この号の内容
初回公開は32か国中10か国
今回公開されたのは、参加32か国のうち10か国のデータである。対象はブルガリア、クロアチア、チェコ、エストニア、フィンランド、フランス、ハンガリー、リトアニア、スロバキア、スロベニアである。いずれも対面面接で集めたデータで、面接者データと接触記録(コンタクトフォーム)のデータも併せて公開された。2022年11月には、はるかに多くの国を含む第2弾の公開が予定されている。
📖 報告書では:公式ニュース「Round 10 data now available」(2022年6月23日)
第1回〜第10回を一つのファイルで
第10回の初回データは、改訂版の「ESS Data Wizard」でも利用できるようになった。これにより、第1回(2002/03年)から第10回(2020〜22年)までの全データを一つのファイルとしてダウンロードできる。形式はCSV、DTA、SAVの3種類である。登録利用者は調査回・国・変数を選び、必要な部分だけを抜き出したデータを作ることもできる。
📖 報告書では:公式ニュース「Round 10 data now available」
コロナ禍で実査が長期化
感染拡大を抑える措置の影響で、実査期間は通常より長くなった。データ収集は2020年9月から2022年5月まで続いた。対面面接ができなかった国では、第10回の質問票を回答者が自分で記入する「自記式」で実施した。自記式には、ウェブの後に紙を案内する順次型と、ウェブと紙を同時に提示する並行型の2つの方式がある。自記式のデータは2022年末に公開される予定である。
📖 報告書では:公式ニュース「Round 10 data now available」
質問票の構成
第10回の質問票は、毎回実施するコア質問票を土台にしている。そのうえで、入れ替わりで実施する交替モジュールを2つ含む。テーマは「欧州人の民主主義の理解と評価」と「仕事と家庭生活におけるデジタルな社会的接触」である。さらに特別なCOVID-19モジュールを、各国が任意で実施した。このモジュールは、国別の独自質問を入れていない国だけが採用できる。
📖 報告書では:公式ニュース「Round 10 data now available」、COVID-19モジュール質問票 p.2 脚注1
COVID-19モジュール:信頼と陰謀論
COVID-19モジュールでは、まず全員に科学者への信頼を0〜10で尋ねる(0=まったく信頼しない、10=完全に信頼する)。続いて陰謀論的な考え方への賛否を5段階で尋ねる。項目は「少数の秘密集団が世界政治の主要な決定をすべて下している」と「科学者集団が市民を欺くために証拠を操作・捏造・隠蔽している」の2つである。後半では「コロナウイルスは政府や組織による意図的で隠された取り組みの結果だ」という記述への賛否も尋ねる。
📖 報告書では:COVID-19モジュール質問票 p.1(B12a)、p.2(K1・K2)、p.8(K16)
COVID-19モジュール:政策と体験
回答者は、面接用ソフト(CAPI)によって約半数ずつ2群に自動で振り分けられる。第1群は「パンデミックと闘うとき」という前置き付き、第2群は前置きなしで、同じ問いに0〜10で答える。問いは、公衆衛生と経済活動のどちらを優先すべきか、監視・追跡とプライバシーのどちらを重視すべきか、の2つである。その後、全員に次のことを尋ねる。 - 政府のルールに従うか自分で判断するか - 国境閉鎖や国内移動制限の重要性 - 政府のコロナ対応への満足度(失業・減収者、介護施設の高齢者、学齢期の子のいる家庭への支援を含む) - 医療体制の対応への満足度 - 経済と健康のバランスの評価 - 政府への信頼 最後に、本人や同居者の感染経験、1950年より後に生まれた人への失業・減収・一時帰休などの経験、ワクチン接種の意向を尋ねる。
📖 報告書では:COVID-19モジュール質問票 p.2〜4(K3〜K5b)、p.5〜7(K6〜K15)、p.8〜10(K17〜K20b)
この号の調べ方
ESSは欧州社会調査欧州研究インフラコンソーシアム(ESS ERIC)が実施する国際調査である。第10回は32か国が参加し、データ収集は2020年9月から2022年5月まで行われた。今回の初回公開は、対面面接で集めた10か国分である。COVID-19モジュールでは面接用ソフトで回答者を約半数ずつ2群に無作為に振り分け、質問の前置きの有無を変えて尋ねる設計になっている。
この号から言えること
- 今回の号は分析結果の報告ではなく、データ公開の告知である。第1回から第10回までを一つのファイルで扱える環境が整った点が要点である。
- 第10回はコロナ禍のため実査が約1年8か月に及んだ。一部の国では対面ではなく自記式(ウェブ・紙)で実施されており、データ収集方式が国によって異なる回である。
- 任意実施のCOVID-19モジュールは、科学者・政府への信頼、陰謀論的な考え方、政策の優先順位、感染・失業経験、ワクチン接種意向を同じ調査の中で尋ねている。この点が読みどころである。
読むときの注意
元資料には、幸福感や生活満足度などの集計値・国別の数字は載っていない。第10回はウェルビーイング・モジュール(快楽的・エウダイモニア的・社会的ウェルビーイングなどを詳しく測る特別モジュール)の実施回でもない。初回公開は東欧・北欧・フランスの対面実施10か国に限られ、自記式の国のデータは後から公開されるため、国どうしを比べる際は方式の違いに注意が必要である。