この号の内容
熱意ある社員は23%で停滞
世界でエンゲージしている(熱意あふれる)社員は23%で、マネジャーに限ると30%である。仕事に強い不満を抱え、雇用主の目標に積極的に反する「やる気のない社員(actively disengaged)」は世界の労働力の15%を占める。人生の評価にもとづく「繁栄している」割合は、2023年に35%から34%へ下がった。報告書は、どちらの指標も過去最高かそれに近い水準にあるとしている。そのうえで、数年続いた着実な伸びが止まった点を重視している。Gallupは、低いエンゲージメントが世界経済に8.9兆米ドル(世界GDPの9%)の損失をもたらすと推計している。
📖 報告書では:Executive Brief・Research Summary(PDF p.5–6)、第III部03(PDF p.23)、第I部02(PDF p.10)
孤独とストレスの広がり
前日に「強いストレス」を多く感じた社員は41%、孤独を多く感じた社員は20%(5人に1人)である。孤独は35歳未満で高く、完全リモートの人(25%)は完全出社の人(16%)より高い。働いている成人(20%)は失業者(32%)より孤独が少ない。CEO序文によると、やる気のない社員は熱意あふれる社員より約60%ストレスを感じやすい。さらに失業者と比べても、強いストレスの報告が約30%多い。報告書は、ストレス・怒り・心配・孤独の多くで、やる気がない状態は失業と同等かそれより悪いとしている。一方、熱意あふれる社員の半数は人生全体で繁栄している。
📖 報告書では:From the CEO(PDF p.4)、第I部01・03(PDF p.9、p.11)
若い世代の幸福度が低下
2023年の「繁栄している」割合の低下は、35歳未満の若い働き手で起きた。世界幸福度報告2024でも、1965年より前に生まれた人は1980年より後に生まれた人より、人生の評価が約0.25点高い。この評価はキャントリルの梯子(0〜10で人生を評価する質問)による。報告書は、10年前には若い働き手の方が一貫して人生の評価が高かったと指摘する。そのため、この差は年齢段階だけでは説明しにくいと述べている。年長の経営層は若い社員と現在や将来の見え方が違いうるため、注意すべきだとしている。
📖 報告書では:第I部02「Wellbeing among younger employees dropped in 2023」(PDF p.10)
雇用市場・労働法との関係
「今は地元で仕事を見つけるのに良い時期」と答える人が多い国ほど、やる気のない社員の割合が低い(国レベルの相関係数r=0.55)。一方、雇用市場とエンゲージメントの間には有意な相関がない。労働権指数(Labour Rights Index)は、135か国で46の労働関連法の有無を調べた指標である(法の執行状況は測っていない)。労働法が多い国ほど、現在の人生評価が高い傾向がある。現在の評価と最も相関した分野は、職場の母性保護、公正な賃金、社会保障、雇用の安定、公正な処遇、安全の順である。一方、将来への希望は、労働法よりもエンゲージメントとの結びつきが強い。
📖 報告書では:第II部01〜03(PDF p.14–16)、図「Country-Level Relationship Between Quality of the Local Job Market and Disengagement」
労働法×熱意で感情が最良
労働権指数が上位半分の国で熱意あふれる社員は、前日のストレスが29%、孤独が12%だった。下位半分の国でやる気のない社員は、ストレス54%、孤独27%である。毎日の楽しさ(Enjoyment)は、熱意あふれる社員で83〜84%、やる気のない社員で54〜56%だった。楽しさは労働法の多寡と関係せず、エンゲージメントとだけ関連していた。北欧3国は労働法の多さで上位4分の1に入り、エンゲージメントは平均並みである。ドイツ・フランス・英国も上位4分の1だが、エンゲージメントは平均を下回る。報告書はこれを根拠に、労働者保護と熱意は「二者択一」ではないとしている。
📖 報告書では:第II部04(PDF p.17–18)、表「Daily Emotions of Engaged Employees in Countries With High and Low Levels of Labour Index-Related Statutes」
鍵はマネジャー
Gallupは、チームのエンゲージメントのばらつきの70%がマネジャーで説明できるとしている。国レベルでも、マネジャーと一般社員のエンゲージメントは相関している(r=0.58)。マネジャーのエンゲージメントが上位半分の国は、熱意ある一般社員がいる割合が2倍である。マネジャーは一般社員より熱意が高く、繁栄している人も多い。しかしストレス・怒り・悲しみ・孤独も多く、転職を探している人も多い。ベストプラクティス組織では、マネジャーの4分の3、一般社員の10人に7人が熱意ある社員である。熱意ある社員14人に対してやる気のない社員は1人で、この比率は世界平均の11倍にあたる。
📖 報告書では:第III部01〜03(PDF p.21–24)、図「Country-Level Relationship Between Manager and Non-Manager Engagement」
日本の結果
この号の調べ方
報告書は、Gallupによる従業員体験の調査として世界最大の継続調査の2023年の結果をまとめたものである。エンゲージメントはGallup独自の12問(Q12)で測り、社員を熱意あふれる・熱意なし・やる気のないの3区分に分ける。「繁栄している」割合は、キャントリルの梯子を使い、現在と約5年後の人生評価を組み合わせて判定する。感情は「昨日の多くの時間にストレス・怒り・悲しみ・孤独などを感じたか」で尋ねている。各国の回答者には追加インタビューも行い、その声を本文に収めている。
この号から言えること
- 世界のエンゲージメントは23%、繁栄は34%で、数年の改善が止まった。日本のエンゲージメントは6%で、東アジアでも下位にある。
- 雇用市場や労働法は「不満の少なさ」と関連する。一方、熱意・楽しさ・将来への希望はエンゲージメントと関連する。報告書はこの2つを別の層として描いている。
- 報告書は、チームの熱意のばらつきの70%がマネジャーで説明できるとする。同時に、マネジャー自身のストレスや孤独が多い点に支援が必要だと強調している。
- CEO序文は、ウェルビーイングアプリやストレス研修より、組織レベルのマネジメント改善の方が有効だとするオックスフォード大学の研究を紹介している。
読むときの注意
報告書の多くの分析は相関であり、労働法や雇用市場、エンゲージメントが幸福度を直接高めると示したものではない。労働権指数は法律の有無だけを数えており、実際に守られているかは測っていない。日本の6%は香港と同率で、順位の差はわずかである。