「「君は魚ではないのに、どうして魚の楽しみが分かるのか」「君は私ではないのに、どうして私に魚の楽しみが分からないと分かるのか」」
— 荘子 『荘子』秋水(知魚楽:濠上の問答)
「知魚楽」として湯川秀樹も好んだ問答
橋の上から魚を見て「魚は楽しんでいるね」と言った荘子と、論理で切り返す恵子の問答。理屈の応酬の末、荘子は「私は濠の上でそれが分かったのだ」と結ぶ ── 分析ではなく共鳴によって世界の楽しみに触れる、という認識のあり方の宣言
- 心理学では
- 荘子の言葉は、他者の喜びを理屈で推し量るのではなく、見て感じ取る力を語っている。心理学ではこれを情動伝染(相手の表情や動きにつられて同じ感情が自分にも生じること)として説明する。Hatfieldら(1993)は、人が他者の表情や姿勢を無意識にまねることで感情を共有する仕組みを、研究の整理から示した。Cracknellら(2016)は水族館の来館者に水槽を眺めてもらう研究を行い、魚の多い水槽ほど気分の改善や心拍の低下が大きいことを見いだした。生き物の楽しげな姿を眺める時間は、それ自体が満喫の体験になる。水辺の魚や庭の鳥に足を止め、分析を脇に置いて味わうことが心のゆとりにつながる。 参考:Hatfieldら(1993)「Emotional Contagion」 ↗/Cracknellら(2016)「Marine Biota and Psychological Wel…」 ↗