この号の内容
熱意ある社員は21%に低下
2024年、世界で仕事に熱意をもって打ち込む「エンゲージしている社員」の割合は23%から21%に下がった。低下は過去12年で2020年と2024年の2回だけで、今回の2ポイント減はコロナ禍の外出制限の年と同じ幅である。内訳は、熱意あふれる社員21%、熱意のない社員62%、組織の目的に反する働き方をする「やる気のない社員」17%(前年比+2ポイント)である。報告書は、この低下で世界経済がUS$438 billion分の生産性を失ったと試算している。
📖 報告書では:Executive Summary「Is the Global Workplace at a Breaking Point?」p.5、Part One「Employee Engagement on the Brink」p.6、Global Summary p.15–16
低下の主因は管理職
管理職のエンゲージメントは30%から27%に下がり、管理職でない一般社員(individual contributor)は18%で横ばいだった。管理職のなかでは35歳未満が5ポイント、女性が7ポイント下がり、ほかの区分(男女・年齢)にこれほど大きな低下は無い。報告書は背景として、パンデミック後の退職と離職、採用の急増と急減、組織の再編、予算縮小、サプライチェーンの混乱、デジタル化とAI、柔軟な働き方への要望など、ここ5年の混乱を挙げている。また、チームのエンゲージメントの70%は管理職に帰せられるとし、国単位でも管理職のエンゲージメントが低い国ほど一般社員も低い傾向がある。
📖 報告書では:Part One p.7「What caused the decline in engagement?」、p.8「Why does manager engagement matter?」
「繁栄している」人は33%
人生の評価は、キャントリルの梯子(0〜10の段で今の人生と5年後の人生を評価する質問)で測る。人生がうまくいっている「繁栄している(Thriving)」社員は、2022年の35%から2年続けて下がり2024年は33%で、「苦しんでいる(Struggling)」58%、「困窮している(Suffering)」9%である。管理職では年長層が5ポイント、女性が7ポイント下がった一方、一般社員はわずかに改善した。米国・カナダは60%から52%、オーストラリア・ニュージーランドは69%から56%へと歴史的な低下を示し、報告書は住宅費とインフレが大きく影響している可能性を指摘している。
📖 報告書では:Part Two「How's Your Life Going?」p.9–10、Global Insights「Life Evaluation」p.17
熱意と生活評価の関係
仕事に熱意をもつ社員の半数が人生全体で「繁栄している」のに対し、熱意のない社員では3分の1にとどまる。熱意ある社員ほど、ストレスを含む日々のネガティブな感情を報告する割合も低い傾向がある。報告書は、管理職の生活評価とエンゲージメントがともに下がっていることから、職場環境の悪化が共通の要因だと述べている。管理職の燃え尽きは、業績低下、欠勤や離職の増加につながると報告書は結論づけている。
📖 報告書では:Part Two p.10
属性・働き方・感情の内訳
エンゲージメントは完全リモート31%、ハイブリッド23%、リモート可能な出社23%、リモート不可能な出社19%で、地域別では米国・カナダ31%が1位、欧州13%が最下位である。繁栄している割合は女性38%、男性30%で、地域別ではオーストラリア・ニュージーランド56%が1位、南アジア15%が最下位である。前日に多くの時間感じた感情は、ストレス40%、怒り21%、悲しみ23%、孤独22%(前年比+2ポイント)である。「今は仕事を見つけやすい時期」と答えた人は51%(-3ポイント)、転職を探す・機会をうかがう人は50%(-2ポイント)である。
📖 報告書では:Global Summary p.15、Employee Engagement p.16、Life Evaluation p.17、Daily Stress p.18
リーダーへの3つの提言
報告書は、世界の職場が完全にエンゲージすれば9.6兆ドル(世界GDPの9%相当)の生産性が上乗せされると試算し、優良企業ではすでに70%に達しているとする(米国31%、世界21%)。第1に、管理職研修を受けたと答えた管理職は44%にとどまり、研修を受けた管理職は受けていない管理職に比べ、やる気のない人の割合が半分である。第2に、コーチング研修の参加者はエンゲージメントが最大22%高く、そのチームは最大18%上がり、管理職の業績指標は20〜28%改善した(研修の9〜18か月後の結果)。第3に、研修によって管理職の繁栄している割合は28%から34%に上がり、職場で成長を後押しする人がいる場合は50%になる。
📖 報告書では:Part Three「Hope in the Data: Three Actions for Leaders」p.11–13
日本の結果
この号の調べ方
Gallupが継続して行う世界最大規模の従業員調査で、2024年のGallup世界調査(Gallup World Poll)にもとづき、世界の数値の誤差は±1ポイントである。エンゲージメントはGallup独自の12項目(Q12)で測り、社員を「熱意あふれる」「熱意のない」「やる気のない」の3区分に分ける(2010・2011・2017年は未収集)。人生の評価は0〜10の梯子で現在と5年後を尋ねて「繁栄」「苦しい」「困窮」に分け、感情は前日に多くの時間それを感じたかを尋ねる。国・地域別の数値は3年の移動平均で、変化は2021〜2023年平均から2022〜2024年平均への差である。
この号から言えること
- 世界のエンゲージメント低下は一般社員ではなく管理職、とくに35歳未満と女性の管理職で起きており、報告書は管理職の疲弊を職場全体の危機と位置づけている。
- 管理職研修を受けた人は44%しかいない一方、研修と成長の後押しがある管理職ほど繁栄している割合が高く(28%→34%→50%)、報告書は管理職育成を最も効果的な「ウェルビーイング施策」の一つとしている。
- 日本はエンゲージメント7%・繁栄30%と東アジアでも低位だが、仕事を見つけやすいと答えた人は53%で前回から13ポイント増えている。
読むときの注意
世界全体の数値は単年の値、国・地域別は3年移動平均なので、両者を直接並べて比べると食い違う。エンゲージメントと生活評価の関係は「〜な人ほど高い傾向」を示す関連であり、損失額や9.6兆ドルの試算、住宅費・インフレの影響は報告書自身の推計・解釈である。研修効果の数字も報告書が引用するGallupの研究によるもので、研修参加者の選ばれ方などは抜粋からは確かめられない。