どんな調査か
欧州社会調査(European Social Survey、ESS)は、欧州の人々の態度・信念・行動を測る学術的な国際比較調査である。運営するのは欧州社会調査 欧州研究インフラコンソーシアム(ESS ERIC)で、2013年に欧州研究インフラコンソーシアム(ERIC)の地位を与えられた。調査は2002年に始まり、2年ごとに欧州の国々で15歳以上を対象に行われている。毎回、幸福感と生活満足度をどちらも0〜10で尋ねており、主観的ウェルビーイング(本人が感じる幸福や満足)の国際比較データとして使える。データは誰でも無料で使える形で公開されている。
何をどう測っているか
毎回共通の「コア質問票」に、回ごとに入れ替わる特集的な質問群である「交替モジュール」を2つ加える構成である。コア質問票では「全体として、あなたはどのくらい幸せですか」という幸福感と、生活満足度をそれぞれ0〜10で尋ねる。第3回(2006/07年)と第6回(2012/13年)には「個人的・社会的ウェルビーイング」の特別モジュールが入った。このモジュールは、気分の良さなどの快楽的な幸福だけでなく、自律・没頭・人間関係・目的意識といった「よく生きている感覚」を指すエウダイモニア的な幸福、社会とのつながりに関わる社会的ウェルビーイング、うつ症状を測る尺度CES-D8を含む。第12回(2025/26年)でも同モジュールを繰り返し、マインドフルネス、思いやり、社会の調和、レジリエンス(立ち直る力)の項目を加える。調査の流れは、モジュール設計チームの公募、元となる質問票の開発、翻訳、標本設計、データ収集、各国の状況の把握、データ処理と保管、データと資料の公開、データ品質の評価という段階で示されている。公開データには、標本の偏りを補正するための事後層化ウェイトも用意されている。
これまでの歩み
第7回(2014年実施)は2016年5月26日に第2版データが公開され、イスラエル、リトアニア、ポルトガル、スペイン、英国の5か国が加わって統合データファイルが21か国分になった。この回の特別モジュールは「移民に対する態度とその背景」と「健康における社会的不平等とその決定要因」で、第2版では事後層化ウェイトと出自(ancestry)の変数も追加された。第8回(2016年実施)は2017年10月31日に18か国分の初版が公開され、2008年以来の再実施となる「福祉への態度」と、ESS史上初めての「気候変動とエネルギーへの態度」が交替モジュールとなった。第9回(2018〜2019年実施)は2019年10月31日に19か国分の第1版が公開され、初回公開の国数としては2013年10月の第6回以来もっとも多かった。特集テーマは「人生のタイミング」と「正義と公正」である。第10回(2020〜22年)は新型コロナウイルス対策の影響で実査が2020年9月から2022年5月までに延び、2022年6月23日の初回公開は参加32か国のうち対面面接で集めた10か国分にとどまり、各国任意の「COVID-19モジュール」も設けられた。第11回(2023/24年)は2025年11月21日に最終データ(Edition 4.0)が公開され、エストニアとウクライナが初めて加わって30か国分となり、ウクライナのデータは第6回以来はじめて統合ファイルに戻った。第12回(2025/26年)のデータは2027年1月に初めて公開される予定である。
分かってきたこと
幸福感と生活満足度は2002年から途切れずに測られている
交替モジュールのテーマは回ごとに移民、健康格差、福祉、気候変動、人生のタイミング、正義と公正などと入れ替わってきた。その一方で、幸福感と生活満足度は毎回の共通質問として含まれ続けている。このため、同じ質問で欧州の主観的ウェルビーイングを長期にわたって比べられる。各回の公式発表はデータ公開の告知であり、幸福度の集計結果そのものは示していない。
ウェルビーイングを多面的に測る特別モジュールがある
第3回と第6回の「個人的・社会的ウェルビーイング」モジュールは、快楽的な幸福、エウダイモニア的な幸福、社会的ウェルビーイング、うつ尺度CES-D8を同時に測った。第12回では同じモジュールを繰り返したうえで、マインドフルネス、思いやり、社会の調和、レジリエンスの項目を加える。幸福を一つの数字だけでとらえず、複数の側面に分けて測る設計である。
参加国と調査方法は回ごとに変化してきた
統合データファイルの国数は、第7回第2版の21か国、第8回初版の18か国、第9回第1版の19か国と回ごとに異なる。第11回ではエストニアが初めて加わり、ウクライナが第6回以来はじめて戻った。第10回では新型コロナの影響で実査期間が延び、初回公開は対面面接で集めた10か国分に限られた。第12回は対面と自記式(ウェブ・紙)の混合で行われる。
データは段階的に公開され、無料で使える
各回のデータは、まず一部の国の初版が出て、その後に国やウェイトが追加される形で公開されてきた。第11回については、公式サイトが参加した31か国すべてのデータと事後層化ウェイトが利用可能になったと伝えている。現在、すべてのデータと資料はESSデータポータルからのみ入手できる。