幸せの名言集

道元の名言3選

鎌倉時代の禅僧(1200-1253)。曹洞宗開祖

「仏道をならふといふは、自己をならふなり」

— 道元 『正法眼蔵』現成公案

仏道の探究とは自己の探究にほかならない

心理学では
この一句は、仏道の修行とは自分の心をありのままに見つめることだと説く。心理学でいえば、好奇心にもとづく自己探究である「内省(リフレクション)」にあたる。Trapnell & Campbell(1999)は質問紙を用いた相関研究で、自己への注意を、興味から自分を探る内省と、不安から同じ考えを繰り返す「反すう」に分けた。そして、内省は経験への開放性と、反すうは神経症傾向と関連することを示した。続く「自己をわするる」は、自分への囚われが薄れる「自己超越」に通じる。Yadenら(2017)はレビューで、この体験が幸福感と関連することを整理している。自分の反応を責めずに眺める時間を日々持つことが、自己を知り、自己から自由になる入口となる。 参考:Trapnell & Campbell(1999)「Private self-consciousness and the…」 ↗/Yadenら(2017)「The Varieties of Self-Transcendent…」 ↗
「愛語、能く廻天の力あることを、学すべきなり」

— 道元 『正法眼蔵』菩提薩埵四摂法

「向かいて愛語を聞くは面を喜ばしめ、心を楽しくす。向かわずして愛語を聞くは、肝に銘じ魂に銘ず」と続く

慈しみの言葉(愛語)には、天をめぐらすほどの力がある ── それを学び知るべきだ。面と向かって褒める言葉は人を喜ばせ、陰で語られた愛語は人の心に深く刻まれる、と道元は言葉の力を精密に分析している

心理学では
道元のいう愛語は、心理学でいえば向社会的コミュニケーション(相手を思いやり、温かさを伝える言葉かけ)にあたる。Zhao & Epley(2021)の一連の実験では、ほめる側は相手がどれほど喜ぶかを過小評価しがちで、受け手は予想よりずっと大きな喜びを感じていた。また、Walster & Festinger(1962)の実験では、自分に聞かせるつもりのない会話を偶然耳にしたときのほうが、人はその内容を信じやすかった。陰で語られた愛語が深く届くという道元の洞察と重なる。照れくさくても、感じた良さはその場で言葉にし、本人のいない場でもその人の良いところを語ることが、周りの空気を変える一歩になる。 参考:Zhao & Epley(2021)「Insufficiently complimentary?: Und…」 ↗/Walster & Festinger(1962)「The effectiveness of "overheard" p…」 ↗
「而今(にこん)── いま、この時をおいて、他に時はない」

— 道元 『正法眼蔵』有時

時間は過去から未来へ流れ去る川のようなものではなく、「今」というかたちでしか存在しない、という道元の時間論。過ぎた時を悔やみ、まだ来ない時を思い煩う心に対して、生きられるのは常に「いま」だけであることを示す

心理学では
道元の「而今」は、心理学でいえばマインドフルネス(いまの経験に、良し悪しの判断を加えずに注意を向けること)に当たる。過去や未来ではなく、現在に注意を置くあり方である。Killingsworth & Gilbert(2010)は、スマートフォンで日常のさまざまな時点の気分と考えごとを尋ねる経験サンプリング研究(暮らしの中で繰り返し記録してもらう調査法)を行った。その結果、心が目の前の活動から離れてさまよっているときほど、人の幸福感は低かった。またBrown & Ryan(2003)は、日頃から「いま、ここ」に気づいている傾向の強い人ほど、心理的ウェルビーイングが高いことを報告している。悔いや心配が浮かんだら、呼吸や手元の作業にそっと注意を戻す。その小さな繰り返しが、「いま」を生きることにつながる。 参考:Killingsworth & Gilbert(2010)「A Wandering Mind Is an Unhappy Min…」/Brown & Ryan(2003)「The benefits of being present: Min…」

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