この号の内容
初の法定白書、3白書を一本化
本白書はこども基本法(令和4年法律第77号)第8条第1項に基づく年次報告で、今回が初回である。これまで少子化社会対策基本法、子ども・若者育成支援推進法、子どもの貧困対策の推進に関する法律に基づいて別々に出されていた年次報告は、この「こども白書」に一本化された。構成は2部建てで、第1部はこども大綱の数値目標や指標を含むこども・若者の状況(第1章)とこども家庭庁設置までの経緯(第2章)、第2部はこども大綱の柱に沿った政府施策の実施状況(全4章)である。注目事例12本のテーマ選定には、こども・若者の意見を聴く仕組み「こども若者★いけんぷらす」が使われた。
📖 報告書では:概要版PDF p.2–3「『こども白書』とは」「令和6年版『こども白書』の構成」
出生・結婚は過去最少水準
2022年の出生数は77万759人で統計開始以来最少、合計特殊出生率は1.26で過去最低である。2022年の婚姻件数は504,930組、2021年の夫婦の完結出生児数(結婚した夫婦が最終的にもつこどもの数)は1.90である。若者の非正規雇用割合は2022年で、男性が15~24歳49.8%・25~34歳14.9%、女性が15~24歳54.3%・25~34歳30.7%である。週60時間以上働く男性の割合は30・40代で他の年代より高い。
📖 報告書では:第1部第1章(英訳概要版 p.4〈Births〉〈Employment and Work〉〈Marriage〉〈Pregnancy and Childbirth〉)
居場所と支え手はあるが生活の円滑さは半数
安心できる場所があると思うこども・若者、「どこかに助けてくれる人がいる」と思うこども・若者はいずれも9割を超え、後者は97.1%である。学校については半数以上が「こどもが安全に安心して過ごすことができる、こどもにとって大切な居場所の1つ」と答えている。一方、「社会生活や日常生活を円滑に送ることができている」と思うこども・若者は51.5%で約半数にとどまる。
📖 報告書では:第1部第1章(概要版 p.4〈成育環境〉、英訳概要版 p.4の指標グラフ)
貧困・虐待・不登校の現状
国民生活基礎調査(2021年)に基づく子どもの相対的貧困率(世帯の所得が社会の標準の半分に満たないこどもの割合)は11.5%で、ひとり親世帯では44.5%と高い。2022年度の児童相談所の児童虐待相談対応件数(速報値)は219,170件で過去最多である。小・中学校の不登校児童生徒数と、学校におけるいじめの重大事態の発生件数も2022年度に過去最多となった。
📖 報告書では:第1部第1章(英訳概要版 p.4〈Rearing Environment〉〈Safety and Security〉)
自分の将来は明るく、国の将来は暗い
こどもの半数以上が「生活に満足している」と感じ、「自分の将来について明るい希望がある」と思うこども・若者は66.4%である。これに対し「自国の将来は明るい」と思う割合は23.1%で約2割にとどまる。「こどもまんなか社会の実現に向かっている」と思う人は2割弱、「結婚、妊娠、こども・子育てに温かい社会の実現に向かっている」と思う人は27.8%、「共働き・共育てが推進されている」と思う人は約3割である。
📖 報告書では:第1部第1章(概要版 p.4〈自己認識〉〈社会認識〉〈子育て〉、英訳概要版 p.4の指標グラフ)
自分への満足度は5か国で最低
特集③は、こども家庭庁の「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」の結果を紹介している。「自分自身に満足している」に「そう思う」と答えた日本のこども・若者は16.9%で、アメリカ36.4%、ドイツ32.7%、フランス35.9%、スウェーデン30.9%を下回る。日本の「どちらかといえばそう思う」は40.5%で、平成30年度調査の「そう思う」10.4%・「どちらかといえばそう思う」34.7%と比べると、いずれも増えており改善している。各国共通で、自分自身に満足している人ほど生活満足度・幸福感・人生の意義といった主観的ウェルビーイング(本人が感じる幸福や充実)の指標も良い傾向がある。報告書は、日本では家庭生活・地域・自国社会・学校生活・友人関係など幅広い対象への満足度を高めることが生活満足度の向上に寄与する可能性があるとしている。
📖 報告書では:特集③(概要版 p.5のグラフ「『自分自身に満足している』と回答したこども・若者の割合」[各国比較][前回調査との比較(日本)])
こども大綱と少子化対策
特集①は、2023年12月22日に閣議決定された日本初の「こども大綱」(政府全体のこども施策の基本方針)の特徴を5点で示す。こども・若者を「権利の主体」と明示し、ライフステージごとに重要事項を示し、毎年「こどもまんなか実行計画」を策定することなどが柱である。特集②は「こども未来戦略」と「こども・子育て支援加速化プラン」を紹介し、経済的支援の強化、共働き・共育ての推進、「子ども・子育て支援金制度」による財源確保などをポイントに挙げる。地域少子化対策重点推進交付金を活用した結婚支援センターは35道府県に設置されており、事例として愛媛県が紹介されている。
📖 報告書では:特集①・特集②(概要版 p.5、英訳概要版 p.5)
第2部:施策と12の注目事例
第2部は、ライフステージを通した重要事項(第1章)、ライフステージ別の重要事項(第2章)、子育て当事者への支援(第3章)、施策推進に必要な事項(第4章)の4章で政府施策の実施状況をまとめる。注目事例には、長野県の子どもの自殺危機対応チーム、能登半島地震で被災したこどもの居場所づくり、大阪府吹田市の1人1台端末を使った「心の健康観察」、北海道旭川市・熊本県熊本市の学校外からのいじめ防止、兵庫県神戸市のヤングケアラー支援などがある。国立成育医療研究センターは、2020年から2022年の調査に基づき、コロナ禍のこどもと保護者の心の状態の変化を寄稿している。
📖 報告書では:第2部第1章~第4章(概要版 p.6–7)
日本の結果
この号の調べ方
令和5年度(FY2023)の日本のこどもをめぐる状況と政府施策を対象とし、第1部ではこども大綱に掲げた数値目標や指標を含め、国民生活基礎調査など各種統計でこども・若者の状況を概説している。特集③の国際比較は、こども家庭庁が実施した「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」に基づき、日本・アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデンの5か国(日本n=1,089、アメリカn=1,064、ドイツn=1,078、フランスn=1,026、スウェーデンn=1,026)の回答を比べたものである。日本の前回比較には平成30年度調査(n=1,134)を用いている。
この号から言えること
- 日本のこども・若者は、助けてくれる人がいると感じる割合が97.1%と高い一方、自国の将来を明るいと思う割合は23.1%で、身近な安心感と社会への見通しの間に大きな差がある。
- 自分自身への満足度は前回調査より改善したが、「そう思う」は16.9%で比較5か国中最も低い。各国共通で、自分に満足している人ほど生活満足度や幸福感も高い傾向がある。
- 出生数77万759人、合計特殊出生率1.26、児童虐待相談対応219,170件、不登校・いじめ重大事態の過去最多など、少子化と安心・安全の指標が厳しい水準にある。
- 本号は少子化・子ども若者育成・子どもの貧困の3つの年次報告を一本化した初の法定白書であり、今後の年次比較の起点となる号である。
読むときの注意
各数字は調査ごとに年・年度・対象が異なり(出生は2022年、貧困率は2021年、虐待相談は2022年度の速報値など)、同列には比べられない。特集③の「自分への満足度が高い人ほど主観的ウェルビーイングも良い」は傾向であり、報告書も幅広い満足度の向上が生活満足度に「寄与する可能性がある」と述べるにとどめている。本記事は主に概要版に基づいており、詳細な定義や調査対象の年齢などは全体版の各章で確かめる必要がある。