5つの指標のうち、生活満足度の平均を上回ったのは「人々に支えられている」だけであった。一方で「社会とのつながり」の分野別満足度は2025年に5.35へ低下している。
女性と高齢層が高く、40〜64歳が低い
2019年の第1次報告書では、女性ほど満足度が高く、年齢では45〜59歳が底になる「谷型」となった。世帯年収や資産では、一定水準を超えると満足度が頭打ちになる「山型」であった。その後も女性が男性を上回る傾向は続き、2023年は女性5.90点、男性5.67点である。2024年でも65歳以上6.61点、39歳以下5.89点に対し、40歳-64歳は5.57点で2020年の水準に戻っていない。
コロナ禍で大きく落ち込み、数年かけて戻った
2020年5〜6月の調査では生活全体の満足度が1.48点下がり、女性の低下幅(1.70点)が男性(1.26点)より大きかった。報告書は理由を「定かでは無い」としたうえで、女性の方が友人との交流時間が長いこと、休校など育児環境の変化の影響を受けやすいこと、非正規雇用の割合が高いことを例に挙げている。2021年3月には女性と東京圏で下がり、東京圏が地方圏を下回った。2023年にはすべての地域がコロナ拡大前と同水準に戻り、2024年は5.89点と調査開始以来の最高水準、上昇幅0.10点も過去最大となった。
雇用・賃金とWLBの満足度が上がり続けている
コロナ禍の影響を大きく受けた非正規雇用の満足度は上がり続け、2024年に5.67点となって正規雇用(5.85点)との差が縮んだ。分野別では「雇用環境と賃金」と「仕事と生活(WLB)」が2025年、2026年と続けて上昇した。2023年には「家計と資産」「雇用環境と賃金」「子育てのしやすさ」がどの属性でも低下しており、分野ごとに動きは異なる。2026年は「政治・行政・裁判所への信頼性」が大きく上がった。
同じ人を追うと、上がる人と下がる人がほぼ同じくらいいる
パネルデータでは、平均の小さな変化の裏で個人の満足度が大きく動いていることが分かる。2021年調査の継続回答者では、満足度が下がった人が32.9%、上がった人が30.9%で、30歳代以下の若者では大きく動いた人が多い。2022年調査では下がった人29.3%に対し、上がった人32.3%と上回った。