この号の内容
民主主義支持が52%に回復
民主主義を支持する人は4ポイント増えて52%になった。報告書は、2010年から2024年まで続いた民主主義の劣化が止まり、反転したと述べている。2024年の選挙では、政権交代が相次いだ流れが終わり、3か国で与党が再選された。報告書は、1995年以来30年近くの測定には浮き沈みや悪い時期が多かったものの、多くの人が予言したように民主主義が死ぬことはなかったと総括している。
📖 報告書では:p.1 冒頭要旨「LA DEMOCRACIA RESILIENTE」、目次 第IV章4.1「EL APOYO A LA DEMOCRACIA」(p.29〜)
家計の楽観は過去最高、国は停滞
パンデミック後の経済的な悲観は終わり、家計の先行きに対する前向きな期待は過去最高になった。一方、国の経済については改善が見られない。人々は「自分は国よりも良くなる」と考えており、報告書はこれを矛盾と呼んでいる。その結果、政府に向けられる期待の圧力も過去最高に達した。市場経済への支持も上がっている。
📖 報告書では:p.1 冒頭要旨、目次 第I章1.1「家計の経済的楽観が記録更新」p.17、1.2 p.18、1.3「最も高い期待の圧力」p.20、1.6 p.24
格差と権威主義という二つの課題
報告書は、民主主義の定着を「遅い過程」とし、前に進むべき中心的な領域を二つ挙げている。格差の解体と権威主義の解体であり、前者のほうが後者より容易だとしている。政党は疲弊し、議会は制度として消耗し、司法は正統性を失い、エリートは信用を失っているという。一方で、メキシコ、ドミニカ共和国、アルゼンチンの最近の選挙は、政治が人々を前向きな態度に変えうることを示したと述べる。格差の解体には、経済成長と、自力でやっていけない人への社会保障の整備が必要だとしている。
📖 報告書では:p.1 冒頭要旨
「3世紀」を40年で求めた無理
序論では、マーシャルの議論を紹介している。先進民主国は、18世紀に市民的権利、19世紀に政治的権利、20世紀に社会経済的権利を獲得し、合わせて3世紀を要した。ラテンアメリカの民主化は、1979年のエクアドル(ロルドス)、1980年のペルー(ベラウンデ)、1983年のアルゼンチン(アルフォンシン)から始まった。報告書は、わずか40年半で三つの権利すべてを期待するのは素朴すぎるとしている。また2010年ごろから、ほぼすべての国で「社会経済的な移行」を求める第2段階が始まり、2019年に3か国で起きた抗議がその転換点になったと位置づけている。
📖 報告書では:序論「TRES SIGLOS EN CUATRO DÉCADAS」p.4〜6
定着した民主主義はウルグアイのみ
報告書は、30年の測定で「民主主義は定着する」という期待は実現せず、自由民主主義への移行も起きなかったと述べる。定着した民主主義といえるのはウルグアイだけで、残りは未定着だとしている。比較対象として挙げるのがスペインである。スペインでは、民主化の初期に同じ「支持」の質問で支持が80%を超えていた。これに対し、ラテンアメリカではどの国も、30年間で一度もその水準に達していない。また、報告書がラテンアメリカで民主主義が失敗した例として挙げるのは、ニカラグア、ベネズエラ、エルサルバドルである。
📖 報告書では:序論 p.5、p.8〜9
弱い国家と「票の主権」
報告書は、地域の民主主義の中心的な問題を、有権者が完全な主権を持っていないことだとしている。利益団体や汚職、選挙で選ばれていない経済的権力(「事実上の権力」)が意思決定を左右し、弱い国家は法を貫けないという。納税モラルも低く、税金をすべて払っていると見られている人は過半数に届かない。選挙管理機関の多くも、選挙の公正を守る力を持たない。その例外としてメキシコのINE(国家選挙機関)を挙げている。
📖 報告書では:序論 p.9〜10
この号の調べ方
ラティノバロメトロ協会(チリ・サンティアゴの非営利団体)が、2024年8〜10月にラテンアメリカ17か国で19,214人を対象に行った世論調査の結果報告である。同調査は1995年から測定を続けており、2025年で30年目を迎える。民主主義への支持は、スペインの研究でも使われた同じ「支持」の質問(リンス=モルリーノ式)で測っている。報告書自身は、この調査を民主主義のランキングではなく、2024年の結果報告だと位置づけている。
この号から言えること
- 2010年以来下がり続けていた民主主義支持が52%に戻ったことが、表題「しなやかな民主主義」の根拠である。報告書は、10年分の悪化でも反転しうると結論づけている。
- 家計の見通しは過去最高に明るい一方、国の経済は停滞している。「自分は国より良くなる」という食い違いが、政府への期待の圧力を過去最高に押し上げている。
- 報告書は、民主主義の停滞の背景に、格差の解消が進まないことと国家の弱さがあると論じる。スペインの初期の支持80%超と比べ、出発点そのものが違ったと強調している。
読むときの注意
今回の抜粋に含まれるのは、本文PDFの要旨・目次・序論(p.1〜10)だけである。生活満足度を扱う第II章「EL BIENESTAR(暮らしの充足)」(p.24〜25)の本文は含まれていない。公式メモでは「とても・かなり満足」が79%で1997年以来の最高、最高はコスタリカ・ウルグアイ・グアテマラ・エルサルバドルの85〜89%、最低はボリビアの55%とされるが、これらの数字は抜粋では確認できないため、原典の該当ページで確かめる必要がある。また、意識調査の数値は人々の気分を映すものであり、報告書自身も行動を予測するものではないと述べている。