幸せの名言集
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今この瞬間の経験に評価せず注意を向けるあり方(マインドフルネス)と、良い経験を味わうこと(savoring)。
「世界の主要ウェルビーイング研究」の概念と代表的な論文です。名言の内容が実証されているという意味ではありません。
「好きこそものの上手なれ」 — 日本のことわざ
好きだからこそ上達する
心理学では このことわざは、心理学でいう内発的動機づけ(報酬のためでなく、活動そのものの楽しさから取り組む意欲)が上達を支えることを言い表している。Cerasoliら(2014)は、40年分の研究を統合したメタ分析で、内発的動機づけが高い人ほど成績がよく、とくに仕事の質が高いことを示した。またVallerandら(2007)はスポーツ選手を対象とした研究で、競技への情熱が強い選手ほど意図的な練習(弱点を意識した集中的な練習)に多く取り組んでおり、それが成績の高さと結びついていることを見いだした。上達を急ぐより、取り組む時間そのものを味わう工夫をすることが、結果として腕を磨く近道になる。 参考:Cerasoliら(2014)「Intrinsic motivation and extrinsic…」 /Vallerandら(2007)「On the Role of Passion in Performa…」 ↗ 「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」 — 孔子 『論語』雍也第六
知る<好む<楽しむの順に境地は深まる
心理学では この言葉は、知識として知る段階から、対象に心惹かれる段階、さらに取り組むこと自体が喜びとなる段階へと関わり方が深まる道筋を示している。心理学では最後の境地を内発的動機づけ(報酬や評価のためでなく、活動そのものの面白さから取り組むこと)と呼び、時を忘れて没頭するフロー体験とも重なる。Cerasoliら(2014)は、長年の研究を統合したメタ分析で、内発的動機づけが高い人ほど仕事や学習の成果、とくに質の高さで優れることと関連すると報告している。学びや仕事の終わりに「何が分かったか」だけでなく「どこが面白かったか」を一つ味わう習慣が、知ることを楽しむことへと育てる助けになる。 参考:Cerasoliら(2014)「Intrinsic motivation and extrinsic…」 人物 春秋時代の思想家 「最良の瞬間は、困難だが価値ある何かを成し遂げようと、心身を限界まで自発的に働かせたときに訪れる」 The best moments usually occur when a person's body or mind is stretched to its limits in a voluntary effort to accomplish something difficult and worthwhile.
— ミハイ・チクセントミハイ 『フロー体験』(1990)
幸福は快適さではなく没入の中にある
心理学では この言葉は、心理学でいう「フロー」(挑戦の難しさと自分の技能がつり合ったときに生じる、時を忘れるほどの没入状態)を言い表している。Csikszentmihalyi & LeFevre(1989)は、働く人に一日に何度も合図を送り、その瞬間の活動と気分を記録してもらう経験抽出法の研究を行った。その結果、フローは余暇よりも仕事中に多く生じており、フローの最中ほど人は幸福感や集中、創造性を高く報告していた。充実は、くつろぎよりも手応えのある挑戦の中に宿るのである。ただし課題が難しすぎると不安に、易しすぎると退屈に傾くため、少し背伸びする程度に難しさを調整するとよい。仕事や趣味に自ら選んだ小さな挑戦を置くことが、最良の瞬間を増やす助けになる。 参考:Csikszentmihalyi & LeFevre(1989)「Optimal experience in work and lei…」 ↗ 人物 ハンガリー出身の心理学者(1934-2021)。フロー理論の提唱者 「遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけん」 — 『梁塵秘抄』 後白河法皇編の今様歌謡集(12世紀)
古典歌謡(パブリックドメイン)
人は遊ぶために生まれてきたのか、という根源的な問い
心理学では この歌は、人の本性に遊びが深く根づいていることを歌っている。歴史家ホイジンガ(1938)は人間を「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」と呼び、文化そのものが遊びの中から生まれたと論じた。心理学では、大人になっても物事を面白がり、軽やかに戯れる傾向を「遊び心(プレイフルネス)」と呼ぶ。Proyerら(2021)は成人を対象にオンラインでの無作為化比較実験を行い、その日に遊び心を発揮した出来事を書き留めるといった課題を一週間続けた人では、幸福感が高まることを示した。遊びは子どもだけの特権ではない。仕事や家事の合間に小さな戯れを見つけ、その楽しさをじっくり味わうことが、毎日を満たす力になる。 参考:ホイジンガ(1938)「Homo Ludens」 ↗ /Proyerら(2021)「Can Playfulness be Stimulated? A R…」 ↗ 「幸福の秘訣は、興味の範囲をできるだけ広くすることだ」 The secret of happiness is this: let your interests be as wide as possible.
— バートランド・ラッセル 『幸福論』(1930)
世界への幅広い興味こそ幸福の源泉
心理学では ラッセルの言う「興味の広さ」は、心理学では好奇心(新しいことを知りたい・体験したいという動機)や経験への開放性(未知のものを受け入れる傾向)にあたる。Kashdan & Steger(2007)は大学生の性格特性と日々の記録を調べ、好奇心が強い人ほど、また好奇心を多く感じた日ほど、人生の満足感や生きる意味を感じやすいことを示した。さらにHellerら(2020)はスマートフォンの位置情報を数か月にわたって記録し、いつもと違う場所を多く訪れた日ほど前向きな気分が高いという関連を見いだした。新しい本を一冊開く、帰り道を一本変えるといった小さな寄り道を重ねることが、日々の満足感につながる。 参考:Kashdan & Steger(2007)「Curiosity and pathways to well-bei…」 /Hellerら(2020)「Association between real-world exp…」 ↗ 人物 英国の哲学者・数学者(1872-1970)。ノーベル文学賞 「よく学び、よく遊べ」 All work and no play makes Jack a dull boy.
— 西洋のことわざ 英語圏の格言の訳
学びと遊びの両立が健全さを保つ
心理学では この言葉は、努力と回復のバランスの大切さを説いている。心理学では、リカバリー(仕事や学業で消耗した心身の力を取り戻す過程)の考え方に通じる。Sonnentag(2003)は働く人を対象に日記法の調査を行い、余暇で十分に回復できたと感じた日ほど、その日の仕事への没頭や自発的な行動が多いことを示した。またSonnentag & Fritz(2007)の研究では、仕事から心理的に離れられる人ほど疲労感が少なかった。ただし遊びの最中も課題が頭を離れない場面では、目の前の楽しさをじっくり味わう意識と組み合わせるとよい。学ぶ時間と遊ぶ時間にはっきり区切りをつけることが、長く伸び続ける力につながる。 参考:Sonnentag(2003)「Recovery, work engagement, and pro…」 /Sonnentag & Fritz(2007)「The Recovery Experience Questionna…」 「フローとは、活動に完全に没入し、他の何ものも問題にならなくなる状態である」 Flow is a state in which people are so involved in an activity that nothing else seems to matter.
— ミハイ・チクセントミハイ 『フロー体験』(1990)
我を忘れる没入こそ最適経験である
心理学では この言葉は、心理学でいう「フロー(挑戦と技能がつり合ったときに生じる深い没入)」の核心を示しており、自己意識が薄れ、時間の感覚が変わる状態を指す。Csikszentmihalyi & LeFevre(1989)は、働く人に一日に何度も合図を送り、そのときの状態を記録してもらう経験サンプリング研究を行った。その結果、フロー状態にあるときほど気分が前向きであった。Killingsworth & Gilbert(2010)も同様の方法で、心が目の前の活動からさまよっているときほど幸福感が低いことを報告している。ただし、課題がやさしすぎても難しすぎても没入は起こりにくいため、少し背伸びする難易度を選ぶとよい。通知を切って一つのことに浸る時間をつくることが、日々を満喫する助けになる。 参考:Csikszentmihalyi & LeFevre(1989)「Optimal experience in work and lei…」 ↗ /Killingsworth & Gilbert(2010)「A wandering mind is an unhappy min…」 ↗ 人物 ハンガリー出身の心理学者(1934-2021)。フロー理論の提唱者 「人生は生きられるためにある。好奇心は、生かし続けなければならない」 Life was meant to be lived, and curiosity must be kept alive.
— エレノア・ルーズベルト 『わたしの自叙伝』(1961)の趣旨
人生への好奇心を絶やさないことが生を味わう鍵
心理学では この名言は、好奇心(新しいことを知りたい、確かめたいという欲求)を、人生を味わうための原動力として大切にする考え方である。Kashdan & Steger(2007)は大学生の日々を日誌法(毎日の記録をつけてもらう方法)で調べ、好奇心の強い人ほど、また好奇心が高まった日ほど、生きる意味や人生満足を強く感じていることを示した。Swan & Carmelli(1996)は高齢者を追跡し、好奇心の強い人ほど数年後も存命している割合が高いことを報告した。好奇心は年を重ねても保てる心の資源である。知らない道を歩く、未知の分野の本を開くなど、小さな「なぜ」を毎日ひとつ追いかけることが、生を生き生きと保つ助けになる。 参考:Kashdan & Steger(2007)「Curiosity and pathways to well-bei…」 /Swan & Carmelli(1996)「Curiosity and mortality in aging a…」 ↗ 人物 米国のファーストレディ・人権活動家(1884-1962) 「人生の意味は、ただ生きているということ、それ自体である」 The meaning of life is just to be alive.
— アラン・ワッツ 『不安の時代の知恵』ほかの趣旨
生の意味を生の外に探さない
心理学では ワッツの言葉は、心理学でいう自己目的的経験(活動そのものが報酬となる状態)や、マインドフルネス(いまの体験に評価を加えずに注意を向けること)に通じる。Brown & Ryan(2003)は大学生や成人を対象とした相関研究と日誌研究で、日ごろからいまに気づいている傾向の強い人ほど、ポジティブな感情や人生満足感が高いことを示した。またKillingsworth & Gilbert(2010)は、スマートフォンで日常の気分をその場で尋ねる経験サンプリング研究を行い、心がいまの活動から離れているときほど幸福感が低いことを見いだした。生の意味を遠い目標に預けず、食事や散歩のひとときを味わうことが、満ち足りた毎日につながる。 参考:Brown & Ryan(2003)「The benefits of being present: Min…」 /Killingsworth & Gilbert(2010)「A Wandering Mind Is an Unhappy Min…」 人物 英国出身の思想家(1915-1973)。禅を西洋に紹介 出典に諸説あり
「1時間の遊びは、1年の会話よりも、その人について多くを教えてくれる」 You can discover more about a person in an hour of play than in a year of conversation.
— プラトン(とされる) 実際は17世紀のリチャード・リンガードの言葉が原型
※プラトンへの帰属は誤り(QI検証済)
遊びの中にこそ人の本当の姿が現れる
心理学では この名言は、言葉による自己呈示(相手にどう見られたいかを調整するふるまい)よりも、夢中になった場面での自然な行動のほうが、その人らしさをよく映すことを指している。Ambady & Rosenthal(1992)は、ごく短い時間の表情やしぐさの観察を扱った研究をまとめたメタ分析で、短い行動の観察からでも人物の評価や結果をよく予測できることを示した。またVazire(2010)は、知的さのように外から見えやすい特性は、本人より周囲の人のほうが正確にとらえる傾向を報告している。人を知りたいときは、話し込むだけでなく一緒にゲームや運動を楽しむ時間をもつ。それは自分自身が遊びを満喫することにもつながる。 参考:Ambady & Rosenthal(1992)「Thin slices of expressive behavior…」 ↗ /Vazire(2010)「Who knows what about a person? The…」 ↗ 人物 古代ギリシャの哲学者(BC427-347) 出典に諸説あり
「子どもは誰でも芸術家である。問題は、大人になっても芸術家のままでいられるかどうかだ」 Every child is an artist. The problem is how to remain an artist once we grow up.
— パブロ・ピカソ(とされる) 典拠不詳(1976年の雑誌記事が初出とされる)
※帰属に諸説あり(Quote Investigatorは晩年の帰属と指摘)
子どもは描くこと・作ること・ごっこ遊びを、評価と関係なく楽しむ。その遊びの構えが、大人になる過程で「上手い/下手」の物差しに置き換えられてしまう ── 創造性と遊び心の喪失についての、最も引用される警句
心理学では この名言は、遊び心(物事を面白がり、楽しむこと自体を目的に取り組む傾向)と内発的動機づけ(評価や報酬ではなく、活動の楽しさから生まれる意欲)の大切さを語っている。Amabile(1979)は大学生にコラージュを作ってもらう実験を行い、作品が評価されると予告された条件では、作品の創造性が低くなることを示した。またProyer(2013)は成人を対象とした調査で、遊び心の強い人ほど人生満足度が高く、楽しい活動を求める傾向と関連することを報告している。上手か下手かをいったん脇に置き、落書きや料理を結果を問わずに楽しむ時間が、大人の中に眠る芸術家を呼び覚ます。 参考:Amabile(1979)「Effects of external evaluation on …」 ↗ /Proyer(2013)「The well-being of playful adults: …」 ↗ 人物 スペインの画家(1881-1973)。キュビスムの創始者 「燃えたよ……真っ白に……真っ白な灰に」 — 矢吹丈(高森朝雄・ちばてつや『あしたのジョー』) 『あしたのジョー』最終回(講談社)
すべてを出し尽くした者だけが到達する静けさを描いた、日本マンガ史上最も有名なラストシーン。勝敗ではなく「燃え尽きたかどうか」を生の基準に置く ── 完全燃焼という日本的な幸福観の決定的なイメージとなった
心理学では この名言は、心理学でいう「調和的情熱」(自分で選んだ活動に心から打ち込む状態)と、悔いを残さない生き方を描いている。Gilovich & Medvec(1995)は人々の後悔を調べた一連の研究で、長い目で見ると「やったこと」より「やらなかったこと」への後悔のほうが心に残りやすいことを示した。出し尽くした経験は、この種の後悔を残しにくい。またVallerandら(2003)の研究では、活動に調和的な情熱を抱く人ほど、取り組みの中で前向きな感情を多く経験していた。ただし、義務感に追われる「強迫的情熱」は否定的な感情と結びつきやすいため、燃え尽き症候群(心身の消耗)と区別し、休息と組み合わせるとよい。結果より「今日は出し切ったか」を一日の終わりに振り返ることが、充実感につながる。 参考:Gilovich & Medvec(1995)「The experience of regret: What, wh…」 ↗ /Vallerandら(2003)「Les passions de l'âme: On obsessiv…」 ↗ 人物 ちばてつや(1939-)は日本の漫画家。原作は梶原一騎(高森朝雄名義) 「オラ、ワクワクすっぞ」 — 孫悟空(鳥山明『ドラゴンボール』) 『ドラゴンボール』(集英社)
強敵を前にして恐怖ではなく高揚を口にする悟空の決め台詞。脅威を前にした身体の高ぶりを「怖い」ではなく「ワクワク」と読む ── 挑戦評価(チャレンジ・アプレイザル)を一言で体現したキャラクター造形
心理学では 悟空の一言は、強敵を前にした胸の高鳴りを脅威ではなく挑戦として受け止める「挑戦評価(困難を力試しの機会と見る捉え方)」を体現している。Brooks(2014)は、カラオケやスピーチ、計算テストの直前に「ワクワクしている」と口に出してもらう実験を行い、「落ち着こう」と言い聞かせるよりも成績が良くなることを示した。Jamiesonら(2012)も、体の高ぶりは実力を出す助けになると伝える介入が、ストレス場面での心臓や血管の反応をより健康的な方向に整えることを報告している。高ぶりは鎮めるよりも、意味を読み替えるほうが味方になるのである。大事な発表や新しい挑戦の前に鼓動が速まったら、「ワクワクしてきた」と声に出すことが、一歩を踏み出す助けになる。 参考:Brooks(2014)「Get excited: Reappraising pre-perf…」 ↗ /Jamiesonら(2012)「Mind over matter: Reappraising aro…」 ↗ 人物 鳥山明(1955-2024)は日本の漫画家。世界的な影響を持つ作品を残した 「迷った時はね、「どっちが正しいか」なんて考えちゃダメよ。……「どっちが楽しいか」で決めなさい」 — 金子シャロン(小山宙哉『宇宙兄弟』) 『宇宙兄弟』(講談社)
主人公の恩師である天文学者シャロンの助言。「正しさ」の比較は答えが出ずに人を止めるが、「楽しさ」は身体が既に知っている ── 意思決定の基準を頭から心へ移す、大人のための進路指導の名台詞
心理学では この助言は、内発的動機づけ(活動そのものの楽しさや興味から生まれる意欲)を判断の軸にせよという教えである。「唯一の正解」を探し続ける態度は最大化傾向(常に最善を求める姿勢)と呼ばれる。Iyengarら(2006)は就職活動中の大学生を追った縦断研究で、最大化傾向の強い人ほど給与の高い職を得ながらも、仕事への満足度が低く、不安や後悔を抱えやすいことを示した。一方、Nyeら(2012)はメタ分析で、興味と仕事の内容が合う人ほど成績が高く、長く続ける傾向があることを報告した。迷ったときは「どちらに心が弾むか」を自分に問い、その感覚を確かな情報として選択に加える。 参考:Iyengarら(2006)「Doing Better but Feeling Worse」 ↗ /Nyeら(2012)「Vocational Interests and Performan…」 ↗ 人物 小山宙哉(1978-)は日本の漫画家。宇宙飛行士兄弟の物語 出典に諸説あり
「真剣にやれよ! 仕事じゃねぇんだぞ!」 — タモリ(とされる) 『タモリ倶楽部』の精神を表す言葉として流通
※本人の発言としての一次出典は特定されていない
「遊びだから手を抜く」の逆転 ── 仕事は義務でやれるが、遊びは真剣でなければ面白くならない。遊びにこそ全力を出せという、深夜番組を40年続けた芸人の遊びの哲学として愛される言葉
心理学では この言葉は、心理学でいう「フロー」(挑戦と技能がつり合い、時を忘れて没頭する状態)や「シリアス・レジャー」(趣味に技能と努力を本気で注ぎ込む余暇の過ごし方)の考え方と重なる。Csikszentmihalyi & LeFevre(1989)は、働く大人の日常を経験抽出法(一日に何度も合図を受け、その時の状態を記録する方法)で調べた。その結果、テレビ視聴のような受け身の余暇ではフローが起こりにくいことを示した。またHeoら(2013)の調査では、シリアス・レジャーに打ち込む高齢者ほど、生活満足度や主観的な健康が高い傾向にあった。遊びを面白くするのは、本気で挑む姿勢そのものである。週末の趣味に小さな目標を一つ立てて全力で臨むことが、満喫への近道になる。 参考:Csikszentmihalyi & LeFevre(1989)「Optimal experience in work and lei…」 ↗ /Heoら(2013)「Serious Leisure, Life Satisfaction…」 ↗ 人物 日本のタレント(1945-)。『笑っていいとも!』を32年、『タモリ倶楽部』を40年続けた 「ボールは、ともだち。こわくないよ」 — 大空翼(高橋陽一『キャプテン翼』) 『キャプテン翼』(集英社)
ボールを「制御すべき対象」ではなく「ともだち」と呼ぶことで、恐れと力みを溶かしてしまう発想。世界中のプロ選手が「この言葉でサッカーを始めた」と語る、遊びの精神の輸出品
心理学では この言葉は、対象を「脅威」ではなく親しい「挑戦」として捉え直す認知的再評価(物事の意味づけを変えて感情を整えること)の実践である。Brooks(2014)は、人前で歌う・話すといった緊張場面の実験で、不安を「わくわくしている」と言い換えた人は、落ち着こうとした人よりも成績が高まることを示した。またBeilock & Carr(2001)は、ゴルフのパットなどを用いた実験で、プレッシャーの下で動作を一つひとつ意識して制御しようとすると、熟練者の技能がかえって崩れることを示した。新しい仕事や趣味に向かうときも、相手を「ともだち」と呼んでみることが、力みをほどき、夢中になる時間への入り口になる。 参考:Brooks(2014)「Get excited: Reappraising pre-perf…」 ↗ /Beilock & Carr(2001)「On the fragility of skilled perfor…」 ↗ 人物 高橋陽一(1960-)は日本の漫画家。作品は世界のサッカー選手に影響を与えた 「「グッとくる」ものを、探しに行く。好きになる努力をすると、世界は面白いものだらけになる」 — みうらじゅん 『「ない仕事」の作り方』ほかの趣旨
ゆるキャラ、マイブーム、いやげ物 ── 誰も見向きもしないものを「好きになってみる」ことで仕事にしてきた方法論。面白さは対象に内在するのではなく、好きになる努力の側で製造できる、という逆転
心理学では この名言は、心理学でいう「興味の成長理論」(興味は見つけるものではなく、関わりながら育てるものだという考え方)を体現している。O'Keefeら(2018)は大学生を対象にした一連の研究で、興味は生まれつき決まっていると考える人ほど、自分の関心の外にある話題に興味を示しにくく、内容が難しくなると興味を失いやすいことを示した。またSansoneら(1992)は、単調な作業を続ける理由を与えられた人が、やり方に変化をつけて作業を自ら面白くすることを実験で明らかにした。面白さは対象だけでなく、関わる側の工夫からも生まれるのである。気にも留めていなかったものに一度じっくり目を向け、面白がれる切り口を探すことが、毎日を豊かにする入り口になる。 参考:O'Keefeら(2018)「Implicit Theories of Interest: Fin…」 ↗ /Sansoneら(1992)「Once a boring task always a boring…」 ↗ 人物 日本のイラストレーター・エッセイスト(1958-)。「マイブーム」「ゆるキャラ」の命名者 「ネガティブを潰すのは、ポジティブじゃない。没頭だ」 — オードリー若林正恭 『ナナメの夕暮れ』(2018)
「ポジティブになろう」としても自意識は消えない ── 消えるのは、何かに没頭している時間だけだった、という発見。人見知り芸人が自意識との30年戦争の末に見つけた、実用的すぎる結論
心理学では この名言は、心理学でいう「フロー」(作業に没入し、時間や自分を忘れる状態)の核心を突いている。Csikszentmihalyi(1990)は、フローの特徴として自意識の消失を挙げた。Wegnerら(1987)の実験では、ある考えを抑え込むよう指示された人は、のちにかえってその考えが浮かびやすくなった。嫌な思いは、意志の力で打ち消そうとするほど居座るのである。Killingsworth & Gilbert(2010)の日常の調査でも、心がいまの活動から離れているときほど幸福感は低かった。気分が沈む日は、考えを変えようとするより、料理や掃除など注意を丸ごと預けられる作業に手をつけることが助けになる。 参考:Csikszentmihalyi(1990)「Flow: The Psychology of Optimal Ex…」 ↗ /Wegnerら(1987)「Paradoxical effects of thought sup…」 ↗ /Killingsworth & Gilbert(2010)「A Wandering Mind Is an Unhappy Min…」 人物 日本のお笑い芸人(1978-)。オードリーのツッコミ。エッセイストとしても高評価 「努力を努力だと思ってる時点で、好きなやつには勝てない。俺は好きだから、やってるだけ」 — 明石家さんま ラジオ・番組での発言の趣旨
「努力は報われる」という言葉が嫌い、と語る文脈での持論。歯を食いしばる努力は、笑いながらやる「好き」に長期戦で敵わない ── 60年笑い続ける本人の稼働時間が、そのまま証明になっている
心理学では この言葉は、内発的動機づけ(活動そのものの楽しさから生まれるやる気)と、調和的情熱(好きな活動が生活に無理なく溶け込んだ状態)の強さを語っている。Vallerandら(2007)はバスケットボールや水球などの選手を対象とした研究で、活動への情熱が強い人ほど上達のための意図的な練習に多くの時間を注ぎ、その練習量が成績の高さと結びつくことを示した。好きだからこそ、練習が自然に積み重なるのである。ただし、やめられない焦りに駆られる情熱は消耗を招きやすく、楽しさを保つ工夫と組み合わせるとよい。日々の仕事でも、自分が「好き」と感じる部分を見つけて時間を注ぐことが、長く続く力につながる。 参考:Vallerandら(2007)「On the Role of Passion in Performa…」 ↗ 人物 日本のお笑いタレント(1955-) 「「君は魚ではないのに、どうして魚の楽しみが分かるのか」「君は私ではないのに、どうして私に魚の楽しみが分からないと分かるのか」」 — 荘子 『荘子』秋水(知魚楽:濠上の問答)
「知魚楽」として湯川秀樹も好んだ問答
橋の上から魚を見て「魚は楽しんでいるね」と言った荘子と、論理で切り返す恵子の問答。理屈の応酬の末、荘子は「私は濠の上でそれが分かったのだ」と結ぶ ── 分析ではなく共鳴によって世界の楽しみに触れる、という認識のあり方の宣言
心理学では 荘子の言葉は、他者の喜びを理屈で推し量るのではなく、見て感じ取る力を語っている。心理学ではこれを情動伝染(相手の表情や動きにつられて同じ感情が自分にも生じること)として説明する。Hatfieldら(1993)は、人が他者の表情や姿勢を無意識にまねることで感情を共有する仕組みを、研究の整理から示した。Cracknellら(2016)は水族館の来館者に水槽を眺めてもらう研究を行い、魚の多い水槽ほど気分の改善や心拍の低下が大きいことを見いだした。生き物の楽しげな姿を眺める時間は、それ自体が満喫の体験になる。水辺の魚や庭の鳥に足を止め、分析を脇に置いて味わうことが心のゆとりにつながる。 参考:Hatfieldら(1993)「Emotional Contagion」 ↗ /Cracknellら(2016)「Marine Biota and Psychological Wel…」 ↗ 「之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」 — 孔子 『論語』雍也第六
「知好楽」として知られる
知っている者は、好きな者に敵わない。好きな者は、楽しんでいる者に敵わない ── 知→好→楽という関与の三段階を示した、動機づけ論の東洋古典。最上位が「努力」でも「極める」でもなく「楽しむ」である点が要諦
心理学では この言葉は、心理学でいう内発的動機づけ(活動そのものの面白さから生まれる意欲)の深まりを見事に言い当てている。Hidi & Renninger(2006)は、興味が一時的な関心から、知識と愛着をともなう持続的な興味へと段階的に育つというモデルを示し、知ることと好むことが結びついていく過程を描いた。さらにCerasoliら(2014)は、40年分の研究を統合したメタ分析で、内発的動機づけが強い人ほど仕事や学業の成果、とりわけその質が高いことを示した。楽しむ者が強いのは、取り組むこと自体が報酬になるからである。日々の仕事や学びでも、成果より「面白い」と感じる瞬間に目を向けることが、長く深く続ける力につながる。 参考:Hidi & Renninger(2006)「The Four-Phase Model of Interest D…」 ↗ /Cerasoliら(2014)「Intrinsic motivation and extrinsic…」 人物 春秋時代の思想家 「踊っていると、すべてを忘れて、自分が消えて、体の中に火がついて。鳥みたいに、電気みたいに、飛んでるんだ」 Like electricity.
— ビリー(映画『リトル・ダンサー』) スティーヴン・ダルドリー監督(2000)。原題 Billy Elliot
「踊っているとき、どんな気持ちか」というオーディションの質問への、炭鉱町の少年の答え。自己意識の消失、時間の変容、身体の高揚 ── フロー体験の学術的記述と驚くほど一致する、映画史上最良のフローの証言
心理学では ビリーの言葉は、心理学でいうフロー(活動に深く没入し、我を忘れる最適体験)の描写そのものである。Csikszentmihalyi(1990)は、行為と意識の融合、自己意識の消失、時間感覚の変化をフローの特徴として整理した。Hefferon & Ollis(2006)はプロのダンサーへの面接研究で、振付が体に入り自信があるときに、踊りが「かちっとはまる」没入が生まれることを見いだした。またCsikszentmihalyi & LeFevre(1989)の経験抽出法(日常の中で随時体験を記録する方法)による研究では、フローの最中ほど人は前向きな体験を報告していた。腕前に見合った少し難しい課題に取り組み、我を忘れる時間を暮らしに意識してつくることが、日々の充実につながる。 参考:Csikszentmihalyi(1990)「Flow: The Psychology of Optimal Ex…」 ↗ /Hefferon & Ollis(2006)「‘Just clicks’: an interpretive phe…」 ↗ /Csikszentmihalyi & LeFevre(1989)「Optimal experience in work and lei…」 ↗ 人物 バレエに出会った労働者階級の少年の実話的物語 「世の中には二種類の人間がいる。スウィングする者と、しない者だ」 — 竹中直人演じる教師(映画『スウィングガールズ』) 矢口史靖監督(2004)
東北の女子高生たちがビッグバンドに目覚める青春映画の決め台詞。上手いか下手かではなく、ノッているかどうか ── 音楽の(そして人生の)分類軸を技能から享受へずらす宣言
心理学では この名言は、技能の高低ではなく、いまの体験に乗って楽しめるかどうかで人を分ける。これは味わうこと(セイヴァリング:良い体験に注意を向け、その喜びを引き延ばす心の働き)に近い。Joseら(2012)は日記法の研究で、日々の良い出来事をよく味わう人ほど、その出来事が気分の良さにつながりやすいことを示した。またPearceら(2015)は社会人講座の受講者を追跡し、合唱クラスでは手芸などのクラスより早く仲間との絆が深まることを報告した。上手でなくても加わり、一緒に音に乗ること自体に価値がある。うまくできるかを考える前に、まず輪に入ってリズムに身を任せることが、毎日を満喫する第一歩になる。 参考:Joseら(2012)「Does savoring increase happiness? …」 ↗ /Pearceら(2015)「The ice-breaker effect: singing me…」 ↗ 人物 ジャズに沸く落ちこぼれ高校生たちの物語 「僕がやっていることはぜんぶ、「発見の喜び」のためなんだ」 The prize is the pleasure of finding the thing out.
— リチャード・ファインマン 『発見する喜び(The Pleasure of Finding Things Out)』ほか
ノーベル賞の栄誉も肩書も「くだらない」と言い、物理を続ける理由をただ「見つける瞬間の快感」に置いた物理学者。金庫破り、ボンゴ、絵 ── あらゆる遊びに同じ好奇心で没頭した人生が、内発的動機の見本市になっている
心理学では ファインマンの言う「発見の喜び」は、内発的動機づけ(活動そのものの面白さから生まれる意欲)と、知的好奇心(知らないことを知りたいという欲求)が満たされる体験にあたる。Kangら(2009)はクイズの答えを待つ人の脳を調べた。その結果、好奇心が強い問いほど報酬にかかわる領域がよく活動し、答えも記憶に残りやすいことが分かった。知ること自体が、脳にとってのごほうびなのである。またDeciら(1999)は実験研究をまとめて分析(メタ分析)し、面白い課題に物の報酬を前もって約束すると、自分から取り組む意欲がかえって下がりやすいことを示した。日々の仕事でも、ふと浮かんだ「なぜ」を書き留め、自分で確かめる時間をもつことが、学ぶ喜びを長続きさせる。 参考:Kangら(2009)「The Wick in the Candle of Learning…」 ↗ /Deciら(1999)「A meta-analytic review of experime…」 人物 米国の理論物理学者(1918-1988)。ノーベル物理学賞 「私は、浜辺で貝殻を拾って遊ぶ子どもにすぎない。真理の大海は、手つかずのまま、目の前に広がっている」 I seem to have been only like a boy playing on the seashore... whilst the great ocean of truth lay all undiscovered before me.
— アイザック・ニュートン 晩年の述懐として伝わる
伝記(スペンス)に残る晩年の言葉
万有引力を発見した人類史級の知性が、自分の業績を「浜辺の貝殻拾い」と呼んだ言葉。謙遜であると同時に、「まだ海がまるごと残っている」という無限の遊び場の宣言でもある ── 知の喜びと畏敬が同居する述懐
心理学では この言葉は、知的謙虚さ(自分の知識には限りがあると認める姿勢)と畏敬(自分を超える広大なものに心を打たれる感情)が、好奇心と結びついた姿を表している。Learyら(2017)は複数の調査で、知的謙虚さの高い人ほど好奇心や考えることへの意欲が強く、異なる意見にも開かれていることを示した。またKashdan & Steger(2007)は大学生の日誌調査で、好奇心を強く感じた日ほど人生の意味や満足感も高いことを報告している。「まだ知らないこと」は欠乏ではなく、楽しみの在庫なのである。分からないことに出会ったら、恥じる前に「面白い貝殻を見つけた」と眺めてみることが、学ぶ毎日を味わい深いものにする。 参考:Learyら(2017)「Cognitive and Interpersonal Featur…」 ↗ /Kashdan & Steger(2007)「Curiosity and pathways to well-bei…」 人物 英国の物理学者・数学者(1642-1727) 「遊び(PLAY)は、哺乳類の脳に生まれつき組み込まれた、基本情動システムの一つである」 — ヤーク・パンクセップ 『情動の神経科学(Affective Neuroscience)』(1998)(要旨)
ネズミをくすぐると超音波で「笑う」── その発見で知られる研究者は、探索・恐怖・怒りなどと並ぶ七つの基本情動システムの一つに「遊び」を数えた。遊びは余暇の贅沢ではなく、社会性と脳を育てるために進化が用意した本能である
心理学では この言葉は、遊びを後から身につける習慣ではなく、生得的な情動システム(生まれつき脳に備わった感情の回路)として捉える情動神経科学の考え方を示している。Panksepp & Burgdorf(2000)はラットをくすぐる実験を行い、ラットが「笑い」に似た高い超音波の声を発し、くすぐる手に自ら近づいてくることを示した。遊びは、それ自体が報酬となる体験なのである。人間でも、Proyerら(2021)の無作為化比較試験(くじ引きで条件を分けて効果を確かめる実験)で、日常の中で遊び心を発揮する課題に取り組んだ大人には、ウェルビーイング(心の満たされた状態)が高まる効果がみられた。忙しい日ほど、ふざけ合いや寄り道を少しだけ差し込むことが、心の栄養になる。 参考:Panksepp & Burgdorf(2000)「50-kHz chirping (laughter?) in res…」 ↗ /Proyerら(2021)「Can Playfulness be Stimulated? A R…」 ↗ 人物 エストニア出身の神経科学者(1943-2017)。「ネズミをくすぐった科学者」 📮 毎週土曜の朝、メールで届きます その週にご紹介したウェルビーイング研究のダイジェストを無料でお届けします。
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