この名言は、生活の糧を得ることと人生を豊かにすることは別物であり、後者は向社会的行動(他者のためになる行動)から生まれると説いている。Dunnら(2008)の実験では、参加者に少額のお金を渡し、その日のうちに自分のためか他人のために使うよう割り当てた。その結果、他人のために使った人のほうが夕方の幸福感が高かった。同じお金でも、使い道が「与える」に向くと心の満足が変わるのである。さらにMartela & Ryan(2016)は、自分が誰かの役に立っているという実感(ベネフィセンス)が、幸福感や人生の意味の感覚と結びついていることを示した。稼いだものの一部を誰かのために使う、職場で同僚に手を貸すといった小さな「与える」を日々に組み込むことが、人生の手ごたえにつながる。 参考:Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」/Martela & Ryan(2016)「The Benefits of Benevolence: Basic…」
人物
英国の政治家(1874-1965)。第二次大戦期の首相
出典に諸説あり
「喜びを分かち合えば二倍になり、悲しみを分かち合えば半分になる」
Shared joy is a double joy; shared sorrow is half a sorrow.
— スウェーデンのことわざ(とされる) 欧州各国に類似のことわざがある
感情の共有は喜びを増やし、苦しみを減らす
心理学では
この名言は、心理学でいう「資本化」(良い出来事を人に話して喜びを膨らませること)と、社会的支援の「緩衝効果」(人とのつながりがストレスの衝撃を和らげる働き)を言い当てている。Gableら(2004)の日誌研究では、良い出来事を人に話した日ほど肯定的な気分が高く、話し相手が熱意をもって応じてくれる関係ほど満足度が高かった。またCoanら(2006)は、既婚女性に電気ショックを予告する実験で、夫の手を握ると脳の脅威反応が弱まることを示した。うれしい知らせには身を乗り出して応え、つらいときは一人で抱えずに身近な人へ打ち明けることが、自分と相手の双方の支えになる。 参考:Gableら(2004)「What Do You Do When Things Go Righ…」 ↗/Coanら(2006)「Lending a Hand」 ↗
出典に諸説あり
「他者への奉仕は、この地上に部屋を借りるために払う家賃である」
Service to others is the rent you pay for your room here on earth.
この名言は、向社会的行動(他者のためになる行い)が、行う本人の幸福感も高めるという知見と重なる。Dunnら(2008)は、参加者にお金を渡し、自分のために使うか他人のために使うかを無作為に割り当てる実験を行った。その結果、他人のために使った人のほうが、その日の終わりの幸福感が高かった。さらにAkninら(2013)は、世界の多くの国の調査で、他者にお金を使う人ほど幸福感が高いことを見いだした。経済状況の異なる国々で行った実験でも、同様の結果が得られている。同僚への差し入れや家族へのささやかな贈り物など、誰かのための小さな出費や手間を意識して増やすことが、自分の心を満たすことにつながる。 参考:Dunnら(2008)「From wealth to well-being: Spendin…」 ↗/Akninら(2013)「Prosocial spending and well-being:…」
Do all the good you can, by all the means you can, in all the ways you can.
— ジョン・ウェスレー(とされる) 「ウェスレーのルール」として流通
※本人の著作に定型句としては確認されていない
善行の機会を最大化せよ
心理学では
この名言は、向社会的行動(他者の利益になる自発的な行い)を、手段や相手を限らず広げることを勧めている。Dunnら(2008)は、参加者にお金を渡して自分のためか他人のために使うよう割り当てる実験を行い、他人のために使った人のほうがその日の幸福感が高まることを示した。さらにAkninら(2013)は世界の多数の国の調査で、他者のためにお金を使う人ほど幸福度が高い傾向が、国や所得水準を問わず見られることを報告した。ただし、義務感から無理を重ねると負担になるため、自分で選んだ親切であることを大切にするとよい。小さな贈り物やひと声など、手の届く善行を日々に散りばめることが、自分自身の幸福も育てる。 参考:Dunnら(2008)「From wealth to well-being: Spendin…」 ↗/Akninら(2013)「Prosocial spending and well-being:…」
この名言は、心理学でいう向社会的支出(他者のためにお金を使うこと)が幸福感と結びつくという知見を表している。Dunnら(2008)は、参加者にお金を渡し、その日のうちに自分のためか他人のために使うよう割り振る実験を行った。その結果、他人のために使った人のほうがその日の終わりの幸福感が高く、渡した金額の大小は結果を左右しなかった。さらにAkninら(2013)は、世界の多くの国のデータで、他者への支出が多い人ほど幸福感が高いことを示し、カナダやウガンダなどでの実験でも同じ向きの結果を得た。ささやかな差し入れや贈り物でも、相手の喜ぶ顔を思い浮かべて選ぶことが、自分の心を温めることにつながる。 参考:Dunnら(2008)「From wealth to well-being: Spendin…」 ↗/Akninら(2013)「Prosocial spending and well-being:…」
人物
カナダの心理学者。ブリティッシュコロンビア大学教授
「実の商人は、先も立ち、我も立つことを思うなり」
— 石田梅岩 『都鄙問答』(1739)
相手の利益と自分の利益の両立が本当の商いである
心理学では
この言葉は、交渉研究の「二重関心モデル」(自分と相手の両方の利益に関心を払うことが、互いに得をする解決を生むという考え)を言い当てている。De Dreuら(2000)は交渉の実験研究を統合したメタ分析で、相手の利益にも目を向ける動機を持つ交渉者ほど争いが少なく、双方の取り分の合計が大きい合意に至ることを示した。その傾向は、自分の要求も安易には譲らない場合にとくにはっきり表れた。Grant(2013)のいう「他者志向型ギバー」(自分を犠牲にしない与え手)にも通じる知恵である。商談や家族の話し合いでは、相手の望みを尋ね、自分の望みも率直に伝えることが、双方が立つ答えへの近道になる。 参考:De Dreuら(2000)「Influence of social motives on int…」 ↗/Grant(2013)「Give and Take」 ↗
この名言は、自分の名前が持つ強い自己関連性(自分に関わる情報ほど注意を引き、重く受け止められる性質)を言い当てている。Moray(1959)は、左右の耳に別々の音声を流して片方だけに集中させる実験で、聞き流していた側の音声でも、自分の名前が含まれると気づかれやすいことを示した。これが、騒がしい場でも自分の名前だけは耳に入る「カクテルパーティー効果」である。さらにHowardら(1995)の実験では、相手が自分の名前を覚えていた条件の参加者は、その相手の頼みに応じやすくなった。名前を覚えていることが、相手への敬意として受け取られたのである。初対面で聞いた名前を会話の中ですぐに呼んでみることが、手間のかからない確かな承認として相手に届く。 参考:Moray(1959)「Attention in Dichotic Listening: A…」 ↗/Howardら(1995)「What's in a Name? A Complimentary …」 ↗