2026.09.13

はぴテク相談室:先が見えない不安と、それでも希望を持つ話

相談者

はぴテクさん、最近ニュースを見るのがしんどくて。気候変動とか、戦争とか、AIで仕事なくなるかもとか…。将来のことを考えると不安で、何をしても「どうせ先は分からないし」って気持ちになっちゃうんです。

はぴテクさん
はぴテクさん

それはしんどいですね。でも最初に言わせてください。その不安、実はまったく変じゃないんですよ。最新の心理学では、そういう気持ちを「壊れた心のサイン」ではなく、「本当に不確実な世界への、健全でまっとうな反応」と捉える考え方が出てきています。

相談者

えっ、まっとうな反応? 私、メンタル弱いだけかと思ってました。

はぴテクさん
はぴテクさん

むしろ逆で、ちゃんと現実を見ている証拠、勇気の証とも言われています。今日はオランダの研究チームが発表したばかりの「実存的希望」という考え方を紹介させてください。まさに「先が読めない時代の希望」を扱った理論なんです。

相談者

実存的希望…? 普通の希望と違うんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

いい質問です。これまで心理学で「希望」というと、「目標があって、そこへの道筋が描けて、自分で進める」という前提のものでした。たとえば「資格を取って転職するぞ」みたいな。

相談者

ああ、それなら分かります。でも今の私、その「目標」自体が描けないんですよね。未来がどうなるか分からなすぎて。

はぴテクさん
はぴテクさん

そこなんです。従来の希望理論は「未来がある程度予測できる」ことが前提。でも気候変動や社会の分断みたいに、未来そのものが読めない状況では、その前提が崩れちゃう。だから研究者たちは、目標が描けなくても持てる希望、「実存的希望」を提案したんです。

相談者

目標がなくても持てる希望…。想像つかないなぁ。それってどういう中身なんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

3つの要素で説明されています。1つ目は「実存的信頼」。どんな未来かはまだ分からなくても、「それでも関わる価値のある未来はある」という根っこの信頼です。2つ目は「意味」。バラバラで訳が分からない経験の中からでも、意味を紡ぎ直していく力。3つ目は「主体性」。結果が読めなくても、良い方向に一歩動く力です。

相談者

うーん、1つ目の「信頼」が一番難しそう…。だって根拠ないじゃないですか、未来が良くなるなんて。

はぴテクさん
はぴテクさん

実は根拠がないところがポイントなんです。チェコの劇作家で大統領にもなったハヴェルの言葉が論文でも引かれていて、「希望とは心の方向づけであり、目の前の世界を超えていくもの」だと。予測じゃなくて、構え、なんですね。天気予報じゃなくて、コンパスみたいなもの。

相談者

コンパスかぁ。でも、希望を持つのってちょっと怖くないですか? 期待して裏切られたら、余計へこみそうで。

はぴテクさん
はぴテクさん

鋭い! 実はそれ、「希望への恐れ」という名前がついた研究テーマなんです。がっかりするのが怖くて、希望を感じること自体を避けてしまう心理。だからこそ「裏切られるかもしれないけど、それでも可能性に開かれていよう」という実存的信頼が大事になる、と論文は言っています。

相談者

私、完全にそれです…。で、その実存的希望って、どうやったら持てるようになるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

論文では4つのプロセスが提案されています。まず1つ目が「不確実さを受け入れる」。分からないことを消そうとせず、「分からないまま抱える」練習です。

相談者

それができたら苦労しないような(笑)。不安って、消したくなりません?

はぴテクさん
はぴテクさん

なりますよね(笑)。でも研究によると、不安を無理に消そうとするほど、かえって苦しくなることが分かっています。コツは、「未来が分からないのは自分だけじゃない、誰も確実には知らない」と気づくこと。「みんな一緒」と思えると、不確実さの中でも少し落ち着けるそうです。しかも不確実って、悪いことばかりじゃない。驚きや新しい可能性への扉でもあるんです。

相談者

みんな分からないのか…。たしかに、専門家でも予測外してますもんね。2つ目は?

はぴテクさん
はぴテクさん

「価値観を言葉にする」です。先が見えないと目標は立てられない。でも「何を大事にして生きたいか」なら、今すぐ言えるはずなんです。たとえば相談者さんは、どんなことを大事にしたいですか?

相談者

えっと…、家族とか、身近な人に優しくいたい、ですかね。あと、正直でいたい、とか。

はぴテクさん
はぴテクさん

素敵です。そしてここが大事なんですが、価値は目標と違って「達成」がないんです。「優しくいる」は今日もできるし、10年後もできる。未来がどうなろうと、進む方向として持ち続けられる。これが、先の見えない時代のコンパスになるんですね。

相談者

なるほど! 目標は未来に依存するけど、価値観は未来がどうでも持てるのか。ちょっと気が楽になってきました。3つ目は?

はぴテクさん
はぴテクさん

「未来する(futuring)」です。面白い名前でしょう。過去の延長で未来を予測するんじゃなくて、「ありえないような未来」まで自由に想像してみることです。研究では「未来からの手紙」というワークが紹介されていて、望む未来がもう実現したつもりで、その未来の自分から今の自分に手紙を書くんです。

相談者

へぇ〜! でも、ありえない未来を想像して意味あるんですか? 妄想っぽくないですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

実はここに効果があって。「どうせ無理」という時、私たちは知らないうちに「未来はこうなるに決まってる」という思い込みに縛られているんです。ありえない未来を想像すると、その思い込みが見えてくる。「あれ、決まってなくない?」って。そこで「自分にも何かできるかも」という主体性の感覚が戻ってくる、と論文は説明しています。

相談者

たしかに私、「どうせ悪くなる」って勝手に決めてたかも…。最後の4つ目は?

はぴテクさん
はぴテクさん

「人とのつながりの中で向き合う」です。不確実な未来をひとりで抱えない。研究では、未来が読めない時ほど、人は「予測」ではなく「信頼できる関係」を頼りに生きていける、とされています。不安を安心して話せる場があると、そこから価値観の探索も、未来の想像も進みやすくなるんです。

相談者

あぁ、それは今日実感してます。はぴテクさんに話して、だいぶ心が軽くなったので。

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそれです(笑)。しかも面白いことに、この論文では「なんとかなるっしょ」というナイーブな楽観は、むしろ社会への関わりを減らすという先行研究も紹介されています。実存的希望は逆で、現実の厳しさを認めた上での希望だから、ウェルビーイングも、社会への前向きな参加も高めると予想されているんです。

相談者

現実から目をそらす楽観じゃなくて、現実を見た上での希望…。不安なままでもいいんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

はい。不安を消すことがゴールじゃなくて、不安を抱えたまま、大事にしたい価値に沿って一歩動けること。それが先の見えない時代の幸せのかたちだと、この研究は教えてくれています。相談者さんはもう「大事な人に優しく、正直に」というコンパスをお持ちですから、大丈夫ですよ。

相談者

ありがとうございます。未来は分からないままだけど、なんだか「分からないまま歩いていける」気がしてきました!

■ 今日のまとめ

  • 先が見えない時代の不安は、弱さではなく、現実をちゃんと見ている健全な反応。無理に消そうとせず「誰も未来は分からない」と受け入れることが出発点
  • 目標は未来が読めないと立てられないが、「何を大事に生きたいか」という価値観は、どんな未来でも持ち続けられるコンパスになる
  • 実存的希望はナイーブな楽観と違い、現実の厳しさを認めた上での希望。不安を抱えたまま価値に沿って動くこと、人とのつながりの中で向き合うことが、幸せと社会参加につながる

■ 出典・注意事項

  • Bohlmeijer, E., Nieuwenhuis, M., Dominguez, A.R., Klooster, P.t., and Malboeuf-Hurtubise, C. (2026). Toward an integrative psychological framework of existential hope: navigating uncertain futures. Frontiers in Psychology, 17:1850611. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1850611

  • 本論文は理論的枠組みの提案(仮説と理論)であり、実存的希望の効果はこれから実証研究で検証される段階です

  • 対話はフィクションであり、論文内容を一般向けに分かりやすく再構成したものです。強い不安が続く場合は専門家への相談をおすすめします

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

論文紹介はこちら😊
先が見えない時代で持つ希望 〜実存的希望という新概念の提案〜
https://archive.happytech.co.jp/posts/2026-09-13-1789314240/

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